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実家から出て気がついた実家の暖かさと居心地の悪さ

実家は大好きだ。
生まれてから、25で夫と一緒に暮らすために家を出るまで、ずっと実家で暮らしていた。

私が小学生の頃は転勤族だったから、何回か引っ越したけど、私が中学生の時に両親がマンションを買ってから、10年以上そこで暮らした。
田舎ながらも生活には便利で、緑も多く、暮らしやすい街だった。
家自体も当時新築のマンションで綺麗だったし、住みやすかった。
だからこそ、通勤通学に毎日3時間かかっても、なんだかんだ一人暮らしを決意するに至らなかった。

仲の悪い兄は大学進学時に家を出たので、それも大きかった。
私は母と自他共に認める仲良しなので、母と暮らすのは気楽で楽しかった。(私の実家は父不在)
母は、ストイックな人で、フルタイムで働きながら家事を全てこなした。
恥ずかしながら私は掃除を少し手伝うくらいで、洗濯や料理はほぼ全て母がこなし、私が社会人になっても母は毎日お弁当を作ってくれた。
家に帰れば、今日あったあれこれを母と話し、休日も買い物や旅行に一緒に出かけた。

私は実家にお金を入れたことがない。
大学生になってバイトを始めても、社会人になっても、母はお金はいれなくていいと言うので、甘えて1円も渡さなかった。
母の日などのちょっとしたプレゼントを用意したり、たまの外食の支払いをしたりしたけど、日々やってもらっている家事を思えば、まさに居候だった。

私の母親は、子どもに無限の愛を注げるタイプだったのだと思う。
親だからできる、というわけではないだろう。私の母親がたまたまそういう人で、私は愛されて育った。
洗濯、掃除、日々の料理、そしてお弁当。母は私が楽しく暮らすためにやってくれていたのだ。
かといって礼を求められたこともないし、無償の愛ってこういうことなのだろうか。

本当にありがたいし、幸せなことだと思う。
おかげで私は何不自由なく大人になり、大人になってからも自分の稼ぎと時間は全て自分のために使った。
友達や恋人と遊び、食べたいものを食べた。何にも代え難い幸せな時間だった。

実家に不自由を感じたのは、実家を出て夫と暮らすようになって1年ほどした頃だろうか。
例えば冷蔵庫の中に腐りかけの野菜がいっぱいで、手がつけられない。きっと私が帰ってくるのでたくさん食べてもらおうと思ったんだろうけど、ほどほどでいいのにな、と思ってしまう。
一緒に暮らしていた時は、何でも話せていいと思っていたけど、仕事から帰った母が口にするのは愚痴ばかりで、こちらも気が滅入ってしまった。
寒い寒いと言いながら朝シャンすることも、夜のうちにお風呂にはいればいいのにと思ってしまう。

そんなちょっとした違和感が積み重なって、ああ、私、自分の家のほうが居心地いいや、と気づいてしまった。
あんなに実家が大好きだったのに。
今でも大好きだけど。
多分変わっちゃったのは実家や母のほうじゃなくて、私なんだろう。
私もなんだかんだで新しい家庭を築いたのだ。そういうことにしておこう。

母は母の居心地のいい家で暮らせばいいし、私も私が居心地のいい家で暮らせばいいのだ。
もちろん、私が居心地よく生きていけるのは、夫や母の愛があってこそなので、それだけ忘れないようにしたい。

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