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短編『何も気にならなくなる薬』その206

テーマをいくつかあげて、それについてあれこれ考えずに書いていくのを、ジャーナリングというらしい。本当は紙とペンでやるのがいいらしいが、頭を使うことには違いないので取り入れてみる。

・ひとつ残らず。
宴会の席、食事を囲むのはもちろんのことなのだが、主役というのはやはり会話と酒なのだろう。
食事は二の次と言っても過言ではない。
現に誰も手を付けない最後の一つは未だにテーブルを占領している。
そういうときに若い人というか食い気のある人というのは重宝される。嫌な顔せずぺろりと平らげてしまう。
しかし、なぜこうもテーブルに残しておくのか。
思うに私は食事を食料としてではなく、その飲み会という空間を彩る飾りのようなものだと言いたい。
食べてくれるのはありがたいが、出されてすぐ食べきってしまうと味気ない。
会話に花を咲かせたいのであって、花より団子ではせっかく集まった意味がない。

・端末
昔、暗がりで必要だったのは松明だったが、今では誰しもが端末を欠かさずに持ち歩いている。
いわゆるスマホ、パソコンの類だ。
大抵のことは調べられて、また漢字や文字を変換してくれるからついつい頼ってしまう。
あれなんだっけ?と話を振っても「調べれば良い」と言われてしまえば会話も弾むわけがない。
結果ではなく、過程がほしいのであって、この手の端末信者はすぐに結果を求めたがる。
自分で考える機会が減っていった人間の未来は
アイディアが欠乏するのではないか。
こうした端末を活用こそすれ、考えることはやめたくはない。

・話す
前述した通り会話というのは流れを楽しむものであって、一方的に話を聞くのであれば、講演会やコンサート、エンタメを観に行けばいい。
この間、バーにてめちゃくちゃ喋るおいちゃんがいた。
なんていうか他人を会話に入り込ませない話し方が隣人をぐったりさせていた。
他人は鏡だ。

・レッドカード
ハラスメントという言葉は今や当たり前のようになっているが、その判断基準はなんとも言えない。
加害者は単純に気がついていない。何故なら今までそれが当たり前だったから。
いわゆる伝統とやらだ。
被害者もまた人によって感性は違うのだから判断が難しい。
客観的な判断も必要だ。
「貴方の発言、レッドカードですよ」
なんて審判制度がある世界だったら楽かもしれない。
しかし、何気ない会話にまで他人が口出しをし始めたら、私達は本当に言語を扱う機会を失っていくのだろう。
言葉を話さなくなった。意思疎通をやめた人間は猿になるのだろうか。
それとも生きた機械になるのだろうか。

・いないいないばあ
最近、私の周りでは結婚と出産がよく見受けられる。
それはそれで幸せあふれることなのだから、多いに越したことはない。
私もいないないばあをする役割がくるかもしれない。
それが誰の子かはわからないが……
現に今の仕事が、大人にいないいないばあをするような職業なのだから今更どうもこうもないとはおもうが

・カルボナーラ
カルボナーラは濃厚で食べごたえがある。コショウとベーコンが欠かせない。
食材の話をしても仕方ない。
私の勝手なイメージはサイゼリヤでよく食べていた印象だ。
しかし、これは若いから簡単に食べられていたが、
今になると色々と考えることが多い。
金銭面はともかく、kcalが怖い。
美味しいものは太る。
また、太りそうな食べ物は大概美味い。

・チームワーク
と聞くとなんだか仲良くやっているというような印象を受けがちなのだが、どうにも私はこれを強要することは間違っていると言いたい。
必ずしも一緒になりたくて働いているわけではない。
反りの合わない人もいれば、攻撃的な人、また矢面に立たされがちな人と様々な人がいる。
それを包み隠すかのようにチームワークだと言われてしまうと、問題を隠すための都合の良い言葉だと思えてしまう。
ハリボテもいいところだ。

・深淵を覗く
私が深淵を……言うまでもない言い回しがあるが、常に人は誰かの視界の中にいる。
まぁ、それは一人暮らしやトイレの中であれば視界から隠れることはできるだろうが、
とりわけ外にいる間は必ず人の目がある。
閑静な住宅街ですら窓から誰かが、見ている可能性がある。
またこうした書き物も私が知らない間に誰かが見ている。
常に私達は人の目を気にして自らを律さないといけない。

・学生証
こないだ、私の友人が学生証の提示を聞かれたそうだ。
それを若く見られたのだと自慢していたが、
この歳にもなってしまえば、
「幼く見える」の方が正しいと思えるのだが、私はそっと口を継ぐんだ。
当人がそれで幸せそうなのだから、私がその幸せを壊す理由などないのだろう。
しかし、もうひとりがそれを言ってしまう。
余計なことを……と思いながらもよく言ったとも思えてしまう。
誰しもが余計なことを言わなくなってしまったら、こうした楽しみはなくなってしまうのだろう。

・六角形
六角形で何を思い浮かべるか。それを質問してその人の生活や過去が見えてくるのかもしれない。
しかし、いうほど身の回りに六角形なんてあるだろうか?
真っ先に思い浮かんだのは鉛筆だろうか。その次にナット。
辺りを見回してみるとふと目に入ったのは御香の箱だ。
いや、そんなことを言ってもわからないのは百も承知なのだが、探していないだけで案外近くに結構ある。
観察眼が足りないなと改めて思い知らされる。

美味しいご飯を食べます。