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私が世界を救うまで 第2話

「よーし!
78枚目。ピッカピカになったぁ!!
おかぁさんからとれたウロコはこれで全部ぅうう!!
はぁあぁあ、綺麗だなぁ♪」

雨が降る中
ドラゴンの傍らで、ドラゴンのウロコを手に持ち、目を細めて恍惚の表情を浮かべる4歳児。
異世界とはいえ中々に不思議な光景だ。

「さーて、雨はぁ…や・み・ま・す・か!」

ユーンは母ドラゴンと空を飛びたくて仕方ない。一番最初に占うことが、その時の空模様というぐらいだ。

「んんー
このウロコ具合は……やみますね!!」

ピタッ!
空は一面、雲すらない綺麗な青空になった。

「まぢかよっ!!」

嘘のようにやんだことにユーンも驚いた。
母ドラゴンはグルルグルルと唸る。

「うん、お散歩いこ!!」

空を飛ぶのも散歩。
ユーンは母ドラゴンと出かけるのが好きだ。
背中をうまいことよじ登り、ちょこんと座る。

「しゅっぱぁぁあつ!」

ユーンがそう言うと
風の精霊たちが少女を守ろうと姿を現した。
少女は精霊使いではないが、空を飛ぶとなるとこうして現れ、背から落ちたりしないように守ってくれる。

精霊を見ることのできる人間は多くはない。

ユーンは見えてはいなくとも存在すると信じ、何か不思議なことがあると精霊に感謝をしたり、精霊がいたかもという場所には「食べてね」と食料を供えたりしていた。基本的に精霊たちは食事を必要としていない。それでもなんだか嬉しかった。
精霊たちは見える人間にそうされることには慣れていたが、そうではない人間に心の底からそうされたことに驚いた。なんとなくでしてくるならわかるが、ユーンの心や目の真剣さに精霊たちは魅了された。
彼女に加護を授けたかった。
でも出来ない。彼女には見えていないから。
ならば仕方ないと勝手にそばにいて勝手に守ると決めたのだ。

それは風の精霊のみならず、四大精霊全てがそうだった。
彼女は本来この世界に生まれるはずのなかった魂。
珍しいなんて言葉では足りないだけの美しい色の魂をしていた。
精霊たちは心や目に魅了されたが
そもそも元をたどれば魂に呼ばれ出会っていたのだ。
ドラゴンもそうだったのではないだろうか。
呼ばれた先にいたのは自分の嫌いな人間という種族だったが、生まれたばかりの綺麗な色の魂を連れ帰り育てるというのはそれ以外に考えられなかった。

「おかぁさーん、みて!なんかわかんないけど喧嘩してる。あそこ。」

グルグルグルル

「だめ、ほおっておけない!あそこにいって!」

やれやれと言った様子で母ドラゴンはそこへ降りた。いきなり現れたドラゴンに喧嘩は一瞬で止まる。
そりゃそうだ。ユーンには優しい母だが、ドラゴンのなかでも出会ってしまったら最後と言われるエンシェントドラゴンなのだ。

地べたにしりを着いてしまったり、気を失うものがいても不思議ではなかった。

「あなたたち!なんで喧嘩なんかするの!!」

「へ?……エンシェントドラゴンから、お、女の子?」

「何よ、おかぁさんとあたしが一緒にいてなんか問題ある?」

色々とある。

「ぁ、う、や…」

弱っちい感じのやつをよけてしっかり話せるやつが出てきた。

「あの、喧嘩じゃなく戦争をしていたんでさ。領土争いてやつだで。」

「ふぅん。それはどうしてもしなくちゃならないの?」

「まぁ、どうしてもだな。」

ユーンはあごに手を当て
片方のつま先はパタパタ地面を叩き、何かを考えている。

「じゃあ
代表の人ひとりずつ出てきて!この78枚のウロコから1枚ずつ引きなさい!あたしが占いで決めるわ!」

は?
この子は今なんて言った?と笑いたいとこだが
ドラゴンの睨みにより出来ない。
仕方なく引く代表ふたり。

「どれどれ、ふむふむ……。わかりました。このウロコ具合からいくと、ここの土地は誰のものにもしてはいけない場所と出てますね!なので、あたしとおかぁさんが住みます。」

ユーンと母ドラゴンの別宅が増えた瞬間であった。


To Be Continued

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