ドライヤーが爆発する前に

お風呂から上がると、僕はベッドの上で髪を乾かす。髪を乾かしてるだけの時間が嫌だから僕は左手にスマホを持ちyoutubeの動画を見ながらドライヤーをかけている。

その日もいつものように動画を見ながらドライヤーをしていた。しかし、突然ドライヤーが切れかけの電球のように付いたり、消えたりし始めた。僕はコンセントの接触が悪いのかともう一度差し直してみるが、状況は変わらない。

この嫌な感じ、２年ほど前にも経験したことがある。２年前にも突然ドライヤーが付いたり消えたりしたことがあった。その時は、おかしいなと思っているうちに一瞬にしてドライヤーが爆発した。

ドライヤーの付け根から火花がバチッと飛び散ったのだ。顔面付近だったからそれはそれは恐ろしかった。髪の毛が全部燃えたのかと思った。そのドライヤーは爆発してからもう2度と動くことはなく、役目を終えた。

その時の感じと今の状況、とても似ている。このまま使用していたら、再びドライヤーが爆発するかもしれない。僕はそう思って髪を乾かすのを中断してすぐに両親に報告した。

「ドライヤーが壊れかけている！このまま使うと多分爆発すると思うから使わない方がいいよ！あの時、火花が出たんだから！！！」

僕は2年前のことが若干のトラウマになっていて、切羽詰まる思いでドライヤーの状態を伝えた。それなのに、うちの両親は呑気なものである。父はフィルターのほこりを掃除すれば直ると言っている。爆発するのはそこじゃないんだよ。もうコイツはコードが断線し始めていて、今にも爆発しそうな時限爆弾なんだよ。

あの時の惨状を見ていたのは僕以外に誰もいないから、いまいち僕の話すドライヤーの爆発がピンときていない。まるでオオカミ少年のような気分だ。オオカミが来ているのに、誰も僕の言うことを信じてくれない。
僕は両親にドライヤーが断線した時の爆発の動画を見せ、今これと同じことが起きようとしていると説明した。実際に、ドライヤーを起動してみて動作が不安定であることも見せた。そしたら、ようやくドライヤーの調子が悪いことを認め、そのドライヤーはその日で使わないことになった。

「明日新宿でドライヤー買って帰ろうか？ないと困るでしょ。」

僕は自分で新しいドライヤーを買うことを提案した。僕はずっと両親にムカついてることがあった。２年前のドライヤー爆発事件が起きてすぐに新しいドライヤーに買い替えたけれど、うちの親が買ってきたドライヤーは爆発したドライヤーと全く同じ製品だったのだ。僕はそれがずっと許せなかった。息子があんだけ怖い思いをしたと言ってるのに、何ゆえ同じ製品を買ってきてるんじゃい！という話である。両親は見ていないから知らないのだ、

ドライヤーが爆発する恐怖を！！！！
ナッパのクンッぐらい威力があった！！

僕は同じメーカーのドライヤーは絶対買いませんと宣言し、自分が信用出来るメーカーのドライヤーを探しに会社帰りに新宿のビックカメラに立ち寄った。
並んでいるドライヤーを見ると数千円のものから何万円のドライヤーまでピンからキリである。母から予算１万円以内と言われていたため、そんなに高い物は買えないが、ある程度性能が良い物を選びたい。

僕は色んなドライヤーを試し、Panasonicの４４００円のドライヤーを買うことにした。マイナスイオンが出て髪がサラサラになるみたいだし、風量も強くて良さそうだったからだ。７０００円で同じモデルの上位互換(それはダブルでイオンが出る)もあって、どっちを買うか迷ったが、大して変わらんだろと勝手な解釈をし安い方を買うことにした。

僕はそれを持ってレジの列に並んでいたが、店員さんから「お客様は免税の方ではないですよね？」と話しかけられた。僕が並んでいた列は外国人観光客用の列だった。僕は普通のレジに並び直しドライヤーを購入した。外国人は税金がかからないようで羨ましい、どうりで新宿のビッグカメラには色んな言語が飛び交ってるわけだ。

僕は買ったドライヤーをエコバッグに入れて、電車に乗った。肩に背負っていたが帰宅ラッシュ時だったから、人に潰されてせっかく買ったドライヤーの箱が少し凹んだ。中は無事だったけれど、箱が傷ついたことがショックだった。僕は電化製品の箱も全部綺麗に残しておきたいタイプなのだ。

しかし、母は「中身が無事ならいいじゃん」と特に気にする様子はなく、ドライヤーは家族みんな満足してくれた。

新しいドライヤーは出来るだけ長く使いたい。コードがダメにならないように、コードを労わろう。間違っても、本体にコードを巻き付けたら駄目だ。みなさんもドライヤーが爆発するかもと思ったら、それが買い替えどきだ。