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おともだち2

私には、15年来の友人がいる。出会いは小学生の頃だ。都会から引っ越してきた彼は、偶然、私が以前住んでいた地域の出身で、趣味もあったのですぐに意気投合した。

彼との仲は、中学校に入ってからも続いた。私が中学校に通えなくなった時も、彼は毎日遠回りをして私の家までプリントを届けがてら、話をしてくれた。

彼は鉄道が好きだった。いや、それを撮るためのカメラが好きだったのかもしれない。
彼は、私が家にこもってばかりではいけないからと、撮影がてら外に出ようと誘ってくれた。

バスに乗るのも、電車に乗るのも最初は怖かった。人の目がとても怖かった。彼の背中だけをみて必死について行った。(とんだショック療法である)  

しかし、人間は面白いもので、人の目を気にする暇がなくなるほど、外の世界は楽しいものに溢れていた。彼の祖父母の家に行った時に見た能登の青い海と星空、福井のローカル駅に4時間待たされた事、自転車で撮影旅行はどこまでも行った。
そうだ、私を映画館に連れて行ってくれたのも彼だった。色々な映画を一緒に観た。お陰で今ではすっかり映画好きである。
部屋の中でこもって、ガンガンに音楽を聴いて自分の世界にこもっていた私を、外の世界に引きずり出してくれたのは彼だったのだ。

高校に入ると更に行動範囲は広がる。彼とは、東は千葉まで、西は香川まで様々な所を巡った。いつしか私も一緒にカメラを持ってうろちょろするのが楽しくなっていた。

彼はよく将来の話をする人だった。将来、カメラマンになりたい事。風景を撮る写真家になりたい事。東京の芸大に行きたい事。そんな話をとてもワクワクした様子で話してくれるので、話を聞いているこちらもワクワクしてくる。
「彼の今後の人生はどうなるんだろう」、「彼はどんな景色をみるのだろう」「彼に着いていきたい」「彼に会いたい」「彼と一緒にいないと不安だ」
いつしか、私は友情とも執着とも、恋愛感情ともいえない気持ちを抱いていた。

高校3年生になり、彼は有言実行、東京の芸大の写真科に合格した。私は嬉しかったが、着実に前に進んでいる彼と、前に進めていない自分を比べてしまい、強いいらだちを覚える。そしてなにより、彼と離れるのが辛かった。やがて、彼からの連絡がとても怖くなり、2年間ほど連絡を経ってしまった。  

時は過ぎて、私が大学3年生、彼が大学4年生となり、久しぶりに東京で会う約束をした。
会う前に電話をした際、「俺、彼女できまして」と一言。私は複雑な感情が湧いて、4年ほど前の忘れていたはずの感情を思い出してしまった。複雑な感情が湧いたにも関わらず、「彼女にも会ってみたいな」と言った。そんなわけで、久しぶりに彼と会うついでに、彼の彼女にも会うことになった。

東京へ行き、彼と久しぶりに会った。お互いに「変わったねー」と言い合った。私は大学でダサいと思われないように、それなりに身だしなみを気にするようになったし、彼は芸大生感漂う身なりになっていた。そりゃそうだ。3.4年たったんだもの。あの頃の彼ではないのだ。私が知らない間に、私の知らない「〇〇くん」をしていたのだ。

夕方になり、彼の家に向かうと、彼の彼女が出迎えてくれた。恋敵登場?!である。しかし、話をしていくと、〇〇くんあるあるトークで盛り上がりすぐに意気投合した。そして、彼との馴れ初めを話してくれた。

彼女と彼は、同じバイト先で出会った。上司と部下の関係だったのだが、ある時、彼女がメンタルの不調で休職してしまう。その時に相談に乗ったのが彼だった。彼女が一番辛い時に、ふと「海が見たい」とつぶやいた。すると彼は、夜中に呼び出し、彼女に日本海の朝日を見せたのだ。(彼女は太平洋側出身で、日本海を見たことがなかった)
それからというものの、彼と彼女は色々な所を出かける仲になり………ってな感じらしい。

彼女は、「私の知らない世界を教えてくれた人」と言っていた。私は首がもげそうになるほど頷いた。私の他にも、彼に救われた人がいたのだ。彼を見つけてくれてありがとう!そんな気持ちになった。

その後、彼女と2人で話す機会になった時、「彼がどんな人だったのか知りたい、私は彼が大きくなってからしか知らないから」と言われた。私は、彼の4年間を、彼女は彼の子ども時代を知らないのだ。これは完全に利害が一致した。私は、彼女に感情移入してしまった。彼に、「ちゃんと好きって伝えなさいよ!」と、誰目線やねんというアドバイスも送った。

帰る時が来た。彼と彼女が2人で並んでいる姿を見ると、なぜだか涙が溢れてきた。「また会おうね〜」彼女が手を振ってくれる。友達は「じゃあね」恥ずかしそうに手を振っている。絶対に幸せにしなさい!と泣きながら強く思ったのであった。

人との出会いや、巡り合わせは不思議だな〜と思いながら、中高生時代の彼に対する感情を振り返っていたら、久しぶりに彼に会いたくなった。その時は、彼女も一緒にね。

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こんにちは。最近、自らのセクシャリティとか、人間関係とか、友達ってなんだろうとか、色々考えていたらいつの間にか駄文を書いていました。

前回は、友人と遊んでいてモヤモヤするって話でしたが、今回はなんかエモい感情になったってお話です!そういえば、
後日談として、彼の車を後ろから追ってたら(2台で移動してた)急に涙が溢れてずっと泣いてたって入れたかったけど入らなかったです。彼の背中をずっと追いたかった………そんな重すぎる愛を書き殴ったぜ!

友達は大切にしたいし、ご縁は大切にしたいっすね!

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