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短編『何も気にならなくなる薬』その109

仕事でホテルに泊まるときの楽しみといえば朝のご飯だ。
定番の料理を取るか、それともいつもと違うものを取るか、そして地の物をどれだけ楽しめるか。
旅から帰ると体重計が怖い……

「閉世界仮説」「決闘」
「顕微鏡」「悪い女」
「敢闘賞」

今回はこれらのテーマについて、

閉世界仮説?

例えば、お化けや幽霊、宇宙人など証明されていない、存在が示されていない現象や物体を、とりあえずないものとする考え方。
ようは「おばけなんか信じない」
といった感じだ。
でも、そういうのがあったほうが物語は面白いと思う。

敢闘賞?
敢闘精神のある人、ようは頑張った人、その分野、競技で成績を収めた人への賞。


世の中には悪女なんてのが物語のテーマになることが多い。
とはいえ、そうした物語が人気を得るというのは、やはり人は他人の不幸せを架空の物語の中にも求めているのかもしれない。
「私はね、世の中には悪女はいないと思うよ」
「それはどうして」
「だって、出会ったことがないもの」
「それは閉世界仮説?」
「難しい言葉を知ってるね。そういうこと、おばけもUFOも見たことがない以上信じないことにしてるの」
「じゃあ、ニュースで起きた出来事も自分で見なければ認めないってこと?」
「そうね」
「じゃあ、運動会とかで貰える頑張ったで賞は?」
「あー、あったね、入賞しなくてもシールが貰えたよね」
「あれはどうやってももらえるでしょ、だから本当に頑張った証拠はないよね」
「まぁ、それは気持ち問題じゃない?」
「そう?それは違うのか……じゃあ、顕微鏡で見えたものは信じる?」
「見えてるから信じるわよ」
「でも、それは顕微鏡越しでしょ?テレビと変わらないじゃない」
「うーん、そういうことになるかしら、あなたも意地悪ね」
「どう?悪い女?」
「私に悪女はいるって認めさせたいわけ?」
「そういうこと」
「もう、私怒ったわ」

「おい、あそこで女性二人が口論してないか?」
「あぁ、あれはきっと男を取り合っての決闘だな」
「そうかな、おれには痴話喧嘩に見えるけど」
「いや、きっとあの女性二人を誑かす悪い男がいたんだよ」

美味しいご飯を食べます。