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鎮丸~天狗舞ふ~ ⑬

「はい!」晴屋は言うや否や本殿目がけて走った。背中には破魔矢を背負っている。

この相手には音叉では太刀打ちできないことは、晴屋がこの前証明している。呪もかからない。

しかも体は翔子のものだ。傷付ける訳にはいかない。

鎮丸は駒の連続攻撃を避けながら、思案していた。
その時、頭の中にいつもの女性の声が響く。

「またまた、ピンチのようね?よく、聞きなさい!あんた、敵と同じことできるでしょ?」

鎮丸は空を見上げた。
「同じこと?」
つぶやきながら、鎮丸は地面を転がり駒と距離を取った。

片膝をついたまま、息吹長世をする。
(そうかこれか!摩利支天の法!)
刀印を組み、右手に意識を集中すると、労宮から紫色の気が迸った。それは次第に大きくなり、気の刃を形成した。

「ほう、やっとやる気をだしたのか。」
女子高生の姿形をした駒が言う。いい終わらないうちに上段から鎮丸を打ち据える。

鎮丸は気の刃を合わせる。
見事に攻撃をはじくことができた。
しかし、驚いたのはそれだけではなかった。

気付くと翔子は空に滞空している。背中には白い羽が生えていた。
「馬鹿な…。」鎮丸は驚愕した。

更に滑空し、上から打ち下ろして来る。
駄目だ。奴は空を飛べる。こちらが不利だ。

そこから20合程打ち合うが、空中で急に向きを変えて打って来る。空からの攻撃は変幻自在だ。

ついに打ち負けた鎮丸が尻餅をついたまま言う。「はぁ…はぁ、ま…待て!」

「ふふ…たわいもない。負けを認めるか?」
駒が言う。

「お前に質問がある。その娘は、察する所、お前の子孫だろう?なぜ子孫の体を危険に晒す?」鎮丸は大きく息を吸いながら言った。

「僧正のご意志よ!」駒は吐き捨てるように言った。
「問答無用!」駒は尚も斬りかかろうとする。

「待てと言ってるだろう…!」鎮丸は気を収めた右手で駒を制する。

駒の右手からも刃は消えた。

鎮丸が問う。「わしはあの僧正という天狗から瘴気を感じた。お前自身からも同じ気を微かに感じる。…お前、奴から精神支配を受けているのではないか?」

駒は明らかに動揺する気配を見せたが、しばらく沈黙した後、「わしはな、純粋にお前に打ち勝ちたいのだ。それがわしの望み。」と言う。

鎮丸は「なぜこのわしに執着する?」と尋ねた。
「それはな…。」駒が言い掛けた瞬間に雷鳴が轟き、大天狗、烏天狗合わせて30程が姿を現した。

鎮丸は、「しまった!晴屋は無事か?」と心の中で思った。

(to be continued)

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