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自分のために走れ、みんなで輝け─『はこぶものたち』感想文



─ひとりひとり、みんなになってくれ


ゆっくり



…なるよ…っ


うん、なるよ…!


そうなるって信じててほしい



世の中の話題は既に『アフター・スクール・タイム』、つまり放課後にシフトしているわけですが、みなさんには楽しい放課後を過ごす前にちょっと遅めの期末試験を課したいと思います。


科目:イルミネーションスターズ(100点満点)

問題
イベントシナリオ『はこぶものたち』及び【WtoW】風野灯織を読んで次の問いに答えよ。

(1)「きみの座らないたくさんの席」とは何か答えよ。(配点 50)



(2)「─ひとりひとり、みんなになってくれ」とはどういうことか説明せよ。(配点 50)


できましたか?ちなみに制限時間はありません。正解もありませんし、点数は好きにつけていただいて構いません。いっぱい考えてください。それで試験は合格とします。以下は感想文という名の解答例です。よろしければしばしお付き合いください。(具体的な解答は第6話~エンディングに記しています。早く見たい方は下の目次からとんでください)

オープニング 漕ぐ人

漕ぐ人代表 兄やん

この章では今シナリオで出てくる最も大きな「関係」について分かりやすく示しています。

赤:大元のサービス提供者であるフードデリバリー企業。今感想文中では作る人である飲食店も内包して考えます。真乃はこの企業の10周年のキャンペーンガールをしています。

青:実際に食べ物を運ぶ配達員。その一人である「兄やん」を灯織は応援しています。

黄:サービス利用者。レッスン終わりにめぐるとトレーナーはフードデリバリーを利用します。

この3つの主体それぞれをイルミネの目線で描き、世の中の繋がりを提示しています。

もうひとつ描かれているものがあります。

灯織が「頑張っている人」応援すると同時に、「頑張ること」に飢えている描写です。これがこの後の話に繋がってきます。


第1話 小さな夜

こんなヤバいしりとりある?


というわけでイルミネが毎晩リモート報告会をしていることが判明。仲良しすぎだろ…尊い…。

真乃がフードデリバリー企業とのタイアップに続き今度はめぐるにも仕事が舞い込みます。環境に配慮した天然素材の洋服ブランドの宣伝らしいです。

その一方で灯織には当面大きな仕事がありません。応援することはできても「頑張ること」ができません。シャニPもそれを気遣い先手を打ちます。

『#283をひろげよう』ではユニット間の格差が描かれていましたが今回は(一時的とはいえ)メンバー間で格差を描くのはエグイですね。


第2話 みんなは頑張っている

ここメグちゃん

灯織とシャニPの面談。真乃とめぐるが大きな案件を抱えていることに引け目はないかとシャニPが心配します。灯織は忙しい2人を応援できると答えていますが

ここに灯織の「飢え」が表れています。みんな「は」頑張っている。だから灯織だって頑張りたいでしょう。

そんな灯織の背中を押すように面談は終了します。その後シャニPは様々な関係者に声掛けしていきます。シャニPも頑張ってるな…。


第3話 車輪

ここすき

VAR:ビデオ・アシスタント・レフェリー。主審の判定を映像で確認する審判のこと。

突如灯織にもサッカー番組のオファーが来ます。知識のないサッカーに対し不安がる灯織に「できないとは思わない」と答えるシャニP。頑張っている真乃とめぐるが頭をよぎった灯織はオファーを受けます。

初回放送は固くなりながらもこなした灯織にシャニPはこのように言います。

チームというのは、それぞれが自分の役割を果たしながらも助け合う集団です。すなわち確立した主体同士の関係だということです。

ここでシャニPが言いたいのは、これからも番組に出るのであれば灯織ができることをしっかり果たした上で、他の出演者と繋がろうということなのです。

ところで真乃のCMにあるこのキャッチコピー

とても美しいコピーだと思います。企業・顧客・従業員の理想的な関係を見事に表していますね。しかし、あくまで理想は理想。キャンペーン内容である「初回送料無料」「配達ちょっきり20分」などが配達員の負担になっていることがSNSへの投稿で伺えます。また自転車事故のような描写もあり、不安を煽ります。

