見出し画像

米・国務省、2022年版人権報告書を発表――障害のある子どもの隔離教育や虐待について新たに記述

 Facebookでは簡単に紹介しておきましたが、3月20日、米国の国務省が毎年発表している世界の人権状況に関する報告書の2022年版2022 Country Reports on Human Rights Practices)が発表されました。

 日本に関する記述(英語)はこちらから参照できます。

 子どもに関しては、主として第6部:差別や社会的虐待(Section 6. Discrimination and Societal Abuses)で、▽出生登録、▽児童虐待、▽児童婚・早期婚・強制婚、▽子どもの性的搾取の問題が取り上げられています。昨年版(概要/在日米国大使館・領事館のサイトに掲載されている日本語訳)の内容から大きな変更はありませんが、教員による子どもの性的虐待に関する記述は、一定の前進があったという判断からか、削除されました。

 他方、障害のある人の項(Persons with Disabilities)では、障害のある子どもとの関連で次のような記述が追加されています。

 ……障害児は、障害のない同世代の子どもと同じ学校ではあるが障害児のために指定された学級に、または隔離された学校(segregated schools)に通うのが一般的であった。障害児の親のグループは、障害のない同世代の子どもといっしょに普通学校に子どもを通わせたいという親の希望にもかかわらず、障害児を隔離された学校に通わせるよう勧める傾向が教員にあると報告している。
 障害者は、家族構成員、ケア施設職員および雇用主による虐待(障害女性の性的虐待を含む)を経験した。街中で障害者に対する暴言が増えていると報告する障害者もいた。高い関心を集めたある事案では、福岡地方検察庁が、障害のある10代の少年らを違法に逮捕監禁したとして、障害児支援施設の長〔注/福岡市のNPO法人「さるく」理事長〕である坂上慎一と小学校教諭の松原宏を起訴した。報告されているところによれば、容疑者らは、行動障害のある子どもに「治療」を施し、「レスキューサービス」の料金を親に請求していたと主張する一方、あるケースでは、被害を受けた少年の手足を結束バンドで縛り、頭に袋をかぶせ、施設に2日間監禁していた。

 また、組織的な人種的または民族的暴力・差別(Systematic Racial or Ethnic Violence and Discrimination)の項で、次の2つのヘイトクライムが取り上げられています。

 たとえば8月には、多数の在日コリアン住民がいるウトロ地区(京都)で放火した男に対し、4年の収監刑が言い渡された。京都地方裁判所は、これは在日コリアンに対する偏見と憎悪に基づく行為だったと判示している。報道によれば、実行犯はネットで嫌韓的なコメントを読むことによって過激化した。もうひとつの例としては、日本語の赤い文字で「朝鮮人コロス会」と書かれた落書きが、9月に東京都内の駅〔注/JR赤羽駅〕で発見されている。

 LGBTQI+の人々に関する記述(性的指向、ジェンダーアイデンティティもしくはジェンダー表現または性的特徴に基づく暴力行為、犯罪化、その他の虐待/Acts of Violence, Criminalization, and Other Abuses Based on Sexual Orientation, Gender Identity or Expression, or Sex Characteristics)も、多発した差別発言事件などを背景として、だいぶ詳しくなっています。

 このほか、日本経済新聞や東京新聞の記事で紹介されているように、▽ウィシュマ・サンダマリさん死亡事件を含む入管収容施設での人権侵害(Prison and Detention Center Conditions の項)、▽7月の参議院選挙における女性候補へのセクシュアルハラスメント(Sexual Harassment の項)なども取り上げられています。報道では触れられていないようですが、セクシュアルハラスメントの項では、元自衛官の五ノ井里奈さんが自衛隊で受けた性被害についても詳しく記述されています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN20C7R0Q3A320C2000000/
https://www.tokyo-np.co.jp/article/239331

 日本に関する報告の日本語訳は、そのうち在日米国大使館・領事館のサイトに掲載される見込みです(昨年は5月に掲載されていました/追記4月20日に掲載されました)。


noteやホームページでの翻訳は、ほぼすべてボランティアでやっています。有用だと感じていただけたら、お気持ちで結構ですのでサポートしていただけると、嬉しく思います。