なにが理想的だったの?

キャンプヒル・コミュニティでは、障がいを持った人たちと大きな建物で一緒に暮らします。

例えばバスルームが4つ、ベッドルームが12ある建物で、でも家族向けのような設定にしてある、大きなキッチン、ダイニング、リビングスペースなど。二人用の部屋もあることもあるので、12部屋があると14人くらいまで一緒に暮らせることになる。

この大きさだとたぶん、ハウスペアレントなどと言われる経験のあるスタッフが夫婦でいて、その子ども達が2人くらい。障がい者が6人、コーワーカーと呼ばれるその建物に暮らすスタッフが4人くらい?これで14人。夫婦と子どもたちはそれぞれ部屋をシェアしている計算になる。子どもがそれぞれ部屋を持ちたい年齢になると、障がい者またはスタッフの人数を一人減らして、合計13人。これでひとつの建物に暮らす。ひとつのキャンプヒルにはこういう建物が10軒ほどある。全体で120人ほどのコミュニティとなる。実際には倍の大きさのコミュニティも、もっと小さいところもあります。

多くの人にとって、これは理想の生活ではないでしょう。でも私は本当に楽しかった。ずーっと暮らしたい気持ちもあったのに、ビザとか親の年齢とか子どもの教育とか、いろんな事情でキャンプヒル生活を中断することになったのだった。

なにがそんなに楽しかったのか。

ひとつにはあまりにも田舎だったこと。北海道の田舎を想像するとたぶんちょうどいいのだけど、コミュニティ内では建物はわりと一か所に建てられているのだけど、それにしても隣とは数十メートル離れている。ある時の私の部屋の窓は牧場に面していて、その向こうは雑木林だった。子どもの頃に憧れた「赤毛のアン」「大草原の小さな家」そういうお話の風景の広大さがそこにあった。東京の真ん中から引っ越した私には、その広さ、自然の豊かさが何よりも嬉しかった。空の広大さ、夕陽の美しさ、どこまでも続くような雑木林、その中を流れる小川、有機農場でのんびりと世話をされている乳牛たちの鳴き声。もう他に何があってもどうでもいいくらいに幸せだった。そしてそこに、冷暖房完備の部屋としっかりした水洗トイレがあるのだ。他になにもいらないでしょう?
ーーー続くーー

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