説明の難しさ
X(旧Twitter)を見ていると、蝉川夏哉先生の、こんなポストが流れてきました。
①1000ページの大作を書く前に
これ、学生や受講者を指導していても、本当に多いですね。これが説明ならば、単に聞いてもらえないで、自分の説明の下手さに気づきますが。ときどき、1000ページの作品を書いちゃって出版社に持ち込みする人間とか、います。
もちろん、その行動力自体は、素晴らしいのですが……。投稿者に求められているのは、まずは30〜45ページの読み切りで、面白い話を作り上げる力です。
それがたった30ページの作品であっても、読者は数ページ読んで面白くなければ、途中で投げ出します。いわんや1000ページの超大作をや。だからこそ商業作家には、読んだ読者に次のページをめくらせる力が必要なのですね。
②ページをめくらせる力
面白さを伝えるために、いきなりEから話して、話を遡っていく倒叙。ABCを思い切って削ってしまい、DEと語る引き算パターン。ACEと飛ばす一個飛ばしにするモンタージュ、方法は多種多様です。
MANZEMI講座で、まずコマ割りの文法と演出から教えるのは、この点を踏まえているからです。
コマ割りの文法とは、単にページを埋めるための手練手管ではありません。どうやったら読者に、次のページをめくってもらえるか、そのための演出と不可分一体のものですから。そういう ページをめくらせる力の積み重ねが、1000ページを超える大長編さえも、最後まで読み終わらせる力になります。
③構成力のあれこれ
みなもと太郎先生はまさに、坂本龍馬というEを描くために、関ヶ原の戦いというAから説き起こして『風雲児たち』という、1979年から2020年の長きに渡り、江戸時代の通史を描かれたのですが。
これも、ギャグ漫画の短いページで 読者を引き付ける力を持った、みなもと先生の力量ゆえかと。各章の登場人物も魅力的で、そうやって田沼意次や林子平など、教科書とは違う人物像が浮かび上がってきました。
これが『北斗の拳』の週刊連載版の第1話場合は、時系列から言うならば、A+DEFのパターンでしょうか。
Aで発端の核戦争を描き。
BCをバサッと削って、Dで世界の変化を見せ、ついでにここで北斗神拳の予兆を示し。
Eは主人公のキャラクターと、その回の主役の少女リンの問題を見せ。敵を倒す中で、彼女が言葉を取りもどし、また北斗神拳の攻撃面と治療面も見せ。モヒカンもバシッと倒し、次回への期待を高める。
とてもハイレベルな構成ですね。Eの中でも、いくつかの構成が見えます。
④最適の文字数は?
ここから派生して。
小説の場合、投稿作品でも一般に400字詰め原稿用紙250枚から350枚が要求されるわけですが。これって、漫画だと200ページから400ページぐらいの内容でしょうか。かなり膨大な分量です。
逆に言えば小説は、ABCDEF……XYZみたいな、高い構成力が求められるんですよね。8万文字から10万文字の中でACEGIKMOQSUWYなんて、一個飛ばしの構成が、必要かもしれませんから、もっと大変でしょう。再び、蝉川先生の指摘を転載。
2500文字は、400字詰め原稿用紙だと8枚ぐらいでしょうか。ちなみに、当方の漫画原作だと24~36ページ想定のものだと6500文字ぐらいでした。小説にすると地の文が増えるので、8000文字から10000文字でしょうか。2500文字は漫画だと6~9ページぐらいですかね。
カクヨムやアルファポリスで発表した小説の感触だと、もうちょっと多いですね。だいたい、16~18ページの漫画ぐらいのイメージでしょうか。週刊連載漫画のページ数に近いですね。
⑤短編~中編小説メソッド
個人的には、漫画の16~30ページに該当する、掌編や短編の修業の場があまりないのが、けっこう問題と言うか。最初から高い構成力の才能があるタイプしか、小説界は求めていないのか……と、思ったりします。
推理小説の始祖エドガー・アラン・ポーの短編主義の信者からすると、短編から長編を書くメソッド化できれば、もっと才能を拾えそうなんですが…。ここらへんに関しては、MANZEMI事務局のスタッフや、他の講師とちょっと話し合っていることなのですが。
300文字・3000文字・30000文字とステップを踏んで、構成を学ぶプログラムを、2024年は試してみたいところです。
筆者の小説(電子書籍版)でございます。お買い上げいただければうれしゅうございます。
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