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“席を取るアイテム”として、最も相応しい物は何か

カフェなどで、“席を取るアイテム”として最も相応しいアイテムはなんだろう。

僕は今日、友達の働いてるカフェに行った。

そのカフェは下北沢にあり、平日にも関わらず、人がごった返している。

友達が働いているカフェにはよく通う。
なので、他の働いているスタッフとも顔馴染み程度にはなっている。

カフェに着くと、レジに少しばかり列ができている。だが僕は「おいっす」と言う顔を、レジを打っている友達に見せ、常連客を装っている。

後ろの金髪のカップルは「スイーツの種類が豊富だね〜」と、メニューの内容を決めかねているらしい。

今日は天気がいいから、テラス席に座ろう。
僕はそう思う。

レジで僕の番になった時、アイスアメリカーノを注文する。友達と少し雑談し、僕は彼と友達なんだよ、というオーラを後ろのカップルに見せつける。

後ろのカップルは2人とも金髪で、少し派手な格好をしている。下北ファッションと呼ばれる類なのかもしれない。

いつも、コーヒーはテイクアウト容器でもらうが、今日はグラス容器に入れてもらう。

意気揚々とコーヒーを片手にテラス席へ赴く。

テラスはほぼ満席状態で、注文する前に席を取っておけば良かったな、と少しだけ後悔する。

空いている席を見つけるが、そこには鞄が置かれていたり、飲みかけのコーヒーが置いてある。

ここは誰かが取っているのだろうと思い、別のテーブルを見渡す。すると、ポケットティッシュが置かれているテーブルが1つだけあった。

さらに、1.2枚だけ使われた形跡がある。
これは前の人が忘れていったのか?
いや、席を取っているのか?

僕はどちらか分からなかったが、ポケットティッシュなら、前の人が忘れていったゴミだろうと判断し、そのテラス席を陣取る。

個人的な話だが、三軒茶屋から下北沢まで歩いてきたので、少し疲れていた。なので、テラス席に座れたことはとても嬉しかった。

さてさて、人間観察でもさせてもらいますか。
と、周囲を見渡すと、そこにはなんと僕の後ろで立っていた金髪カップルが僕の隣に立っていたではないか。

「あの、え、あの、ここって、、」

何か言いたげである。

「え、あ、はい、、?」

「ポケットティッシュ置いて、ませんでした、?」

なに?!

「え、あああ!ありましたありました!あ、席取ってたんですね!すみません!僕、どきますね!」

なんということだろう。

僕の後ろで注文をしていたカップルが、まさか、ポケットティッシュを犠牲にテラス席を先に陣取っていたとは。

いや、だとしても“席を取るアイテム”としては、絶妙すぎないだろうか。

相場としては“ハンカチ”や“男の取られても良いアイテム”辺りを置いといてもらえると、こちら側もここには人が来るのだ、という認識は容易ではある。

しかし、そこにあったのは“1.2枚使ったポケットティッシュ”。

風で飛ばされてしまってはもう言い訳の聞かない、無慈悲な、薄い紙の重なり。
まさかティッシュ側も席を取るという重大な責任を請け負うことも知ったことではない。

ましてや、席を取っていたカップルが、先ほど僕の後ろで会話をしていた純粋無垢な人たちだったとは。僕は「カフェで働いている友達」という謎のステータスを背中から発し、今ではなんとダサい一面を見せているのだろう。

少し縮こまりながら、僕は別の席を探す。

空いている席を見つけたが、そこは支柱の後ろ側。
人、1人通れるほどのスペースだ。

先ほどの解放的なテラス席とは大きく異なる。
支柱の裏側は、本を読むのに最適だろう。

まぁ、座れただけでありがたい。

席の後ろは全面ガラス張りになっている。
その後ろには空いているテラス席も見える。

ここから人間観察を再開しようと、窓の外側を覗いてみる。ある別のカップルがまた、ここの席を陣取ろうとしている。

僕はどんな“席を取るアイテム”を取り出すのか、と楽しみに見ている。

なんと、今回、“席を取るアイテム”として名誉ある肩書きに選ばれたのは、“彼女の大切にしていそうな、デートの時に身につける、社会人2年目のボーナスで買ったであろう、ちょっとお高いクリアサングラス”だったのだ。

“ポケットティッシュ”から、“クリアサングラス”への高低差が、僕の脳を揺らす。

大丈夫なのか?!?!

今度は僕の心配メーターが敏感になる。

“席を取るアイテム”として、名をあげるものは、盗難にあってもあまり支障にきたさず、かつ、ゴミだと陣取る側が判断をしかねるので、そこの間の物。と、相場は決まっている。

それに比べると、“クリアサングラス”は少し、思い切った“席を取るアイテム”ではないだろうか。

彼女からの思わぬ命を受け、本来とは違う使われ方をした“サングラス”を彼女たちが帰ってくるまで見守っている僕もいる。

果たして、“席を取るアイテム”として最も相応しいものは、いったいなんなんだろう。

盗難にあっては困る。
ゴミだと、陣取る側が判断しかねる。

その間にある物。
それは一体、なんなんだろう。

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