Moshi MonsterからCalmへ 〜Michael Acton Smithの軌跡〜 (後半)
前回のインタビュー記事を元に、今回はCalmをマインドフルネスアプリ界の筆頭に押し上げたMihcael氏のデザイン思想について、端的に考察させていただきたいと思います。
体験:問題と解決策
まず、Michael氏(開発者)本人が、次の2つの体験をしていること。
・過重なストレスによる心身の疲弊(問題)
・マインドフルネスによる身体的・精神的健康の快復(解決策)
これにより、ユーザーが抱えている問題の本質的なインサイトを体感し、理解し、真に共感されるサービスを作り込むことができたと推察されます。
科学的根拠:行為の成果を明示する
Michael氏は、マインドフルネスに対して関心はあったものの、当初は傍観者でした。
そんな彼がマインドフルネスに深く入り込むきっかけとなったのが、科学的根拠です。
科学というのは、妥当性と再現性を追求する営みです。
すなわち、「同一条件下であれば、誰が何度行っても、(限りなく)同一の結果にたどり着くことを目指す営み」です。
知らないこと・分からないことは、誰でも怖いですよね?
それは、自分の行為がもたらす結果が想像できないからです。
したがって、科学的根拠というのは行為の結果を明示し、安心感を与えてくれるものなのです。
この科学的な視座というのは、欧米の教育システムで抜本的に培われる能力なので、ユーザーに対してもそういった心遣いでのアプリ開発が可能なのでしょう。
ビジョン:教育と将来への想い
マインドフルネスは多くの人を手助けしてくれると確信するMichael氏は、とりわけ次の世代への視点が強いです。
また、その信念をうまくUIに落とし込み、ユーザーに対してNudging(無意識的な誘導)を作り上げています。
・ビジョン(コンテンツ)
・伝え方(手段)
この2つを明確に、かつ独立的にマネジメントしている点が強いです。
これは、
“僕の考え方では、テクノロジー自体は問題じゃないんだ。それをどう使うかが問題なんだよ。テクノロジーを我々がどう活かしたいかが大事なんだ。”
という同氏の言葉に端的に現れています。
最後に
上記の言葉を考えた時、昨今の日本の製品・サービスは、“手段の目的化”に陥っていないでしょうか?
「作ること」が目的となっている、「イノベーションを起こすこと」が目的となっている、「組織を継続させること」が目的となっている。
これらは手段に過ぎません。
本当に価値のある、社会をよくするビジョンを描き、そのビジョンを実現するために苦心し、突っ走れる企業でないと、Calmのような成長はできないのではないか、という警鐘にて、本稿は締めさせていただきます。
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