これらから押さえておきたいポイントは世の中の関係というものは、決していい方向ばかりにはいかないということですね。当然ですよね。一方にとってはよいことでも、他方にとってよいとは限りません。それが社会というものなのです。


第4話 3つの夜

分かりやすくイケイケな企業ですね

この章でのトピックは
・真乃・めぐると灯織の対比
・シャニPの営業活動
の2つです。

・真乃・めぐると灯織の対比

真乃がタイアップしているフードデリバリー企業がサッカークラブの経営権を取得したことにより企業の注目度も跳ね上がります。その真乃が出演するCMも流れれば自然に真乃の注目度も上がります。つまりは上手くいっているってことです。

めぐると灯織については言うまでもなく対比で描かれています。コメントを拾いながらインタビュー相手の話を引き出して盛り上げていためぐる。一方番組の収録がままならず、あまり溶け込めてもいない灯織。

この対比構造及びこの章のイルミネ報告会が描くものは2つ。①灯織の頑張るどころか2人に心配をかけている現状への焦燥感。サッカーの本を買ってくるなどしたのはこれに起因しています。②2人が灯織を応援してあげたいという気持ち。これはこの後の章に関わってきます。

・シャニPの営業活動

噂の重要人物「広告会社営業」と飲んでいます。ここでシャニPの営業活動の成果が出ることになります。なんとフードデリバリー企業が買収したクラブチームの開幕戦ハーフタイムショーにイルミネはどうかと打診されます。シャニPは悪くないタイミングだと言っていましたが悪くないどころか奇跡ですよね、これ。だって

真乃がタイアップするフードデリバリー企業がクラブチームを買う

イルミネにハーフタイムショーのオファー
(サッカーという共通項で結ばれる)

灯織がサッカー番組に出演する

この章の前段で対比という形で分断されていたイルミネがサッカー繋がりで集結するのです。このシナリオでは徹底して世の中の繋がり・因果を描いてきますね。


第5話 みんなが

この画面の破壊力ヤバない?

ハーフタイムショーの承諾から開幕戦当日までが描かれた章です。非常に多くの場面が出てきますが、さらっとまとめます。

リフティングの練習をする灯織。また真乃とめぐるがハーフタイムショーに出演することが決まります。

・「風野灯織のVAR!」による開幕戦中継。チームの熱気に灯織が触発されます。

・真乃がフードデリバリー企業の社長と遭遇。リーグ参入への思いや企業の在り方などを真乃に話します。

・ハーフタイムショーに臨む真乃とめぐる。いつもと違う空気を感じ取り緊張する2人。

・そして…


第6話 きみの座らないたくさんの席

開幕戦の後、サポーターとイルミネを見に来たファンとで、観戦マナーをめぐりSNSが荒れる。ただイルミネの活動に影響はなく日常が戻ってくる。

イルミネは今回の一件について、責任の所在を考えます。

・真乃・めぐるの証言

2人の主張は同じです。灯織を応援したいという気持ちから臨んだハーフタイムショーでしたが、それによってスタジアムにいたたくさんの人、それぞれ誰かを応援するために来たたくさんの人が見えていなかったと話します。パフォーマンスの前に2人が感じたいつもと違う空気というのは、自分たちのファンだけがいるわけでない環境、サッカー風に言うならアウェー感のことなんですね。

そのことを分かっていなかった自分が悪い、と彼女たちは言います。

・灯織の証言

灯織の主張はそもそも論です。もっと頑張りたかった灯織はサッカー番組のオファーを受けましたが、そもそもそれを無理に受けてなかったらこんなことは起きなかった。

だから私が悪い、と彼女は言います。

・シャニPの主張

「自分が悪いって思って、そこで全部終わらせたらダメ」とは勿論本当は誰が悪いのか話し合えという意味ではありません。自分たちはどうすればよかったのか、これからどうすればいいかを考えろということです。

Q①.自分たちはどうすればよかったのか?

