邦楽名盤ランキング15

前回25枚でエントリーしたんですけど、やっぱり迷うところがあって、15枚に絞ろうと思いまして。この15枚は揺るがないよ!

15.はっぴいえんど 風街ろまん (1971)

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ど定番だけど、今回のランキングでは売上も重要視して考えたので15位に。と言っても、ホント凄いよね、このアルバム。何が凄いって、1971年にこれだけのサウンドとトータルアルバムを完成させたことでしょ。オーパーツ的な怖さを感じる。日本語ロックの誕生だ!とか言うのはやめよう。これ以前にも日本語でロックしているミュージシャンは確かにいた。けど、作品としての完成度で本作は圧倒的に抜きん出ている。また一つの記事として書こうかな。

14.岡村靖幸 家庭教師 (1990)

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日本音楽史に燦然と輝く天才がギリギリの状態で放った大傑作。スライ&ファミリーストーンの"暴動"のような、ギリギリの危うさが魅力的。性愛を賛美した預言的な歌詞は、自由自在に伸ばされ、縮められ、バキバキの音に乗っていく。そう、この音も全て岡村自身の演奏によるものだから驚くばかりだ。三曲目ではこのように高らかに歌われる。"僕らがいつか大人になったときこんなことしてちゃ絶対戦争すりゃすぐ負けちゃうよ"

13.さだまさし 夢供養 (1979)

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中身の伴わない歌手が濫造されたニューミュージック全盛の時代に、誰にも真似できない声と詩を持っていたさだまさし。その声も詩もまさにピークであり、両方がピークを迎えるとこんなにも凄い作品ができるのだ、と感嘆してしまう。詩はもはや俳句や都々逸の影がちらつくような曲もあり、日本のポピュラー音楽に詩作という面で限界を示している。ジャケットの一人プラットフォームに佇むさだは、当時"関白宣言"がヒットながらも賛否両論あったことへの孤独を感じる。その"関白宣言"を収録しなかったのも英断だ。

12.小沢健二 Eclectic (2002)

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97〜98年は小沢にとって厳しい時期で、それまでの王子様キャラを脱皮しようともがきながら徐々にフェードアウトしていった。そんな中、もはや作品さえ発表せずNYに渡った小沢が四年越しにディアンジェロを引っ提げてひっそりと発表した怪作。衝撃的なウィスパーボイスがアダルトな雰囲気を醸す。このネオソウルへの接近は賛否両論あったが、黒人音楽を日本人の血肉でどれだけ相対的に表現できるか(=Eclectic 折衷)という試みは2010年代からceroや星野源により引き継がれている。早すぎた作品としてじわじわ評価され始めているかも。

11.山下達郎 FOR YOU (1982)

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極上のリゾートミュージック集として気軽に聴くも良し、日本人離れした山下のファンクネスを堪能するも良し、世界に誇れるシティポップの大名盤として語るも良し、まさに完璧な作品である。今までの山下の圧倒的なスケールの大きさが美しいアートワークと合わさって無敵感が滲み出ている。1982年にこんなアルバムが極東から発表されて大ヒットを記録した、この事実を誇りに思いたいぐらい凄い。"風街ろまん"と同じくオーパーツよのような恐ろしさを秘めている。

10.小沢健二 LIFE (1994)

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フリッパーズギターでオラついていたお兄ちゃんがみんなの王子様に変身。人生を恋愛になぞらえながら全てを肯定する究極のポップス集であるが、肯定の裏にある否定に気づくとアルバムの表情がガラッと変わるかもしれない。さすが東大文学部卒であろう、韻や語幹を理詰めで揃えていると思われるハネまくる歌詞は思わず口ずさみたくなるものばかり。宇多田ヒカル登場の5年前に16ビートの曲をヒットさせていたことも大きい。黒人音楽が日本で受け入れられる土壌を作ったと思う。"Life is coming back!"

9.尾崎豊 十七歳の地図 (1983)

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80年代特有のエフェクトをかけまくった音像でありながら、尾崎の声の"強さ"のおかげで風化から逃れている。これがBOOWYやレベッカとなると賞味期限切れなのだ。音楽的には佐野元春の二番煎じ、で片付いてしまうのにそうさせない魅力はなんだろう。やはりカリスマ性が凄いんだなぁ。声も詩も17歳とは思えないほど成熟しており(未熟とも取れるが)、曲も粒揃い。ジャケもカッコいい。プロデューサーの須藤さんの功績も大きいが、とんでもない名盤だと思う。

8.佐野元春 ナポレオンフィッシュと泳ぐ日 (1989)

