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古今集 巻四 秋歌上 193、194番

是貞のみこの家の歌合によめる

大江千里

月見ればちぢに物こそかなしけれわが身ひとつの秋にはあらねど

ただみね

久方の月の桂も秋は猶もみぢすればやてりまさるらむ


是貞親王の家の歌合せに詠んだ歌
大江千里
月を見るとたくさんの思いが現れてとても悲しい気持ちになる、わたしひとりの秋ではないのだけれど

壬生忠岑
遠くの月の中にあるという桂の木も、秋にはなお一層紅く染まって美しく照り映えるのだろうか

 「我が身ひとつの秋にはあらねど」は、私だけの秋じゃないから、私一人が悲しいわけじゃないと、冷静な分析とともに自分を慰めてもいます。この大江千里の歌は百人一首にも採られているものです。
 たくさんという意味の「ちぢ」の「ち」は「千」、「ぢ」は「はたち」「みそぢ」など数値に付ける「ち」で漢字では「箇」です。「みそじ」は今は「三十路」と書いていますが当て字のようです。年数を表すわけではなく単に数を数える時に付けます。
 月の桂は、月の中には川があってその辺りに大きな桂の木が生えているという伝説をもとにしています。月の桂の木も赤く染まったから、月がこんなに美しいのだろうかということです。
 なお、京都伏見のお酒の「月の桂」は、江戸時代に姉小路有長が酒蔵に「かげ清き月の嘉都良(かつら)の川水を夜々汲みて世々に栄えむ」と和歌を送ったことから付けた名前だそうです。この歌も伝説に基いているようです。

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