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6.29

さて、以前の続きを書こうと思う。村上春樹の、色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年について。

私はこの物語を、今回は、「あちら側の世界」が現実世界に影響を及ぼしうる話、として読んだ。現実世界の推理小説ではなく、そのように読んだ理由のもうひとつは、氏の次の長編小説である騎士団長殺しを読んだからである。(以下、ネタバレします)ここには共通して出てくるふたつのものごとがある。ひとつは「ユズ」という女性。もうひとつは、「紐で女性の首を絞める行為」である。

共通のモチーフがあるからといって、このふたつの物語を関連づけて読む必要はまったくないのだけれど、「関連づけて」読むというのも、読者に与えられた楽しみだと私は思っている。そして私は今回、関連づけて読んでみることにしたのだった。そうして読んでみると、つくるが好意を持っていたのは「ユズ」であり、「首を絞めてユズを殺した」のは、つくるの中にいるもうひとりのつくる(「あちら側の世界」で)という見方ができるのではないか。

続く。それでは、また。

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