4月1日の告白
この日は、きっと何を言ってもウソになるらしい。
強く、なりたかった。
やっと大学に受かった。ようやく居場所を見つけはしたが、時々襲ってくる不安は消えなかった。ローンで買った250ccのバイクが相棒だった。
夜中の第三京浜で何㎞出せるかやってみた。恐怖の向こうに希望が見えるかも、そんな思いだった。バイクは車体が軽い分アクセルを開けば高音を奏で急加速してくれる。10秒もかからずにスピードは100km/hを越えた。
120km/hを過ぎると風圧で身体が持って行かれそうになる。身をかがめるように、両足で車体をしっかりと抑え込む。
140km/hを越えると、道路が呼んでいるような感覚に襲われる。道路の僅かな段差にもバイクが大きく揺れた。スピードの魅力に取り憑かれたヤツはきっとこうして命を落とすのだろう、そう思った。風圧で左足先が動かせない。ギアを一段変えるにも一苦労する。
160km/hを越えると、恐怖が全身を包むような感覚に襲われた。動悸が止まらない。息が上がる。自分が何をしているのか分からなくなる。
186km/h。風圧でカラダが硬直した。景色を見る余裕もない。何かあれば帰っても来られない。ヒトの命なんてあっけないものだ、動悸がひどいが意外に冷静だった。
パーキングに入って、自販で缶コーヒーを買った。指が震えてフタを開けるのにも苦労した。見上げた空には何も見えなかった。
不安は消えず、希望も見えなかった。こんなことで人生が変わるはずもなかった。思い返せば、アホなことをしたもんだ。
ボクは時々失敗を繰り返した。でも人に交わることで成長していくしかなかった。歳を重ねて、自分の弱さを受け入れることで、ボクは強くなった。人の悲しみや弱さに気付けたから、人の力になろうと思った。
気がついたら結婚もして、子どももできて、家庭を持っていた。今でも時に不安を感じることはある。でも自分より弱い存在がボクを支えて強くしてくれた。
今も不安や孤独に悩んだり苦しんだりしてるあなたにも、人生はきっと試練と成長の機会を与えてくれる。
強くなりたい。そう思えたら、きっと大丈夫。
ボクはそう思ってますよ。だからそう、きっと大丈夫だから。
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