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フリーランス新法について

小説家のわかつきひかる先生が、出版社に新人作家が振り回されないように、ライフハックを連続ツイートされておられました。
こういうアドバイスって、本当に大事です。
それに関連して、11月よりスタートするフリーランス新法について、漫画家に関わる重要な部分と、MANZEMI講師陣の実体験の事例を、併せて紹介いたします。※随時更新予定

新人作家のみなさんに、悪巧みをお教えします。
本が出て少し経つと契約書が送られてきますが、契約書は修正してもらうことができます。契約書は難しくて読むのは大変ですよね。そこで裏技。書協のホームページに公開されている契約書のヒナ型と照らし合わせましょう。(続
https://jbpa.or.jp/publication/co

https://x.com/Wakatuki_Hikaru/status/1816419522813067614

続きのポストも重要なので、是非リンクからお読みいただければ。



まずは動画の確認を!

11月から施行されるフリーランス新法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)では、事前に書面やメールで給付の内容や報酬の額や支払期日など提示しないと、アウトになるようです。
下記のサイトに、わかりやすい動画が用意されていますので、まずはそちらからどうぞ。

法律の専門家ではないので、細部はわかりませんが、重要と思える部分を、以下に転載しておきますね。


①書面などによる取引条件の明示

まずは、書面などによる取引条件の明示(公正取引委員会・中小企業庁担当)部分です。

フリーランスに対して業務委託をした場合、直ちに書面または電磁的方法(メール、SNSのメッセージ等)で取引条件を明示する義務があります。
明示方法は、口頭での明示はNGで、書面または電磁的方法かを発注事業者が選ぶことができます。
取引条件として明示する事項は9つです。

①給付の内容
②報酬の額
③支払期日
④業務委託事業者・フリーランスの名称
⑤業務委託をした日
⑥給付を受領する日/役務の提供を受ける日
⑦給付を受領する場所/役務の提供を受ける場所
⑧(検査をする場合)検査完了日
⑨(現金以外の方法で報酬を支払う場合)報酬の支払方法に関して必要な事項

これは、厳しいですね。
口約束はNGで、紙の書面や電子メール、あるいはデジタルデータ化されたデータを記憶媒体などに入れて渡すなど、確実に証拠が残るのが大事と。
電話や口頭で済まして、後で言った・言わないに持ち込む出版社とか、普通にいますから。これでその手は封じられましたね。

でも、こんなの他の製造業とかなら、当たり前の契約の提示なんですけどね。
でも、出版社の圧倒的な優越的な立場とその濫用を、地方裁判所の裁判官とか理解できず、フリーランスに不利な判決を出すことも、しばしばでした。
少しは改善されると良いのですが――。

②報酬支払期日の設定・期日内の支払い

続いて、報酬支払期日の設定・期日内の支払い(公正取引委員会・中小企業庁担当)について。

報酬の支払期日は発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内のできる限り短い期間内で定め、一度決めた期日までに支払う必要があります。
ただし、元委託者から受けた業務を発注事業者がフリーランスに再委託をした場合、条件を満たせば、元委託業務の支払期日から起算して30日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定めることができる【再委託の例外】もあります。

これは漫画家だと逆に、アシスタントの仕事に対する、支払いとかの厳格化も求められますね。
例えば、週刊連載ならともかく、月刊連載だと、掲載号の翌月に支払ってくれるのは、大手のみで。翌月払いが一般的で、中小だと翌々月払いなんてことも、昔はありましたね。

8月末発売の雑誌だと、アシスタントは7月中に入って、なんてこともあります。でも、支払いは9月末支払いでないことも、ありますから。

そうなると、60日以内という縛りを、越えてしまう可能性もあるので。漫画家の方も、支払いで厳格化が求められるという意味です。
計画的な支払いと、そのための余裕が必要になり、自転車操業タイプの作家には、辛いことに。

③7つの禁止行為

7つの禁止行為(公正取引委員会・中小企業庁担当)について。

フリーランスに対して1か月以上の業務を委託した場合には、
7つの行為が禁止されています。
受領拒否(注文した物品または情報成果物の受領を拒むこと)
報酬の減額(あらかじめ定めた報酬を減額すること)
返品(受け取った物品を返品すること)
買いたたき(類似品等の価格または市価に比べて、著しく低い報酬を不当に定めること)
購入・利用強制(指定する物・役務を強制的に購入・利用させること)
不当な経済上の利益の提供要請(金銭、労務の提供等をさせること)
不当な給付内容の変更・やり直し(費用を負担せずに注文内容を変更し、または受領後にやり直しをさせること)

