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森ビヨ・勝手にアナザーストーリー12話【完】

【森ビヨ・勝手にアナザーストーリー12話】

この作品は、勝手に考えた『眠れる森のビヨ』のアナザーストーリーです。
基本的に皆、幸せになって欲しい。序盤はネタバレ考えてません。
原作者さま、演劇女子部さま、アップフロントさまとは全く関係ありません。
ご了承ください。

※映像にするとこの話は13分程度
※全12話を予定しております
(作者の都合で変更になる可能性もあり)

【登場人物】

・ヒカル(17)

・ヒマリ(17)

・ツムギ(17)

・夢子(17)

・ネネ(17)

・ノゾミ(17)

・カナエ(17)

・タマエ(17)

・山上(18)

・浜田先輩(18)

・ユッコ(16)

・ショーコ(16)

※司会、部員① その他モブ

(※はオリジナルキャラクター)


1 県大会会場

  県大会会場の大きなホール。

  客席には各高校の演劇部員たちが、祈るように舞台上にいる司会の女性を見ている。

司会「最優秀賞は……崋山高校演劇部『眠れる森の美女』」

  わぁー!と上がる歓声。

  喜び合い、抱き合ったり、ガッツポーズを決めたり、ハイタッチし合う部員たち。

  ヒマリ、ユッコやショーコに抱き着かれて笑っている。

  しかし、ふと不安そうな顔でヒカルを見つめる。

  ヒカル、ヒマリと目が合うとニッコリ微笑む。

  無理やり微笑み返すヒマリ。


2 崋山高校・体育館舞台

  大道具もしっかり『眠れる森の美女』の設置になっている。

  部員一同、円になって座り、話し合っている。

浜田「ブロック大会の上演時間は60分以内、入り捌け含め撤去時間は30分以内。一秒でも過ぎたら失格。大会に出場できるのは全国のブロック大会を勝ち抜いた10校と開催県枠1校、持ち回り枠1校の合わせて、12校」

山上「去年、先輩たちはブロック大会で敗退した。それどころか、崋山高校演劇部はブロック大会を突破したことがない。ここからが我々の正念場です」

タマエ「よーっし! このままブロック大会突破して全国いくぞー!!」

カナエ「絶対、東京で買い物してタピるぞー!!」

山上「おいおい、遊びじゃないんだぞ」

夢子「でも、ブロック大会突破したら、全国大会は来年の夏ですよね? そしたら、三年生の先輩たちは……」

  後輩たち、一気に暗い雰囲気になってしまう。

浜田「そんなに暗くなるなよ~」

山上「そうだよ。まだブロック大会突破できるかも分からないんだし」

ノゾミ「そこは突破できるって言ってくださいよ」

山上「そうだけど。でも、そんな甘いもんでもないでしょ? まぁ、さ、勝ち負けはあるけど、俺は今ここにいる皆と演劇を作れる、それだけで十分幸せだと思ってる」

ユッコ「……何かジーンときました」

ノゾミ「ね? 部長たまには良いこと言う~」

山上「たまにはは、余計だろ」

  部員一同、目に涙を貯めながら笑い合う。

山上「本当、記録にしたら零れ落ちちゃうような一瞬、一瞬が大切だなって思う訳よ」

ヒマリ「記録にしたら零れ落ちる、一瞬、一瞬……」

浜田「よっし! ブロック大会まで後1日! 今日も通し稽古始めるよ」

一同「はーい!!」

  皆がポジションに捌けていく中、座ったまま動けないヒマリ。

  そこへヒカルとツムギがやってくる。

ヒカル「ヒマリ、大丈夫?」

  ヒマリの体が震えている。

ヒマリ「私、怖いの……」

ヒカル「どうしたのヒマリ? 何が怖い?」

ヒマリ「ヒカルがいなくなってしまうことが……」

  ヒマリ、ヒカルに抱き着く。

ヒカル「ちょっと、外でようか?」

ツムギ「僕が付きそうよ。ヒカルは通し参加して」

ヒカル「え、でも……」

ツムギ「いいから」

ヒカル「あ、うん。それじゃ、任せた」

  ツムギ、ヒマリに肩を貸して、舞台から出ていく。


3 同・グランド(夕)

