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米・国務省、2023年版人権報告書で旧ジャニーズ事務所問題などを取り上げる

 4月22日、世界各国の人権状況に関する米・国務省報告書の2023年版2023 Country Reports on Human Rights Practices)が発表されました。

 報告書全般については、JETRO(日本貿易振興機構)のビジネス短信〈米国務省、2023年人権報告書を公表、イスラエルとハマスの衝突は「人権に関する深刻な懸念」(スーダン、中国、日本、米国、ロシア、イスラエル、イラン、アフリカ、ウクライナ)〉が比較的よくまとまっています。

 日本の状況についてはこちらのページで取り上げられています。2022年版報告書の日本に関するページは日本語訳されていますので、そちらも参照しながら読むとわかりやすいでしょう。

 ここ数年の国務省人権報告書についてはnoteの以下の記事を参照。
-〈米・国務省人権報告書、日本のスポーツ界の体罰の問題にも注目
-〈米・国務省、2021年版人権報告書を発表――無国籍、痴漢、レイシャル・プロファイリングなどについて新たに記述
-〈米・国務省、2022年版人権報告書を発表――障害のある子どもの隔離教育や虐待について新たに記述

 子どもの性的搾取(Sexual Exploitation of Children)の項では、2023年7月の刑法改正によって性的同意年齢が13歳から16歳に引き上げられ、わいせつ目的での面会要求等(グルーミング)も犯罪化されたことなどが紹介されています。旧ジャニーズ事務所における性加害問題についても、次のように比較的詳しく取り上げられました。

4月には、男性芸能人専門の一流芸能プロダクションである株式会社ジャニーズ事務所が、創立者である喜多川擴〔ルビ〕ひろむ)(2019年死去)に対して出されていた性的虐待の訴えを調査するため、外部専門家チームを任命した。喜多川の性的虐待に関する報道は信頼できるという最高裁判決が2004年に出ていたにもかかわらず、政府、主要メディア媒体および経済界は。この問題に関するドキュメンタリーをBBCが3月に放映するまで、喜多川の行動を公には認めてこなかった。

9月7日、ジャニーズ事務所の東山紀之社長は、喜多川が60年以上にわたって数百人の少年を性的に虐待していたことを公に認めた。9月30日現在、喜多川の被害を受けたサバイバー478人が名乗り出ており、325人が補償を求めている。

喜多川が多くのサバイバーを数十年にわたって虐待できたのは政府・警察・検察が対応をとらなかったためであると主張するサバイバーもいる。このグループのメンバーは、喜多川の「過激なファンや支持者」からオンラインで広範ないやがらせや脅迫が寄せられており、身の安全に関して恐怖を覚えている者が多いとも報告している。メンバーらは、羞恥心や脅迫その他の人権侵害に対する恐れから、さらなる被害者が名乗り出るのを怖がっているとも語った。

 子どもに関しては、難民保護に関する項目(E. PROTECTION OF REFUGEES)の末尾で、子どもの在留特別許可に関する次のような記述も加えられています。

8月4日、齋藤健法相は、日本で生まれ育ったものの在留資格を有していない外国籍の子どもは家族とともに滞在するため在留特別許可を付与され得ると発表した。在留資格のない外国籍の子どもは、家族のいずれかの者に「看過し難い事情」(不法入国であったこと、懲役1年超の実刑の前科を有していることなど)がある場合、在留特別許可を付与されない場合がある。出入国在留管理庁によれば、2022年末現在、4,233人の退去強制対象者のうち201人が18歳未満である。この201人中、およそ140人は在留特別許可を得られる可能性がある。

 このほか、先住民族(INDIGENOUS PEOPLES)の項では、杉田水脈・衆議院議員がアイヌ女性・コリアン女性に対する差別発言について札幌法務局から人権侵犯認定を受けたことも、次のように取り上げられています(訳すのが面倒くさいのでとりあえず原文のみ引用します)。ちなみに杉田議員は、昨年(2022年)版の報告書でも、伊藤詩織さんに対する中傷ツイートに「いいね」して損害賠償を命じられた件をめぐって名前を出されており、2年連続での登場となります。

In September the Ministry of Justice’s Sapporo Legal Affairs Bureau determined that ruling Liberal Democratic Party lawmaker Sugita Mio violated human rights by posting messages that disparaged Ainu and Korean women on social media in 2016. At a meeting of the UN Committee on the Elimination of Discrimination against Women that year, Sugita posted photographs of indigenous women in attendance and messaged that she “feels sick to even breathe the same air… as middle-aged women [costume players] in shabby Chima jeogori (traditional Korean clothing), and ethnic Ainu costumes.” Both ruling and opposition party lawmakers stated Sugita should publicly apologize and explain her conduct; Sugita made no public comment.

 かねてから指摘されているレイシャルプロファイリング(人種差別的な職質問など)についても、組織的な人種的・民族的暴力および差別(SYSTEMIC RACIAL OR ETHNIC VIOLENCE AND DISCRIMINATION)の項で、あらためて取り上げられました。

A group of legal experts, researchers, and human rights NGOs continued to report foreigners being stopped and searched by police in suspected racial-profiling incidents. In November 2022, the National Police Agency acknowledged six instances of inappropriate remarks when police questioned foreigners, and instructed police not to make discriminatory or biased remarks. A survey of foreign-origin persons released by the Tokyo Bar Association in 2022 found 63 percent were questioned by police during the prior five years; 77 percent of those questioned believed there was no reason for the intervention other than their ethnicity. More than 74 percent of those stopped said they had been questioned multiple times during the previous five years.

 日本に関する報告の日本語訳は、そのうち在日米国大使館・領事館のサイトに掲載されるはずです。

noteやホームページでの翻訳は、ほぼすべてボランティアでやっています。有用だと感じていただけたら、お気持ちで結構ですのでサポートしていただけると、嬉しく思います。