「ママのどこが好き?」4歳の息子に聞いてしまった話
4歳の息子を寝かしつけていた時のこと。
なぜだったかはわからないけれど、私は息子の好きなところを思いつくかぎり、たくさん挙げてみた。
「いっぱい食べるところでしょー、アサリとか変な食べものが好きなところもいいよねぇ。あとはすなおで、◯◯ちゃん(弟)にやさしくしてくれるところも好きだし。電車とか車が好きすぎるところも、ママはとっても好きだなぁ。それに、やっぱりかわいいし、ちょっと恥ずかしがり屋なところもいいと思うよ。負けずぎらいなところもね」
息子は布団にくるまりながら、もじもじしながら、ときおり天井を見上げ、ニヤニヤしたりして、話を聞いてくれた。
そういえばnoteで「娘の好きなところを100個書いたノート」をプレゼントした人の話を読んだなぁ、と話しながら思った。そのアイデアをいつかやってみたいと思ったけど、こうして”話すプレゼント”ってのもありかもなーとボンヤリ考えていた。
そうして「息子の好きなところ」をひととおり挙げおわったとき、ふと話の流れで、私はこう聞いてしまったのだ。
「じゃあ、ママの好きなところは?」
息子はその質問を聞くなり、無言になった。
布団の中で右にごろんとして、左にごろん、右にごろん・・。布団の端っこをちょっと噛み、いつになくまじめな様子で「んんー」と言いながら、考えこんでいるようだった。
1分くらい経った頃だろうか。大人の私だったらこういう時、てきとうに「優しいところ」とか言ってすみやかに回答を出す処世術を知っている。息子もそんなありきたりな答えを言うのだと思った。
でも考えてみたら、4歳の息子にはたぶんこれが人生で初めて「私の好きなところは何?」という質問を投げかけられた経験だった。まじめに考えたら、困ってしまうのも当然だ。
ああ、面倒くさい女になる前に(もうなってるけど)、早くこの話を切り上げよう。
私は「もういいや、おやすみ〜」と言おうと横を向いたその時、考えこんだ息子の口から、こんな言葉が出てきたのだ。
「ママの、わらったかおがすき」
私はびっくりした。
ちゃんと考えて、じぶんの答えをひねりだしたこと。何も言えないか、もしくはいっぱい言うのかと思ったら、ひとつだけに絞りこんだ潔さにもびっくりだ。巨匠のコピーみたい。
そして、嬉しいというか、申し訳ない気持ちになった。
そういえば前にも、何かにイライラしながら台所に立っていた時「ママわらって」と言われたことがある。この日だって、急いで仕事を終わらせ、料理をつくって食べさせてお風呂に入れて歯を磨いて絵本を読んで、やっとたどり着いた寝る前の時間だった。
その間、息子に笑いかけた時間はいったい何分、いや何秒あったかな。
その日のスマホのスクリーンタイムには「2時間43分」と表示されていた。スマホを見ている時間はこんなにも長いのに、私は息子に笑顔を見せられている時間は、なんて少ないものだろう。
その前の晩は、家族で豆まきをした。私は鬼のお面をかぶって息子たちを追いかけまわし、息子たちはキャッキャと豆をまいていた。
お面の中の私は笑っていたけど、普段の私は365日、鬼の顔ばかりしている気がする。お面より普段の私の方が、きっと鬼だった。
「鬼は外、福は内」
これは、家の中の話だけじゃなく、
私の中の話でもあるのだ。
鬼の顔を外に追い出して、
たくさん笑って、家族に福をまいていこう。
世界でいちばん好きな息子ふたりの寝顔を見つめながら、
そう誓った2月の夜のことだった。
小森谷 友美
noteで書ききれない話をつぶやいてます
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