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福来友吉と御船千鶴子

福来友吉は、明治2年、飛騨高山に
生まれました。

商家の生まれですが、商売に興味が
なく、仙台の第二高等学校(旧制)
から東京帝国大学哲学科へと進みます。

大学での専攻は心理学でした。
「催眠の心理学的研究」という論文で
博士号を取り、世間では「福来博士」
と呼ばれるようになります。

しかし、催眠中の被験者が、学術書の
内容を透視するという不可思議な現象を
目の当たりにし、それを契機として、
超常現象、心霊現象へと傾倒していきます。

その頃、透視能力を持つという熊本在住の
女性「御船千鶴子」が、病人の患部の
透視、手かざし等で地元で評判になって
いました。

熊本県立中学の校長の紹介で、彼女に初めて会った福来博士は、その後、千鶴子の
透視能力を検証する実験を何度も試みます。

実験の結果、千鶴子の千里眼を本物である
と確信した博士は、マスコミに発表し、
賛否両論の渦の中、千里眼という超能力に
世間は沸き立ちます。

その後、数々の自称、超能力者が名乗りを
上げるとともに、物理学者達からの批判も
増していきました。

何かで見たような光景ですが、
この「御船千鶴子」こそ、
ホラー映画「リング」で貞子の
母親だった静子のモデルなのです。

貞子の幼少時の回想シーンの中で、
公開実験を行っているのが、千鶴子で、
新聞記者にインチキだと糾弾されている
のが、福来博士です。

映画ではその後、貞子が念力で新聞記者を
殺してしまいます。悲観した静子は
山に身を隠し、残された博士は、貞子を
井戸に閉じ込めます。

実際の実験内容は、鉛の筒や封筒の
中の紙に書いてある文字を当てる透視、
月の裏側を写真に写し出す念写、
といったものでした。

モデルとなった福来博士と御船千鶴子
の身にも不幸が訪れます。

「超能力について」の記事で触れた
ように日本では希有な、超能力の
アカデミックな研究だったのですが、
新聞の論調は、博士に批判的でした。

少し先取りをしすぎたのでしょうか。

千鶴子は、「先生、もうこれ以上やっても
無駄です」と絶望し、重クロム酸を飲んで
自ら命を絶ちます。

御船千鶴子の次に、福来が関心を寄せた
のが、「長尾郁子」です。

郁子は、文字を念ずると写真乾板に
その文字を焼き付けることができる
という念写能力の持ち主でした。

この実験は物理学者たちの大きな反発を
招きます。山川博士をリーダーとする
研究者達が実証実験を行い、念写は
トリックであるという発表を行います。

千鶴子が亡くなった、その2ヶ月後
長尾郁子もインフルエンザで亡くなり、
真偽を確かめる術はなくなってしまいます。

こうして日本中でもてはやされた
千里眼ブームは終結します。

因みに福来博士の研究は、「リング」以外
にも様々な作品のモチーフとなっており、
「山村貞子」の名は、福来博士が
同じく研究の対象としていた
「高橋貞子」に由来するという説が
あることを蛇足ながら付記しておきます。


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