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岩波少年文庫を全部読む。(59)娯楽の王さま、初めての人にも、再読する人にも。 アレクサンドル・デュマ・ペール『モンテ・クリスト伯』縮約版


娯楽の王様、ページターナー

アレクサンドル・デュマ・ペール。ペールというのはフランス語で父ですね。

息子も『椿姫』(1848)で有名な同名の小説家で、そっちはデュマ(フィス)と呼ばれます。フィスは息子。

『モンテ・クリスト伯』(1846)、これきわめて有名ですし、TVドラマにもなりました。娯楽の王様、ページターナーです。ですからいまさら紹介するのは申しわけないくらいです。

主人公はエドモン・ダンテス。登場時(1815年2月)19歳の一等航海士という設定です。次期船長になることが決まり、将来を嘱望されています。
彼の乗った船が、遠方からマルセイユ港に戻ってきたところから話が始まります。

ナポレオンからパリ宛の親書

ダンテスが乗った船は、コルシカ島とイタリア本土とのあいだにあるエルバ島に立ち寄っていました。エルバ島はハプスブルク家が支配するトスカナ大公国の一部でした。
そこには前年4月から、失脚したナポレオンが流されていました。そしてダンテスは、ナポレオンからパリ宛の親書を預かっていたのです。もちろん内容を知らぬまま。
これが非常に重要です。なにしろナポレオンとうっかり繋がったことをしちゃうと、スパイというか危険人物あつかいされて、ヘタをすると政治犯として拘束されちゃう時代です。

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3,743字

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