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80年代の邦ロックをセールスと革新性を両立しながら駆け抜けた才人、佐野元春。本作はその80年代を締めくくる作品でもあり、平成元年という新たなスタートを飾る作品でもある。今回佐野はあの独特のカタカナの多い歌詞を捨て、殆どを日本語で書いている。はっぴいえんどから始まる"日本語をロックビートに載せる"試みは本作でいとも簡単に成功されており、その風格は当時蔓延していた大バンドブームをジャケのように天空から見下ろしているよう。イギリスのパブロック界隈のミュージシャン達をバックに従えた演奏も素晴らしく、日本語ロックの金字塔として存在している。

7.BUMP OF CHICKEN ユグドラシル (2004)

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物語性の高い神秘的で幻想的な曲をギターをかき鳴らしながらメロディアスに歌うBUMP、RADWIMPSや米津玄師にも影響を与えて2010年代のロックシーンにもなお強い存在感を示しているBUMP、とにかくカッコよくてみんな大好きなBUMP。前作には"天体観測"が収録されているが、アルバム全体の完成度では本作がダントツ。美しいジャケットに見惚れているうちにあっという間に14曲聴き終えてしまう。こりゃミスチルの桜井も憧れるわな。

6.たま さんだる (1990)

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バンドブームの中から生まれた異端児、たまのメジャーデビュー作。イロモノだとか言われていたが、このアルバムを聴けば世界でも類を見ないオリジナリティを誇る音が奏でられていることに気づくだろう。まるで戦争孤児のような風貌で歌われる意味深な歌詞、プロのオペラ歌手が認めた息ピッタリのコーラスワーク、日本にサーカスがあったらこんな感じだろうなというようなアンサンブル、四人四様の曲と声。日本のビートルズとはまさにたまのことだろう。

5.よしだたくろう 今はまだ人生を語らず (1974)

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70年代を象徴する大名盤で、その風格は今も聴き手を圧倒する。酒や女といった題材は演歌が好んで取り上げるが、実は海を渡りブルースにもそういう性格がある。この二つを音楽的に結びつけたのが吉田で、つまり、演歌的なヨナ抜き音階を多用しながらもコブシを排除し、黒人音楽的なグルーヴ感を有していた。当時熱狂した若者たちも、この懐かしくも新しい感じに惚れたんじゃないかな。何だかんだ言ったけど、やはりこの声と歌い方がカッコいい。これに尽きる。

4.佐野元春 VISITORS (1984)

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トップテン二作目の佐野さん。紛れもなく天才です。83年にすでにブームとなっていた佐野さんが単身渡米、当時のNYの最先端をたっぷり吸収して産み落とした永遠のミッシングリンク。84年時点でヒップホップをバキバキの音に乗せ、オリコン1位にするという離れ業。この一人の男の挑戦は、今聴いてもなお未来的に響く。これにはサザンの桑田も衝撃を受けたようで、サザンは本作に刺激され傑作"kamakura"を作ったらしい。当時の桑田と佐野の関係は60年代のビートルズとブライアンウィルソンのそれに似ているなあ。

3.サザンオールスターズ 世に万葉の花が咲くなり (1992)

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そのサザン。90年代を代表する名盤だと思う。桑田のソロデビュー作からの付き合いである小林武史とのサウンドクリエイトは既に円熟の域にまで達している。ポップス万葉集のごとく様々なジャンルの音楽が渦巻いていて、具体的にはブルース、ジャズ、カントリー、ニュージャックスウィング、ボブディラン、昭和歌謡、後期ビートルズ、ファンク、山下達郎などなど。それらが打ち込み主体の混沌とした音像の窯で茹でられ、無理やり統一感を持たせられている。小林は本作でサザンから離れるが、90年代を代表するプロデューサーとして小室哲哉とTK時代を牽引した。

2.星野源 POP VIRUS (2018)

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SAKEROCKから数えて20年近く、星野源がやってきたことがしっかりと国民に届いた10年代を象徴するアルバム。前作"YELLOW DANCER"で開花させたブラックミュージックとJPOPの融合を引き継いだまま、今回は洋楽の最新ビートを採用しシーンを更新し続けている。このあたりは同じくカクバリズム出身のceroと歩調をそろえている、というか意識しているのかな。でもそんな最先端の中で鳴っている音楽は、驚くほどポップ。ポップス集としても高い完成度を誇っている。とにかく70年代中盤から細野晴臣が試みてきたことが40年の時を経てここまできたか、と感慨深く思う。

1.大滝詠一 A LONG VACATION (1981)

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はっぴいえんどから10年間好き勝手になっていた大瀧が初めて売れることを意識して叩き出した場外ホームラン。いや、レーベル倒産の憂き目もあったし、代打逆転優勝決定満塁場外ホームランとでも言おうか。"ロンバケは一日にして成らず"という諺があるように、うわべは極上のリゾートミュージックでありながら、掘っても掘っても新しい発見がある。これも"風街ろまん"同様、今度また一つの記事として書きたいな。ここに書くには情報量が多すぎる。

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