  ツムギ、ヒマリ、端にあるベンチに腰掛けて、グランドをぼーっと見ている。

ツムギ「落ち着いた?」

ヒマリ「……うん」

  二人の間に沈黙が続く。

ヒマリ「あのさ、ツムギは怖く無いの?」

ツムギ「何が?」

ヒマリ「また、皆が事故にあって死んじゃうかもしれないんだよ?」

ツムギ「……怖いよ。怖く無い訳なんか無いじゃん!」

ヒマリ「じゃあ、どうして、そんなに冷静でいられるの?」

ツムギ「じゃあさ、これまでヒマリは、何度も、何度も、ヒカルだけを五体満足な状態で救う為に演劇部の皆を見殺しにしてきたこと、何にも思わない?」

ヒマリ「え……?! 私、見殺しになんてしてない!!」

ツムギ「見殺しにしたのと一緒だよ!! だって、ヒマリには救えたはずでしょ? 未来を知ってたんだから。だから5年後の未来から今を変えに来てるんでしょ?」

ヒマリ「そうだけど! 救いたくても出来ないよ、そんな事!!」

ツムギ「だから、ヒマリをこの部に入り込ませた」

ヒマリ「どういうこと?」

ツムギ「キミは、接点を持った人間を見殺しになんてできないから」

ヒマリ「……でも」

ツムギ「ヒカルに伝えて」

ヒマリ「何を?」

ツムギ「ヒマリがこれまで見てきた全てを」

ヒマリ「そんなの信じてくれないよ!」

ツムギ「信じてくれなくても良い。僕は、皆に集合時間の10分前に集合させる。3人で力を合わせて救いたいんだ、この演劇部を」

ヒマリ「それでも、事故が起きたら?」

ツムギ「その時は、一緒に死ぬまでだよ」

  ツムギ、立ち上がって、体育館に戻ろうとする。

ヒマリ「ねぇ、ツムギは、どうして、そこまでして皆を救おうとするの?」

ツムギ「……最初は、ただの興味本位だったんだ。実際に学校に通学してる時代があったなんて信じられなくて、本当ちょっとした好奇心。でも、だんだん過ごしてる内に楽しくなってきた。リアルタイムで演じる演劇も、全て新鮮で……。この演劇部は殆ど死者がでるし、記憶の改竄には丁度いいと思った。ただ、それだけだったんだ……」

ヒマリ「でも、好きになったんだね、皆が」

  ツムギ、黙ってうなずく。

ヒマリ「好きって凄いエネルギーだよね……」

ツムギ「ここにヒマリがいたのは、計算外だけどね」

ヒマリ「こっちこそだよ」

ツムギ「でも、お陰で皆を救える気がするんだ」

ヒマリ「うん。……私、ヒカルに話してみるよ」

ツムギ「……うん」


4 同・校門前(夕)

  演劇部一同、校門の前で円陣を組んでいる。

浜田「今日まで全力で駆け抜けた皆の努力が報われるように! 明日は出し切るだけ!」

山上「うん。絶対成功させるぞ!」

一同「はい!」

  山上が手を真ん中に差し出すと、部員がどんどん手を差し出してくる。

山上「崋山高校―! ファイ」

一同「オー!」

山上「ファイ!」

一同「オー!」

山上「ファイ!」

一同「オー!」

  円陣が終わると、皆、それぞれの帰路に向って行く。

山上「明日は、8時集合―! 遅刻厳禁!」

ツムギ「あ、山上部長! 明日は、あんまり天候良くないみたいなんで、少し早めに集まった方が良いですよ!!」

山上「お、そうか。そしたら、7時50分集合―!!」

タマエ「えー早すぎぃ!」

山上「遅刻したら、1分毎に腹筋30回!」

ノゾミ「さっ、帰ろ、帰ろ! とりま、寝よ!!」

  部員達、それぞれ手を振りながら足早に帰っていく。


5 通学路(夕)

