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池井戸潤を読もう

もうすぐ『半沢直樹』の続編が始まります。

「続きありますからね!」という終わり方をして実に7年。よほどいろんなゴタゴタがあったのだろうと邪推させる時間ですな。

前作は僕にとっても非常に面白いドラマだったので、いてもたってもいられなくなり、本など読まないくせに原作小説に手を出しました。

でもドラマと小説は違うだろうから、最初から読もうと。

『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』この2冊で前作のドラマがカバーされます。そしてその続編が『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』であり、うちにあるんですが、なんと肝心のこれらを読んでいない。

なんせ読むのが遅い上に他にも読みたい本があったことで、その後「積ん読」になっちゃってたんですね。

んで、最初の2冊の感想はと言うと、やっぱり面白いんですよ。

原作小説はドラマとどう違うかというと、「あんなに大げさじゃない」というところ。決め台詞の「倍返しだ!」も出てこなかったんじゃないかな?


これ、その後の池井戸作品全般に言えることなんですが、原作小説は、ドラマを基準にするとかなりドライであり、ドラマ版は逆にウェットなんです。

『半沢直樹』のスーパーヒットで味をしめたんでしょう、その後の池井戸ドラマは、明らかにやり過ぎでした。

例えば、池井戸ドラマと言えば必ず銀行が出てきますが、融資担当者が融資を断るのに相手の悪口を言う必要なんてないんですよね。ところがドラマでは、「融資をはねつけろ」と上司から命令された担当者が、これでもかと融資依頼企業を罵倒します。

これは「コイツ、悪いヤツです」という分かりやすいレッテルを貼ってるわけですが、それやっちゃうとリアリティーがなくなって醒めてしまうんですよ。

『半沢直樹』が素晴らしかったのは、その辺の絶妙な調整が効いてたからなんですが、後続の作品は明らかに「推奨IQ」を10くらい下げてバカっぽいドラマになっちゃってるんですよね。まあ、観たら観たで面白いんですが、点数下げちゃってるよなーと思うんです。


オタキングこと岡田斗司夫は、ドラマ・映画なんかにおいて「ハイドラマ」「ロードラマ」という評価軸を作りました。この「ハイ」「ロー」は「優劣」に直結するものではなく、視聴者に想像させ、考えさせ、自分の頭で感動させるようなドラマが「ハイドラマ」、逆にベタベタの分かりやすいものが「ロードラマ」っちゅーわけです。「ロードラマ」の典型は朝ドラなんかですね。

その評価軸で言えば『半沢直樹』はそもそもロードラマなわけですが、後続の『ルーズヴェルトゲーム』やら『陸王』やらはローの底に着いた上に、穴空けてしまった感じなんですよね。

いや、悪役にするにしたって、その憎まれ方は理屈としておかしいのでは?と思う場面がいくつも出てきます。


で、もうすぐ始まる『半沢』の続編。

気になるのは、池井戸ドラマの脚本と演出が概ね同じメンバーであること。

その他の作品は好きにして頂いて良い。

『半沢』だけはあの黄金の調整をしっかり継承して頂きたいものです。


そういや『空飛ぶタイヤ』って地上波ではドラマになってないんでしたっけ?いや、僕はドラマ版は全く観てないけど、小説はすごく面白かったですよ。

簡単に紹介します。

池井戸小説というと「産業ドラマ」であり、企業経営者のサクセスストーリーなわけですが、『半沢』は主人公が銀行マンという点でかなり特殊で、中身は割とハードです。だから他の池井戸ドラマよりもハラハラドキドキ感が強いんですね。

『空飛ぶタイヤ』は、主軸のテーマが三菱トラックの脱輪事故およびリコール隠しをモデルにしており、他の作品に比べてやや暗鬱でシリアスです。しかし実際の話をベースにしているだけに生々しく、『半沢』のようなスピード感はないものの、手に汗握るものがあります。オススメ。


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