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「ラ」ーメン・リパブリック

 友達と遊んだ後、ラーメン屋に行くのはあんまり望ましくない、何故なら話す機会が少ないし、最近の意識高い系の店主が最高にマザーファッカーだからだ、そう言った親友、ステイプル・ステイプラー三世は上着にダイナマイトを隠し、様々なラーメン屋に出向いては店主や客の態度を見計らい、良ければ何もしないが、悪ければ、彼がいつもタバコを吸う際に用いる100円ライターでダイナマイトに火をつけ、帰り際カウンター下の荷物を置くためにある溝に捩じ込んで、駆け足でそこを去り、背後から爆発音を耳にして、同時に女の甲高い悲鳴、男の何が起こったんだという声がし、後ろを振り返ってその店が跡形もなくなったところを確認しては両手で中指を立て、ファッキューと叫び散らし、胸ポケットからサングラスを取って着け、次の標的を探した。
 今日は、大ラーメン時代、ラーメン二郎が国会議事堂に忍び込み、持ち前の高火力コンロで議員の大半を一酸化中毒で死に至らしめ、革命を呼びかけてから早二年が経ち、今は東のラーメン二郎、西の一蘭という二大巨頭をはじめ、吉村家、大勝軒、白樺山荘、西山ラーメンなどなど様々な暖簾が群雄割拠する時代、謎多き天才、ステイプル・ステイプラー三世が水面下にて工作を行ない、早くこの戦いを終わらせようと仕向けていた訳だが、彼はどこかに属している訳でもなく、無頼の徒、ただ一人でこの渾沌とした大ラーメン時代に一矢報いようとしていた訳で、これはある種のANARCHYであったが、その一方で様々な爆破事件を機に一蘭が彼の存在を知るようになり、その行動故に危険視しつつも、どうにか自分たちの手下にしたいと思って、ある日彼を本部へ呼び、従わなければ敵とみなすと脅しを入れつつも、承諾したら一般の人々であれば垂涎の的であるような厚遇を齎すと言った訳であるも、別に俺は従おうと思わない、お前たちは俺を殺そうとするだろうが別に良かろう、ただこの俺がノコノコ根城に来たと思うか、と彼が言った刹那、突然停電、点いたと思えば、彼はおらず、代わりに導線に火のついたダイナマイト計七本、彼らが慌てふためき、消そうとしたがもう遅く、本部は爆破され、最早修復不可能、一蘭の勢力は一気に衰えた。
 その一方、彼はラーメン二郎にも同じような交渉を持ち掛けられていたが、さすがのステイプル・ステイプラー三世、彼らが今後やってくることを想像したら警戒せざるを得ず、どうしたものかと拠点で悩みあぐねたが、それはラーメン二郎が暴力によって成立した組織であったからであり、またその発展も血の気の多い経緯、そして武力を行使する割に狡猾であるというのも難点で、今まで多くのラーメン革命家は自分の考えを見抜かれていたために命を落とした、恐らくダイナマイトを隠し持つことは難しいと思い、小一時間ほど考えていたが、その時俄にきらりとアイディアを閃き、なるほどこの手があったかと、早速向こうに連絡を取り、明日の夕方五時に札幌らーめん共和国廃墟にて会おうと連絡し、その当日、一対多の、距離5m、緊迫した交渉にて、向こうのドンが、おめえさん一蘭を潰してくれたようだな、いい腕っ節じゃねえか、どうだ、俺たちと一緒に手を組まねえか、そうしたらこの世を支配できる、と言ってきて、ステイプル・ステイプラー三世、くたばれ、と即答、胸元に手を入れようとしたところ、拳銃突きつけられ、おっとお前さんの企みはお見通しさ、ダイナマイトのステイプラーと巷間で噂されているぐれえだ、と乾いた笑いをし、ステイプル・ステイプラー三世も危機一髪、このまま胸ぐらから手ぇ離して上に挙げろと言われ、慎重に手を上に伸ばす、果たして殺されるのかと思いきや、挙げた手を一気に下げ、その瞬間天井が壊れて白い粉が舞い上がり、辺り一体白煙が立ち込め、周りは混乱の中、その一方、ステイプル・ステイプラー三世は廃墟から脱し、風月廃墟の隣にて、胸からジッポを取り出し、火をつけ、入口に投げつけると、一気に炎は燃え上がり、中から悲鳴が聞こえ始め、彼は思わず笑いながら、馬鹿め、馬鹿めとピアノ線で僅かに切れた掌を見つめた。
 二大勢力を潰した後、彼は東京に行き、ラーメン二郎の傀儡と化していたNHK放送局に入り込み、以下の文章を全国放送しろと要求したが、その内容、強者滅んだ今、ここに永遠平和の国を立ち上げよう、その名はらーめん共和国ラーメン・リパブリック

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