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天使の脳みそ

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短編・掌編小説集です。 耽美、退廃、その他趣味が詰まってます。
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記事一覧

タバコ嫌いの女の子がタバコ休憩についていっちゃった話

薄月  タバコはきらいだった。  駅前の横断歩道へ急ぐ途中、煙の先端が鼻先に届くだけでも…

シュリ
9か月前

廃墟

 逃げ出したい。これは、生きるものの最後の本能だと思う。だから私は、よくここに来てしまう…

シュリ
1年前

元騎士が女の子を拾う話

 三十五歳というぴちぴちの若さで退職してやった。地方の騎士団なんか入るもんじゃない。あそ…

シュリ
1年前
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赤い靴と踊る

 男が靴屋に弟子入りして一年が過ぎようとしていた。師の店に下宿しつつ工房の掃除をし、水を…

シュリ
1年前
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名もなき半身(ひと)

 嵐でした。海辺のことです。あの日、雷鳴轟く真っ黒な空の下で、わたしはあの人を見つけまし…

シュリ
1年前

夜、メイドと秘密の時間

 毎晩九時になると、メイドが部屋にこっそりやってくる。本当は眠らなければならない時間だけ…

シュリ
1年前
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人魚の尾を縫われる

 波の音。海鳥の声。目を閉じて、わたしは一歩、足を踏み出そうとした。 「単に死ぬのはもったいないよ」  突然、のんびりとした声がして、全身がびくりとこわばった。目を開けて振り返ると、見知らぬ青年が立っている。若いのに白髪で、薄い目鼻立ちは鋭利な刃物のよう。全身から漂ういかにも怪しい雰囲気に、我知らず肌が粟立った。  わたしは高校の制服姿のまま崖っぷちに立っていて、まさにここから落ちようとしていたところだった。これは止められたのだろうか。でも、「死ぬな」ではない…… 「

カエルのくに

 少女は生まれてから毎日、日がな押し入れの中で過ごしていた。建てつけの悪い襖の隙間からわ…

シュリ
1年前
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