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31文字の無限

文字で写された写真って見たことがありますか?

私はこの前初めて見ることができました。

31文字がその枠を飛び越えて動き出し形を変えて頭の中に映し出すはっきりとした絵と無限の世界。

目が覚めるように面白い世界に気付くことができた。

それが短歌との出会いでした。


この間、こういう会におじゃましました。

CafeBarDonnaも参加してみたいと思いながらいつもタイミングを逃していた中、

主催の嶋津さんにお声をかけていただいて、幸いにもCafeBarDonnaへの初参加と短歌の世界の扉を開けるという、2つの幸福が同時に叶ったのです。(嶋津さんありがとうございます)

ゲストは短歌が大好きで、歌人としてご自身もたくさん詠まれている武田ひかさん。

短歌の好きなところは、詩を詠む人の視点をもって、世界をみることが可能になるところ。

上の文章の中にも書かれていますが、会の初めにひかさんが言ったこの言葉で一気に惹きこまれました。あんなに短い文字の連なりの中に、(その枠だからこそというべきか)書いた人の視点から見た世界があり、自分もそれを読むことでそれを体験し、次に顔を上げた時には少しだけ視点が変わっている。増えている。その視点はもしかしたら、元から自分が持っている視点と自然に混ざり合ってまた新たなモノの見方を作り出すのかしら、なんて考えたり。
31文字の枠の中に自由さをいっぱい感じて、制限あっての自由なんて、なんかすごく無限!って思ったんです。

この会のお話があるまではワケあって短歌を読むことから離れていたのですが、その日から何かを取り戻すように毎日短歌を読んでいます。



この会に参加するにあたって楽しい予習をしましょうと考え、その日の昼下がりに前から本棚にあった穂村弘さんの歌集を開いていました。

これがまた色んな角度から刺さってくる、痛いぐらい素晴らしい歌がたくさんあったんです。

冷蔵庫が息づく夜にお互いの本のページがめくられる音(ラインマーカーズ)

冷蔵庫のファンが回る小さな音を息づくと表現することで誰にでも分かる、でも美しい表現にすること。そしてお互いの本のページがめくられる音がその夜の静けさを一層際立たせる。『音』を使い、『静寂』を表現していることに心底驚きました。

フーガさえぎってうしろより抱けば黒鍵に指紋光る三月

郵便配達夫(メイルマン)の髪整えるくし使いドアのレンズにふくらむ四月

置き去りにされた眼鏡が砂浜で光の束をみている九月

(シンジケート)

暦月のシリーズでありながら、『黒鍵に指紋光る』、『ドアのレンズにふくらむ』、『眼鏡が砂浜で見た光の束』という、それぞれ違う形の【光】を表現した歌。何度も読み返すほどに美しく頭の中に映えてきます。

これらをひかさんが言う視点(詠んだ人がモノを見ていた角度など)を想像して読むとまた味わいが全然違いました。同じ場所にいて本を開きながら、色んな景色に飛んでいってるみたい。文字を使って再生された写真をいくつもめくっているような感覚。でもきっとまた読む人によっても色んな解釈があって。他の人の頭にはどんな風に再生されるんだろうなぁとか。
短歌を知ったことで、またさらに豊かになったような感じがします。

短歌の会の途中から、楽しくて頭の中で短歌を作り始めていました。説明が必要なぐらい稚拙な歌だけれど、ここに書いてみたいと思います。

見えない網に攫われて いつの間に無くしたの僕ら 待つというよはく

むかし、引っ越しが多かったのでたくさんの人と文通していたのを思い出しました。インターネットでメールができるようになったら手紙の返事を待つ時間も無くなって、ラインが登場したら相手が読んだかどうかを気にかける時間さえなくなって... そんな今はない余白の時間を思った歌です。

いー、あーる、さん、すーじでの送信、あなた気付くかしら?今日はこの日よ!5.20(うーあーるりん)

文字数のことを考えてたら中国語が出てきて思い切って組み込んでしまった歌です。

始めの『いー、あーる、さん』は中国語での数字の読み方で、『1、2、3』。
『すー』は『4』の読み方で、日本語の『数字』と掛けました。
最後の『うー、あーる、りん』もそれぞれ『5、2、0』のことです。

なんでこんな歌かと言いますと、実は中国では5月20日は恋人たちの日なんです。『うー、あーる、りん』が中国語の愛してる『うぉーあいにー』(我爱你)と似て聞こえるかららしいのですが....。なんと、この日には彼氏から彼女にお金を贈るのが最近のトレンド。チャットの送金機能を使い、『520元(約8,800円)』を彼女に贈ると言われています。これは恋人たちの日に愛を確かめるため(?)、彼氏に送金を促す歌です。でも、自分から言う前に彼氏に自ら気付いてもらいたいのが本音なところ(笑)。そこで、数字だけで暗号めいたメッセージを送ってしまう女の子の様子を表してみました。

まだまだ言葉遊び程度だけど、短歌を考えて自分の脳の中から詠み出してくる時間はとても楽しいです。

たくさんの短歌から多くの視点を学び、それを惜しみなく私たちに紹介してくださった武田ひかさん、主催の嶋津さん。改めて、本当にありがとうございます。

武田ひかさんプロフィール

いつもありがとうございます。 頂いたサポートは、半分は新たなインプットに、半分は本当に素晴らしいNOTEを書くクリエイターさんへのサポートという形で循環させて頂いています。