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「あのぅ…本を探しているんですけど」第一声それでいいのか!?~図書館でレファレンスに初挑戦した話

私は図書館をよく利用する。
でも、使うのは自分の地域の図書館ばかり。
インターネットで本を検索し、図書館に蔵書があれば借りにいく、というような使い方が多い。

しかしながら、ここんとこ仕事が鬼シフトなので、数少ない休みが図書館の休館日と重なってしまう事態が頻発している。

今日もそうだった。
そして、こんな時に限ってどうしても急ぎで借りたい本があった。

そこで思いついたのが、中央図書館という、なんとも頼りがいのある施設だった。
地域図書館は毎週月曜休館なのに、中央図書館は月に2回しか休まないという。
無茶苦茶働くやん!

そこへ行く。
乗らなすぎて錆びはじめた自転車をボロ布で拭き、空気を入れ(ようとして空気入れを壊し、テレワーク中の旦那にレスキューを頼み)、慣れない自転車で慣れない道を30分ほど走った。

(自転車速いな…。)

遠いと思っていた中央図書館は、意外と近かった。
地域図書館と比べ同等かそれ以上のサービスを受けられ、かつ蔵書数は確実に多い、そんな中央図書館がこの距離にあるのなら、今後はもっと頻繁に来たいな、と思った。

私は返却期限の近付いていた本を返し、目星を付けていた本をサクッと借りた。
あっけなく用事が済んだので、せっかくだからと館内をウロウロした。

広い。そして、蔵書が多い。
一日じゃ見切れない幸せって、ディズニーくらいじゃないかと思っていたが、中央図書館にもその幸せがあった。
しかも無料。

一通り見て回る中、絵本コーナーに立ち寄ると、子どもの頃に好きだった絵本が、別にガラスケースにしまわれるでもなく、現行の蔵書として棚に並んでいた。
それこそ「あっ、あれはあるかな?」と思い出してはすぐにそれを見つけられるような状況だった。

調子に乗った私は、ずっと探していた本を探してみたくなった。

一冊目は「女の子が壁にドアを描いて、それを開ける話」。
作者もタイトルも覚えていない。

ダメ元でインターネット検索してみた。
「絵本 壁にドアを」
そう打つと、予想検索で「開ける」と出てきた。
誘われるままそのワードで検索したところ、「これだ!」という本はすぐに見つかった。
逆になぜ今まで探せなかったのだろう、というくらい、簡単に見つかった。
(主人公が女の子だと覚え違えていたが、男の子だった…。)

作者もタイトルも分かったので、あとは蔵書豊富な中央図書館。
蔵書検索すると、「書庫資料」というステータスだった。
子どもの頃に読んでいた本が、重版されれば棚に並ぶけど、されなければ書庫にしまわれるということが分かった。

あるいは年代的に、ちょうど書庫にしまわれはじめるくらいなのかも。
そのうちにもっと歳を取れば、書庫からも消えていってしまうのだろうか…。
そう思うと、子どもの頃に読んだ本を再読するのは、急いでやっていかなきゃいけないな、と変に焦りを感じてしまう。

話がだいぶ逸れた。
探していた一冊目は、こうしてすんなりと私の手に収まった。
(「書庫資料」を出してもらうという、これまた初挑戦もあったが、今回は割愛します。)

<見つかった本>
「ドアをあけて (こどものとも 366)」
もり ちかこ/作・絵 福音館書店,1986

手こずったのが二冊目。
「『秘密の花園』バーネット作。ピンクのハードカバー」だ。
インターネット検索でも、蔵書検索でも、「秘密の花園」は大量に見つかる。
むしろ大量すぎて、探し物がよりいっそう見つけづらい。

本の見た目しか覚えておらず、訳者や出版社は分からないので、インターネットの画像検索でピンクのハードカバーのものがないか探したが、見つけられなかった。

素人にはお手上げだ。

そこで、「こどものほんのさがしものはこちら」というカウンターに、びびりながら近づいた。
すると、カウンター内の司書さんが声をかけてくれたので、私は「あのぅ…本を探しているんですけど」と言った。

(子どもかっ!!)

