見出し画像

岩波少年文庫を全部読む。(94)50歳からの中二病。人生の酸いも甘いもここにある! ミゲル・デ・セルバンテス・サーベドラ『ドン・キホーテ』抄

牛島信明による『ドン・キホーテ』抄訳(岩波少年文庫)。
〈中学以上〉となっていますが、噂に違わず「大人が読んでちょうどよい『ドン・キホーテ』入門」でした。これぞ文学入門という面構え。 これを中学生で読む機会があった人は幸いです。

セルバンテスの『ドン・キホーテ』(正篇1605、続篇1615)は、世界文学トップランクの大好きな作品です。人生の酸いも甘いもここにある!
現行の日本語版では〈前篇〉〈後篇〉と呼ばれますが、ここでは『ドン・キホーテ』が1605年にいったん完結したと見なし、「正篇・続篇」と表記することにしますね。

コンパクトでお値ごろな抄訳版

噛めば噛むほど味がじゅわっと滲み出てくる、とんでもない小説なんです。
とはいえ長くて脇道が多いのも事実。けっして冗長ではないんですけどね。
古い時代の作品の翻訳を読み慣れない人には、読み通すのは多少骨が折れるかもしれません。
100%「慣れ」の問題であって、翻訳が悪いのでもないし、読者が悪いのでもありません。

そこで本日ご紹介したいのがこちら、対象年齢〈中学以上〉と明記された、牛島信明によるこの抄訳版です。


大泉滉かサルバドル・ダリのようだ。

『ドン・キホーテ』をまだお読みでない人にとってじつにおトクなだけでなく、僕のようにかつて本篇を通読し、必要に応じて関連箇所を拾い読みしてきた人間が読んでもじゅうぶんにおもしろいこの抄訳版が、なんとたったの¥840+税!

読んでいない人が多い名作の一例

ここから先は

4,769字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?