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好きだから作家にならないほうが良い?

X(旧Twitter)に、宮前葵先生のこんなポストが流れてきました。身につまされる内容です。好きという気持ちは、大事なんですが。それだけでは、商業プロは続かないんですよね……。

「私は小説書くのが好きだから小説家になりたい!」という人は、逆に小説家にならない方が良い。人間の「好き」は平均三年長くて五年しか保たない。小説家になってから小説書き好きじゃなくなったらどうするの?

https://x.com/AOIKEN72/status/1794104858221441213




①作話が嫌いになる人

願いがかなってプロの作家になって、でも作品作りが嫌いになって辞めた人、多いです。商業プロとなると、楽しいだけではなくなり。
創作の義務感で、楽しくなくなりがちですね。

あの鳥山明先生でさえも、『ドラゴンボール』の後半以降は描くのが辛く、気持ちが悪くなり、ついに連載終了を決意されたとか。身体が創作を拒否する状態です。紙にペンで絵が描けなくなったと、後年告白されていますね。

売れたら売れたで、それを維持しないといけないプレッシャー。次もヒットを期待される、周囲からのプレッシャー。
楽な道はないです。

②好きなものは書かない

その意味で、さいとう・たかを先生が提唱され実践した分業制度は、維持が大変ですが、作家の制作体制を支えるには、とても良いシステムですね。
ただ、そのためには十雨分な人件費を払えるだけの、ヒット作がないと難しく。

また作家は、職人気質の人が多くて。時間さえ余裕があれば、明日スタントなんか使わず、全ページ自分が描きたいタイプが多いです。
さいとう・たかを先生や本宮ひろ志先生のような、プロデューサー気質の漫画家のほうが、少数派。これは小説家も同じでしょう。

そうなると、「一番好きなことは趣味として取っておいて、得意なこと・才能のあることを仕事にしろ」というアドバイスが、正しい気がします。

最後の四割打者テッド・ウィリアムズも、城島健司選手も、一番好きだったのは釣りでしたが、そういう趣味で楽しむのが、精神的には良いのかもしれませんね。

③書きたいものを書かない

そういえば、『スカイ・クロラ』などで知られる作家の森博嗣先生が、興味深いことを語っておられた記憶があります。
自分は、好きなことを書いていないから、作家として長く続けられたと。何かのインタビューだったと思うのですが、出典は思い出せません。

ある意味で、職人気質を表す言葉ですね。前述のさいとう・たかを先生も、自分が描きたいものは描かない、これを描いてほしいと依頼があったものだけを描くと。リアル・ゴルゴ13ですね。もちろんそこには、少女漫画を描いて、諦めた挫折体験も在ったのでしょう。

④とにかく悩むより書け

森先生には、こんな著書もありますね。

小説家になるためにはどうすれば良いのか? 小説家としてデビューするだけでなく、作品を書き続けていくためには、何が必要なのだろうか? プロの作家になるための心得とは? デビュー以来、人気作家として活躍している著者が、小説を書くということ、さらには創作をビジネスとして成立させることについて、自らの体験を踏まえつつ、わかりやすく論じる。【目次】まえがき/1章 小説家になった経緯と戦略/2章 小説家になったあとの心構え/3章 出版界の問題と将来/4章 創作というビジネスの展望/5章 小説執筆のディテール/あとがき

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これもまた、非常に納得する内容が多く。悩む時間があったら書け、というのはもう全くその通りで。けっきょく、修羅の道は立ち止まったら、かえって厳しくなるので。

書くか、暫く休むか。
兼業で楽しむという選択肢は、令和の時代にはむしろ必要な選択肢かもしれません。

森先生自体は、すでに現役を退いた方ですので、赤裸々な内容ですが、得るものは大きいのではないでしょうか?


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