  すっかり日が落ちて来た通学路。

  ヒカル、ヒマリ、ツムギが歩いている。

ヒカル「ついにここまで来たか~」

ツムギ「そうだね。ついにここまで……」

ヒカル「ヒマリもツムギも、ここまで色々助けてくれてありがとう」

ヒマリ「え?!」

ヒカル「だって、ヒマリが演劇やるなんて思ってもなかったし、ツムギも脚本のことから何から付き合ってくれたじゃん」

ツムギ「僕は、ヒカルに助けられてばかりだったよ」

ヒカル「そりゃ、二年目なのにあんなに歌や踊りができないとは思わなかったけど」

ツムギ「……ごめん」

ヒカル「全然~! 凄いチームワークで支え合えたって思ってる」

ヒマリ「……あのね、ヒカル」

ヒカル「ん?」

ヒマリ「嘘みたいな話なんだけど、聞いてほしいことがあるの……」

  ヒマリ、鞄から手帳を出す。

  ヒマリの決意の表情。


6 崋山高校・校門前

  校門前にマイクロバスが停まっていて、部員達が乗り込んでいる。

  そこへ走ってやってくるヒカル、ヒマリ、ツムギ。

  山上、バスのドア前で待っている。

山上「7時50分ジャスト。ヒカルたちで最後だな」

  三人と山上、バスに乗り込む。


7 バス車内

  マイクロバスの車内。

  演劇部員達と顧問の先生二名が乗り込んでいる。

  最後に乗り込んできた、山上、運転手に声をかける。

山上「全員揃いました。出発よろしくお願いします」

一同「お願いしまーす!」

  走り出すバス。

  一番後ろの席に乗り込んだヒカル、ヒマリ、ツムギ。

  ヒマリ、ヒカルの手を握る。

  ヒカル、ヒマリの手を握り返す。

  ヒカル、前方を見る。


8 崋山高校・体育館舞台

  緞帳のしまった舞台に何人かの部員がいる。

  そこの中心にはヒマリの姿。

ヒマリ「今日は今度やる新人デビューフェスティバルの脚本を書き下ろすためOGの先輩方が来てくれます!」

部員①「新人デビューフェスティバル?」

ヒマリ「春にやる一年生お披露目の大会だよ。毎年、うちの部では卒業した先輩が脚本を書き下ろしてくれることになってるの。今日来る先輩たちは、ブロック大会でもすごく惜しい所までいった優秀な先輩たちなんだから!」

  そこへ、大学生になったユッコ(21)とショーコ(21)が入ってくる。

ショーコ「おー! やってるねぇー!」

ヒマリ「ユッコ先輩! ショーコ先輩!」

ユッコ「ヒマリ、元気にしてたー? はい、これ差し入れ」

  ユッコ、ヒマリに栄養ドリンクの入った袋を渡す。

ヒマリ「ありがとうございますー!! これ入れないとエンジン掛からないんですよね」

ユッコ「もう、ヒマリ可愛いんだけど、何だか年下な気がしないんだよね~」

ショーコ「あ、ユッコもそう思った? 私もそう思ってた! 何でだろうねー?」

ヒマリ「えー、先輩たちより全然ぴちぴちですよー」

ユッコ・ショーコ「おいー!」


9 同・エントランス

  靴箱から履き替えて上がるエントランス部分。

  各、部活のトロフィーや賞状が飾ってある。

  そこには演劇部のブロック大会、優秀賞の賞状が残されている。

  それを鼻歌交じりに見ているヒカル(22)の後ろ姿。

            【おしまい】



~あとがき~

  最終回、お読みいただきありがとうございました。
  いきなり始めた『眠れる森のビヨ』の二次創作
 『森ビヨ・勝手にアナザーストーリー』でしたが、
  ストーリーラインを最後まできっちり決めた訳でなく、
  完全に見切り発車で、やりたい事を書き続けてきました。
  皆さんが、毎日コメントやいいね・RTをして下さって、
  本当に励みになりました。
  普段、脚本を書いてすぐに読んでいただき、
  コメントいただく機会はほぼほぼ無いので、
  時間に迫られながらもとても楽しく書くことができました。
  本当にありがとうございました!!
  そして、これも原作脚本を書かれた中島さんの
  素晴らしい作り込みと、ビヨーンズのメンバーの素晴らしい
  演技力で生き生きとしたキャラクターが出来上がっていたからです。
  本当に尊敬いたします。
  いつか、私も演劇女子部やハロプロの作品が執筆できるよう
  精進して参りたいと強く思わせてくれる出来事でした。
  お読みくださった皆様、本当にありがとうございました!

             知念 真理奈

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