「宝物はなあに?」5歳息子の答えに、胸がじーんとした話。
仕事も、夜ご飯のしたくも片付けも、お風呂も、絵本読みも。ぜーんぶ終わらせた夜9時ころ。
あったかいふかふかのお布団にくるまる時間は、私にとっていちばん幸せな時間です。
やるべきことをすべて終わらせた安堵感に浸りながら、5歳と3歳の息子ふたりと”いちゃいちゃ”できる唯一の時間だからです。
私がひとたび枕に頭をつけるなり、息子ふたりはその隣をめがけて、飛びこむようにやってきます。
人気ポジションは、私の右隣。左は窓があるせいか、「鬼がやってくる」と言ってなぜか不人気です。長男が先に右についたら、私と長男の上に次男が飛び乗り、かき分けるようにしてその間に入ってきます。
私としては、ほわほわと丸っこくてパジャマに包まれたぬいぐるみみたいな次男も、ぷりぷりした体にちょっぴり筋肉や骨らしさを感じる長男も、どっちもウェルカム。
でもふたりは「ママの隣がいい〜〜」と泣いてケンカすることもあるため、「今日はモリくん」「今日はヨウちゃんね」と、じゅんばんこで隣になることに決めました。
私はまるで世界一のモテ女になったかのような気分です。相手は5歳と3歳、しかもたったふたりなのに(笑)
その日は、長男のモリが隣になる日。
次男のヨウは、疲れたのか、ちょうど先に寝てしまっていました。
金曜日だったので、明日はおやすみです。いつもより少しだけ余裕があります。私は長男とふたりでおしゃべりしながら、布団にくるまりました。
「モリは、ママのだいじな宝物」
私はおしゃべりの中で、モリにそう伝えました。
ふたりに「大好き」という気持ちを伝えたいけれど、日常の慌ただしさの中では、なかなか伝えるタイミングがありません。恥ずかしいしね。でも布団の中ではなぜか素直に言えます。それに「宝物」というなら、恥ずかしがり屋の私でも伝えやすいのです。
「たからものって、なあに?」
今まで何度か「宝物」と言ってきたことがあったのですが、この日はじめてモリがそれを聞きました。きっと次男がもう寝ていたり、金曜日だったりして、私に余裕があることを感じたからかもしれません。
「うんとね、”大事なもの”っていうことだよ。ママの大事なものは、モリのことなんだよ」
そっか、というように、モリは黙って考えているようでした。
私はそこで、聞いてみました。
「モリの宝物はなあに?」
なんて答えるかな。聞いたそばから、私の頭が回転しだします。
この流れで「ママ」っていうのかな。そしたら嬉しいけどな、そんな淡い期待ももちはじめます。モリはずっと、黙ったまま。考えこんでいます。
「プラレールかな?」
私はモリが考えているそばから、宝物の一例として、彼の大事にしている電車のおもちゃの名前をあげてみました。でも宝物っていうのとは、ちょっと違うかなぁ・・そう思った瞬間。その私の回答例をかき消すかのように、モリはこう答えたんです。
「・・ヨウちゃん。」
それは、もう寝てしまった弟のことでした。
私は宝物を「弟」だと答えたことが意外で、とてもびっくりしました。モリはつづけて、こう言います。
「ヨウちゃん、いつもぼくが保育園のお庭にいると、走ってくるんだよ。それでいっしょにあそぶの」
そういえばこの間、私が自転車で保育園のそばを通りかかったときも、ふたりはジャングルジムのてっぺんで遊んでいたっけ。ふたりの声はフェンスをとびこえて、自転車をこぐ私にも聞こえてくるほど、楽しそうでした。
「いつもいっしょに遊ぶの?」
「うん、保育園にはママがいないから」
「お友達とは遊ばないの?」
「ヨウちゃんは、ぼくのおともだちとも遊ぶよ。フミちゃんも、れんくんも」
モリの5歳の大きいお友達の中で、ひとりだけ3歳の子がまじってキャーキャーと走りまわる様子が想像でき、クスッと笑ってしまいます。
ひとりだけ年下だと邪魔者あつかいされそうなものですが、モリの友達はみんな、ヨウのことを可愛がってくれています。きっとモリが、小さなヨウを仲間に入れてあげているからかもしれません。
「朝、ヨウちゃんのクラスにいくときもね、いつもぼくがぎゅってしてあげるの」
感染対策でこの1年くらい、親が保育園の中まで入れないようになっています。そのため朝モリは私の代わりにヨウのクラスまで行き、ぎゅっと抱っこしてあげてから、自分のクラスへ行っているようです。
noteにも書いてきましたが、モリ自身は保育園に行くと泣いてしまうことが、何ヶ月か続いていました。でもそんな経験を乗り越えて、「保育園が楽しい」と言うようになり。今では兄として、ヨウが保育園に安心して行けるように協力してくれている。保育園でも弟を守ってくれている。
しかも、親の代わりに。
そう思ったら、お布団にくるまれた体だけではなく、胸の奥までも暖かさがじーんと沁みわたる気持ちがしました。
私は、宝物は「ママ」だと答えるかと思ったけど、「弟」といわれたほうが、ずっとずっと嬉しかったことに気がつきました。
「そうだね。宝物っていうのは、好きだけじゃなくて、『守りたい』と思うものなんだよね」
モリは宝物の意味を、ちゃんとわかっていました。そして宝物とはなんであるかを、私はモリに教えてあげたはずなのに、私が教えられることになりました。
べつの宝物が見つかる日もくるんだろうか。
いつまでこうして、いっしょに寝てくれるのかな。
気がつくとモリは、私の右隣のベストポジションで、安心したようにスースーと寝息をたてていました。
この寝る前の時間も、私にとっては「宝物」。忙しいとか、今すぐ寝たい日はもちろんあるけれど、大事に守っておきたいと思った日のできごとでした。
小森谷 友美
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モリが保育園に行きたくなかった時の話
モリとの寝る間際の話
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