①の受領拒否ですが、これって出版社から作家への問題もそうですが、アシスタントの絵に対して、作家がリテイクを出すのも違反になるのか、そこはわかりませんね。

漫画家が求めるクオリティを満たしていないからリテイク、というのが気軽にできなくなりますね。ただ、ここらへんは基準が工業製品のようにあるわけではないので、難しそうです。
これは③の返品も関わってきますが……。

④の買い叩きは、集英社が週刊少年ジャンプなどの新人作家の原稿料を公表しましたが。今後は、多くの編集部でこの数字を公表することが求められるでしょう。また、単行本印税の相場なども、8%とか5%に値切っている編集部は、苦しくなるかもしれません。

⑤の購入・利用強制は、知り合いのデザイナーが旅行代理店系でやられたことがあります。
そこのパンフレットの仕事をオファーされ、そこそこのデザイン料だったので喜んでいたら、その後に海外旅行のツアーの案内が送られてきて、断ったらそのデザインの仕事、次から来なくなりました。

これも、実質的な買い叩きですから。たぶん、受けたら次の仕事も来たでしょうけれど。ここも、あからさまには言いませんが、暗に要求してくる。そして断れば、何やかやと理由を付けて、次の仕事は回さない。
今後は、こういう形の買い叩きを、どう防げるかが、課題になりそうです。

②の報酬の減額(あらかじめ定めた報酬を減額すること)も、こういう形で仕掛けてくる会社もあります。
お気をつけて。

⑥の不当な経済上の利益の提供要請(金銭、労務の提供等をさせること)は、例えば単行本のカラーイラストの描き下ろしを、無料という慣習も変わるかもしれません。
もちろん、作家がサービスでおまけのページなどを書き下ろすのは自由ですが。これも、半強要になると、グレーゾーンに。

⑦の不当な給付内容の変更・やり直し(費用を負担せずに注文内容を変更し、または受領後にやり直しをさせること)も、重要ですね。

某編集長のように、下書きのキャラクターの髪型が気に食わないからと全部書き直させた上で、「やっぱり掲載はなし」と嫌がらせをし、作家が泣き寝入りして自発的に編集部から去るように仕向ける、なんて汚い手法も使えなくなるので。

④募集情報の的確表示

募集情報の的確表示(厚生労働省担当)について。

広告などによりフリーランスの募集情報を提供する際には、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならず、また、募集情報を正確かつ最新の内容に保たなければなりません。

これは、虚偽の募集がかけられなくなるので、PR漫画やコミカライズ漫画の募集などで、重要ですね。

ただこれも、漫画家側もちゃんとした対応が求められる部分も。
例えば、アシスタント先に行ったら、食費はおにぎり2個分で計算されていたとか、交通費が無茶な最短距離で計算されていたとか、何日も風呂に入れないとか、仮眠は煎餅布団の何年もシーツの洗濯もしていない・干してないような、劣悪な環境ではダメということに。

少なくとも、事前にちゃんと条件を詰めておかないと、漫画家側の瑕疵になりそうですね。

⑤育児介護等と業務の両立に対する配慮

育児介護等と業務の両立に対する配慮(厚生労働省担当)について。

フリーランスに対して6か月以上の業務を委託している場合、フリーランスからの申出に応じて、フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるよう、必要な配慮をしなければなりません。
また、6か月未満の業務を委託している場合も配慮するよう努めなければなりません。
配慮の例としては、
「妊婦健診がある日について、打ち合わせの時間を調整したり、就業時間を短縮したりする」
「育児や介護などのため、オンラインで業務を行うことができるようにする」
といった対応があげられます。

これも、重要ですね。
例えば、漫画家を廃業して故郷に帰ったというタイプには、家業を継いだり親の介護の問題もあって、という理由の人が多いです。
ただ、空いた時間を利用して、デジタル・アシスタントをという人も多いのです。

また、女性漫画家が過半数を超える現在、育児に対する配慮は必然に。
ただ、その場合は選考過程で意図的に、外す作家も出るでしょうし。
ここらへんは、作家の側も介護や育児に配慮しなければいけないアシスタントと、配慮しなくて良いアシスタントがいたら、後者を選ぶのは止められません。
そういう意味では、有名無実化する危険性もある項目かもしれません。

以上、簡単に触れてみましたが、まだまだ勉強しないといけない部分もありますので、随時加筆修正するかもしれません。
また、法律の専門家にも、詳しく話を聞く機会を設けたいところですね。
随時更新します。


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