A①、主体性を持てばよかった

全員が今回の仕事を受けるとき、「他の2人がいいなら」という回答をしました。これによって全員主体的な意思決定を行わないにもかかわらず、合意ということになりました。

自分で決めないということは、それが「いいこと」じゃなくなった時にそれは他の人のせいみたいになってしまいますし、手元に何も残らないのです。

自分でやりたいと言っていたならば、自分の選択に自身も責任も持てていただろう。「いいこと」でなかったとしても、やりたいことをやったという感触は残っていただろう。

だから彼女たちは「やりたい」と言えばよかった。主体性を持てばよかったのです。

Q②.これからどうすればいいか?

A②.いっぱい考えよう

「エシカルは欺瞞」というコメントを受け、環境に配慮した服もいいことばかりではないと知っためぐる。今回のハーフタイムショーもいいことだと思ったらそうじゃなかった。じゃあこれらは必要ないもの?

そうではありませんよね。前にも言いました。一方にとってはよいことでも、他方にとってよいとは限らないというだけのこと。いい側面を受け取る人も悪い側面を受け取る人もいるのです。ハーフタイムショーだって、灯織を応援したい、ファンに喜んでほしい、という気持ちはいいことに決まっています。ただあのスタジアムにはもっといろんな人がいたというだけです。

大事なのはそれを理解して、考えることなのです。だからイルミネはそれを考える機会として、スタジアムにボランティアに行きたいと提案したのです。きっとそれは紛れもなく、自分たちの意思で。


ところで、まるでイルミネの背中を押すように、沈黙を破ってある配達員のアカウントが蘇ります。イルミネがまた前に進んでいくことのメタファーになっていますね。


エンディング 運ぶ人

ゴミ拾い、清掃などのボランティアを行ったイルミネ。誰もいない座席、落し物の折り畳み傘から、そこに座っていた誰かやその隣に座っていた誰かやこれから座るであろう人のことを考える。帰り道、兄やんがケガから復帰し投稿を再開したことを灯織が話す。

お待たせしました。これまでのシナリオの内容をふまえて試験へ解答していきたいと思います。


(1)「きみの座らないたくさんの席」とは何か答えよ。(配点 50)

〈解答例〉
自分たちの知らない、誰かを応援している誰か、及びその隣で誰かを応援している無数の人たちのこと。

〈解説〉
まず「きみ」とは誰のことか。問の「きみの座らないたくさんの席」とは「きみとそれ以外」と言い換えることができるため「きみ」というのは、関係者やファンといったイルミネが知っている存在であると推測できます。逆に「きみの座らない~」はイルミネが知らない存在であるということです。

そしてその知らない人たちもまた誰かを応援していて、その隣の人もそう、その隣の人もそう…という風に無数に存在します。

以上を簡潔にまとめると上記の例のようになります。

イルミネは今回のことから、世の中には自分の知らないたくさんの人がいること、だからこそいいことは必ずしもいいことではないということを学びました。つらい経験だったかもしれませんがそれを理解し考えることはとても大事な視点です。私も、一つ大人になったイルミネをこれからも応援していきたいと思います。

また今回の学びに照らし合わせると、兄やんに会ってみたいかめぐるに問われた灯織が「…ううん」と答えた心理も分かります。

どこかで誰かが頑張っている。頑張ってる人がいるってことは分かっているから、それは別に知らない人でもいいのです。だから会わなくてもいい。兄やんは「きみの座らないたくさんの席」にいていいのです。


(2)「─ひとりひとり、みんなになってくれ」とはどういうことか説明せよ。(配点 50)

〈解答例〉
イルミネーションスターズには、ひとりひとりが主体性を持ち自分のために頑張ることができ、その上でみんなのことを考えられるようなグループになってほしいというプロデューサーの思いのこと。

〈解説〉
「─ひとりひとり、みんなになってくれ」を作中の言葉で言い換えると「チームになれ」です。シャニPが灯織に「チームにならなきゃ」アドバイスを送るシーンもありました。「チーム」とはどんな存在として描かれているかをまとめれば解答になります。

ex1)サッカークラブ

サッカークラブは、勝利は勿論、自らの出場機会や契約・年俸を求める選手や監督という主体的存在の集団です。その一方で多くのサポーターやスポンサー、あるいはホームタウンなどたくさんの人のことを考えなければならない集団でもあります。

