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ロシア産エイリアン映画『Спутник(スプートニク)』鑑賞レビュー

お久しぶりです。ちもです。いつも通り前半にネタバレなしの感想、後半にネタバレ含む細かい話をしますので、鑑賞前の方はお気を付けください。

斬新な設定とアイデアが詰め込まれた佳作

 エイリアン映画と言えば何を思い浮かべますか?リドリー・スコットの『エイリアン』?近年話題になったダニエル・エスピノーサの『ライフ』?その他には『プレデター』や『アバター』、『メッセージ』など、多くの作品が今日までに産み出されています。エイリアンのイメージは多くの人がリドリー・スコット監督のものでしょう。今作もそのイメージを継承しつつも、新しいアプローチを持ってきました。
 

 スプートニクと聞くと思い浮かぶのはロシアの衛星でしょうか。本作品も宇宙絡みでなおかつ、舞台は旧ソビエトです。
 全体的な評価としましては、考察が苦手な方だとなんとなく腑に落ちないなぁと思われると思います。私自身としては斬新な設定と映像のクォリティで評価は高いです。過去のロシア映画の小難しい芸術性から来るわかりにくさも少なかったと思います。ストーリーもテンポよく、謎がわかっていく過程もとても面白いものでした。
 エイリアン映画らしい恐怖とビジュアルもしっかりあってちゃんとエイリアン映画していたのは高評価です。メインビジュアル、サムネイルを見た感じだと地球外生命体が人類とドンパチ繰り広げる大宇宙戦争映画に見えますが、そうではありません。この映画のメインはドンパチではないからです。ある意味サムネイル詐欺ですが、インパクトのあるメインビジュアルは大切ですからね…。
 ネタバレなしで語れる要素はこれくらいでしょうか…。鑑賞後の方が楽しめるタイプの映画なので、ぜひ鑑賞して頂きたいです。見終わったら、もう一度読みに来てくださるとうれしいです。





後半 ネタバレ含む解説&感想

 さて、ここを読んでいただけているということは鑑賞後、もしくは鑑賞済の方が読んでくださっていると思います。解説ですが、解説と言っても必要なのはラストシーンくらいでしょう。エイリアンも関係ありませんし、主人公の過去に関することですね。映画前半のシャワーシーンで背中の傷に気が付きましたでしょうか。このカットが伏線になっています。主人公の過去をほのめかせるシーンですね。アレは手術痕なのですが、何の手術かと言うと、下半身不随の治療です。ラストシーン、孤児院の車椅子に乗っていた少女が世話係のおばさんに、「坊やもね」と言われ、「私はタチアナよ」と返すシーンがあります。その後主人公が外で孤児を引き取り、同じセリフを言うせいで誤植と思われている方もいらっしゃるようですが、「私はタチアナよ」と返した少女は主人公だったのです。要は過去のお話なのですね。下半身が悪かった主人公はそれを治す手術をしたため、背中に手術痕があったのです。ここ、めちゃくちゃわかりにくいので鑑賞後巻き戻して観るまで私も誤植だと思っていました。わかりにくい部分はここくらいではないでしょうか。エイリアン映画にしては珍しく謎を残さない形での結末だったのでここのわかりにくささえなければもう少し高評価も増えていたのではないでしょうか。

 エイリアンの特徴が斬新で良かったですね。恐怖によって分泌されるホルモンをエサとしている…という設定がとても気に入りました。あと宿主を殺してしまうエイリアンが主流ですが、共生しているというのも面白い設定でした。体内から体外に排出されるシーンも、宿主には傷を付けずに出てくると言うのもいいですね。分離が目的でしたが後半にわかる完全に共生しているという設定からの、宿主が死ぬと体内にいるエイリアンも死んでしまう…という設定があったからあのラスト、けん銃で自殺するシーンが作れたんですね。

 ロシア映画にしては珍しく、軍が完全に敵役でした。私の偏見かもしれませんが、あのあたりの国で軍をそういった立場にしてしまうと怒られるのではないかと思いましたが、芸術の国でもあるのでそういった面では寛容な部分もあるのでしょうか。

 総評としてはもう少し意表を突く衝撃が欲しかったというか、エイリアン映画でありつつもヒューマンドラマなところがあるので、純粋にエイリアン映画だけでの基準で評価がし辛いのが、この作品のレビュー点数が低い理由だと私は思います。しかし映像面での評価はレビューサイト風に言えば☆5に近いです。主人公が寝泊まりしていた部屋の光や、後半の折の中にいるエイリアンを暗視ゴーグルで覗いて見るシーンなど、美しい光と緊張感のある光の演出がとても良かったです。エイリアンを見せすぎず、あくまで薄暗い空間で恐怖を演出しつつ、主人公を近づけることで視聴者を画面に釘付けにし、緊張感を出すとともにCGによるエイリアンをチープなものに見せない画作りにはとても関心しました。必要以上のドッキリシーンが無かったのも高評価です。私自身が苦手という部分もあるのですが、まるでホラー映画のようにドッキリシーンを多用するエイリアン映画はエイリアン映画ではなく、エイリアンを使ったホラー映画だと思うのです。ただでさえドッキリを多用するホラー映画は「それでしか怖がらせられない」と言っているようなものですからね。

以上です。

 


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