言い終わるか終わらないかのうちに、司書さんはもうパソコンのキーボードを叩いていた。

私は「『秘密の花園』バーネット作。ピンクのハードカバー」という少ない情報に、小学校の図書室で読んだこと、したがって1992年以前の本であることを情報として加えたが、やはりそれでは捜索は難航した。

まずはもちろん自館の蔵書検索をしてくれるわけだが、すぐに「このシステムでは表紙の画像とかは見れないので、インターネットで探すしかなくて…あっ、でもお探しいただいているんですよね?」と、恐縮気味に教えてくれた。
でも、何も恐縮することはないと思った。

と言うのも、たしかに自分でインターネット検索をしたにはしたのだが、司書さんがこちらに画面を見せながら探してくれるインターネット検索は、私の知らないサイトばかりで、Googleの画像検索しか出来なかった私の検索能力とは比べものにならないのだ。
この時点で、やはり勇気を出してプロに頼んでよかったという気持ちになった。
もし見つからなくても、諦めがつく。

「ピンクのハードカバー」の本がいっこうに見つからないことについても、「新しい版が出ると表紙も変わったりして、出版社のサイトにも新しい表紙のものが載ってしまうので」と説明してくださった。
なるほど、それでは古い版の表紙画像など、インターネット上で見つけることは難しかろう。

それこそ、表紙画像をデータベース化しているようなサイトでもあればいいが、その本が出回っていた時代にはパソコンも一般化していないし、表紙画像を撮影しておく慣習自体がなかったんじゃなかろうか。
データベースを後の時代に作るにしたって、現物がなければ写真も撮れない。

さて生意気に語っておりますが、レファレンス窓口に立っていた私は何も考えられないド素人。
「あとはもう、現物を見ていくしか…」という司書さんの提案に「はい、お願いします!」と即答。

司書さんは嫌な顔ひとつせず、蔵書の中から10冊ほどをリストアップし、番号札を発行して渡してくれた。
「15分ほどお待ちください」と。
やはり古い本だけに、どれも書庫にしまわれていた。
というか、既に通常の棚は自分で探して見つけられなかった後なので、もしあるとすれば書庫でしかないのだ。

15分後に窓口に行くと、既に10冊ほどの児童書が用意されており、手にとって見させてくれた。
…が、どれも違った。
私はここまでしてもらって見つけられずに帰るのが、なんだか悔しくなってしまって、何かヒントだけでも無いかと10冊を見比べた。

その中から1冊をピックアップし、「あの…これが、文章の感じ…その、年齢というか、近いと思います。他のみたいに小さい子向けすぎなくて…。大人の本だったのかなぁ…。でも小学校の図書室だから違いますよね?あ、あと、本の大きさは、これより小さかった気がします。」と、少しでも情報が増えればと思い、絞り出した。
まぁ、それでも少なすぎる情報だけど。

食らいつく私に、司書さんはまたパソコンで調べてくれ、「大人の本だと、ハードカバーのものは無いですね。子ども向けで、もっと古いものもありますので出してみましょうか?」と言ってくれた。
私は「お手数おかけします」と恐縮しながら、お言葉に甘えた。
これで見つからなかったら諦めるしかないな、と思った。

そしてまた15分後。
窓口へ行くと、10冊ほどの「秘密の花園」は用意されていたが、対応してくれたのはさっきとは別の司書さんだった。

(そうか、交替か。一時間も探してくれていたんだ…)

なんだか別の司書さんに替わった途端、すごく恥ずかしくなった。
さっきは熱心に探してくれたこともあり、お目当ての本を手にして、意地でもお礼を言って帰りたいという気持ちだったが、今や初見の司書さんの前で、子ども向けの本を20冊も見比べて選ぶただの不審者。

窓口の隅っこで、新たに用意してくれた10冊にすべて目を通した。

でも本当は…

一番上に積まれてた、ピンクのハードカバー。
それだけ見れば充分だった。

さっきの司書さんが、きっとこれを一番上に積んでくれたのだろう。
見た瞬間に「絶対これでしょ!」と思ったに違いない。
私は「これです!!」と叫びたかった。

でも別の司書さんだから恥ずかしいので、10冊わざとらしく見比べ、ピンクのハードカバーを「あの…これ…お借りします」と報告し、お礼を言ってそそくさと立ち去った。
「先ほどいた方にも、よろしくお伝えください」と言いはしたものの、全然言い足りなかった。

だから、こうしてnoteに書いています。
「司書さん、ありがとう!!」

私は、少し小ぶりな変形サイズでピンクのハードカバーという愛おしい装丁の「ひみつの花園」を、両手で宝物を持つように貸出カウンターに持っていった。
まぁ、貸出カウンターのスタッフは、まったくただの本という感じで扱っていたが…。(そりゃそうだ。)

今日はとても感動し、ワクワクし、楽しかった。
かつて「秘密の花園」の読書体験で感じたような気持ちを、もう読む前から感じられたような一日だった。
私が「中央図書館」という本を書いたところで、「秘密の花園」のようなベストセラーにはならないけれど、自分が忘れたくないことをただ書き残しておきたくて書いた。
古い本は書庫にしまわれ、やがてそこからも消えてしまう。
けれど、今日のことはきっと忘れないだろう。

<見つけていただいた本>
「ひみつの花園 (世界少女名作全集 27)」
バーネット/著 山本 藤枝/訳 岩崎書店,1977

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