自らの活躍や契約のために選手が頑張れば、ひいてはそれがチームの勝利に繋がりサポーターのためにもなる。それぞれの主体性が結果的にみんなのためになるという代表的存在として描かれています。

ex2)フードデリバリー企業

今シナリオのキーであるフードデリバリー企業だってそうです。一般に企業も経営を継続するために利潤を求める集団です。そのためには顧客のこと、提携する企業のこと、従業員のことをたくさん考えなければなりません。また、新規顧客、これから提携するかもしれない企業だって考えなければならないし、配達員のマナーが悪ければSNSで晒されてしまう現代ではあらゆる人に配慮したコンプライアンスの遵守も求められるでしょう。

最初にこのような関係図を提示しました。フードデリバリー企業を中心とした関係をイルミネに当てはめたものです。これをオープニングで示したのは今思うと、イルミネとフードデリバリー企業はある意味同じということを言いたかったのかもしれません。上手くいかないことがあっても、それぞれが主体的で、かついろんな人のことを考えられる存在を目指すという点で。


ひとりひとりがまず自分のために頑張る。その中でみんなのことを考えていく。その積み重ねが最終的にみんなのためになれば─。灯織がずっと考えていた「頑張る」ということの理想形こそが、「─ひとりひとり、みんなになってくれ」ということなのでしょう。

イルミネがそういう、ひとりひとり違った輝きを放ち、それが繋がりトライアングルになり、そしてその輝きがみんなに届けられるグループになることをシャニPは信じているのです。そして私もそう強く信じています。


まとめ

これにて期末試験は終わりです!お疲れさまでした!みなさん楽しい放課後をお過ごしください!起立!礼!ありがとうございました!

というわけでかなり堅苦しく長い感想文になってしまいました。ここまで読んでくださったみなさん本当にありがとうございます。とはいえ『はこぶものたち』はテーマがまず堅苦しかったのでやむなしかなと思います。

心残りがいくつかあります。1つはイベントからずいぶん経ってしまったこと。シナリオの読解に時間を要したこととバレンタインとかち合ったことが重なり随分後回しになりました。もう1つは【WtoW】風野灯織について触れられなかったこと。内容的にまとまってしまったため触れる余裕なかったです。灯織が『風野灯織のVAR!』にてチームとして認められていることが分かったり、いつものイルミネのノリが見られたりと良コミュなんですけど…!あとでしれっと足すかもしれません。

本文長かったんでこんなもんにしたいと思います!私も放課後を過ごしたいと思います。それでは今回はこの辺で!どうもです!



おまけ 灯織のバレンタインについて

まず投稿日3/4は…灯織の誕生日!!!おめでとう!!!

感想文にお祝い要素何にもないんでせめて何か…ということでこの間のバレンタイン記事で書けなかった灯織’s バレンタインを紹介させてください!

『ひとくちせんべい』風野灯織

灯織のおせんべいには表の意味と潜在的な裏の意味があるのです。

・チョコレートは飽きてしまう
表:甘いものばかりにならないように気遣い
裏:他の人と被らないような私だけの特別な贈り物

一見チョコがいっぱいもらうであろうシャニPを気遣ったチョイスですが、準備コミュにもあるように被らないように選んだ結果なのです。無自覚正妻ムーヴ。

・やっぱりバレンタインにしょっぱいのは変
表:奇をてらわなければよかったという後悔
裏:チョコをあげた方が喜んでもらえたかもという後悔

どれだけ特別でも喜んでもらえる方をあげればよかった…!という灯織の即時反省会。しかしシャニPの爆速フォローで事なきを得ます。

あれこれ考える灯織が可愛いよねっていう話。気持ちを込めて選んでくれたならそれが正解ですよね。

ちなみに元記事です。よろしければ

これにておまけも終了です!灯織、本当におめでとう!

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