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【学生活動レポート】フィリピンの貧困地域で学んだこと

こんにちは、地球市民学科1年生のC.O.です。
 
1・はじめに
2023 年 8 月、NGO 団体アイキャンが主催するスタディツアーに参加した。都市化が進む フィリピン共和国では、25 万人以上の子供たちが路上で生活していると言われている。 このツアーに参加した目的は、路上生活の子供たちと交流し、彼らが直面している問題や 自立支援のための活動、またゴミ処分場周辺で生活する地元の人々の生活向上に向けた取 り組みを学ぶことである。フィリピンに到着後、まず現地のアイキャンスタッフからタガロ グ語のレッスンを受けた。その後、子供たちに提供されている路上教育や、現地での視察に 参加する際の注意事項について研修を受けた。

2・養護施設「子どもの家」での体験
アイキャンが運営する養護施設「子どもの家」は、マニラ首都圏近郊、リサール州サンマ テオ(San Mateo)町に位置している。この施設では 10 代の男子 16 人が暮らしており、広 大な庭園には木々が立ち並び、スポーツ施設も充実しており、犬や猫、ニワトリも一緒に生 活している。ツアー参加者もこの養護施設に泊まり、子供たちと一緒に過ごした。彼らは私 たちを笑顔で迎え入れ、食事や遊び、スポーツを通じて朝から深夜まで親睦を深めることが できた。 子供たちは、路上生活の経験や家庭の問題を抱えているが、その楽しげな表情からは貧困 児童の面影を感じさせない。この施設にいれば、普通の子供たちと同じように学校に通い、 英語を学び、規則正しい生活を送ることができる。しかしながら、政府の規則により、同じ 施設での滞在は 3 年間までで、その後は施設を転々とするか、再び路上生活に戻らなければ ならない不安がある。


養護施設「子どもの家」
養護施設の子供たち
養護施設の飼い犬

3・パヤタスごみ処分場と NGO の取り組み
パヤタスごみ処分場は、2000 年 7 月に大規模崩落事故を起こし、近隣に住む約 500 世帯 以上の家族が犠牲になった場所として有名だ。悲惨な歴史について説明を受けた後、私たち はパヤタスに住む家庭を訪問した。私が訪れた家庭は、夫婦と 2 人の子供から成る 4 人家 族で、彼らはゴミ拾いで生計を立てていた。彼らの家はわずかな材料で組み立てられ、扉や 窓、壁がなく、雨が降れば床が川のようにびしょ濡れになるそうだ。彼らはその状況にもか かわらず、自宅を誇らしげに紹介し、「この家をもっと大きくするのが私の夢だ」と笑顔で 語ってくれた。 パヤタス地域では、収入の不足、衛生状態、教育の問題が浮き彫りになっている。衛生面 では、医療廃棄物の不適切な廃棄、金属製品による怪我、ゴミから発生するメタンガスなど の有害物質、寄生虫による呼吸器疾患や皮膚病が悩みの種となっている。ゴミ処分場が閉鎖 された後、技術訓練を受けた地元住民たちは、現在フェアトレード商品生産団体(SPNP)と して活動し、テディベアや縫製品を販売している。SPNP で働く人たちは、経済的貧困から 抜け出し、子供たちを大学に進学させることもできるようになっている。

パヤタスに向かう途中の景色(車窓から)
パヤタスの街

4・路上の子供たちとの交流
マニラ市のトンド地区など、路上で生活する子供たちが多い地域に向かう途中、幹線道路 沿いの道端では子供たちが働いていた。路上は彼らの日常であり、彼らは店の前で集まり、 信号待ちで停車する車に近づいて窓拭きや物売りなどの仕事をしている。彼らは廃品回収、 物売り、物乞いなどをして僅かな収入を得て生計を立てており、飢えや病気、事故、犯罪の 危険にさらされている。 路上生活者の子供たちとゲームなどして交流を深めたあと、代表者4名にインタビュー を行った。その際、彼らの笑顔は消え、声も小さくなっていった。12 歳の少年は、空腹をし のぐためにシンナーを吸っていたと話し、将来の夢は警察官になり、悪者を捕まえることだ と語った。フィリピンでは大学を卒業しないと安定した職に就くことが難しいため、子供た ちは皆学校に通い、勉強したいと望んでいる。しかし、通学のための交通費がなく、制服な どの学用品を購入することも難しいため、多くは学業を断念しなければならないと話して くれた。 カリエカフェという、以前路上で生活していた人々が運営するカフェのメンバーともお 話をした。彼らはパンやシフォンケーキの焼き方の技術訓練を受け、カフェで収入を得る成 功を収めている。カフェの運営以外にも、自分たちの成功体験を路上の子供たちと共有し、 自立を応援する路上教育を行っている。

セブンイレブンの前で寝ている路上の子供たち


5・スタディツアーを通して
路上生活者の子供たちとの交流を通じて、最も顕著な問題は、自治体や地域社会からの支 援がほとんど存在しないことであるとわかった。彼らは出生届が提出されていないため、国 の記録には載っていない。貧困に苦しむフィリピンの家庭に生まれた子供たちが、その環境 から脱出することの難しさを考えると、社会の歪みや構造的な問題が浮き彫りになる。貧困、 児童労働、学習機会の喪失といった悪循環を断ち切ることが大きな課題であることを学ん だ。 このスタディツアーを通じて、現地に足を運び、状況を直接観察し、話を聞き、コミュニ ケーションを取ることの重要性を再認識した。私はこのスタディツアーの活動を一生忘れ ない。これからもフィリピン社会における貧困問題の解決にささやかながら支援を続け、こ の経験を子供たちの未来を支援する活動に役立てたいと思う。この体験記を通じて、路上で 生活する子供たちに関心を寄せてくれる人が一人でも増えることを願っている。
(地球市民学科 1年 C.O.)

フェアトレード製品のぬいぐるみ
渋滞を狙った物売り