読書録: 『ホッケースティック戦略』

 先週に引き続いて、コンサルが提供する戦略に関する本。この本のユニークなところは、「社内政治が戦略策定をゆがめる」ことに着目した点。…なのだが、打ち手は結局「新しい論点を設定しましょう」という話になっていて、社内政治に対してどう人々を動かし、政治的な要素を回避するのかという点にはあまり触れられていなかったように思う。論点さえ正しければ人も正しく動くはず、という主張はどうなのだろうか…?

 論点について新しさがあるとしたら、「戦略の成功確率」を3種類・10項目の観点から数字化し、ダッシュボードの様に表示させたことだろう。そうすることで、「解がなく不透明なもの」である戦略が、「可視化された、コントロール可能なもの」に思えるから不思議だ。

 各項目としては、まあ当たり前と言えば当たり前なのだけれど、

・業界トレンドは戦略の成功確率を大きく左右する
・リソースの再配分が大きくなければ成功確率は上がらない
・競争優位の源泉を把握し、それを活かしすべき

という項目は、日頃戦略を考えるうえで大事だな、という感じだ。

 全体を通して、「戦略が社内政治にゆがめられ、ピーナッツバターを広く薄く塗るような予算配分のもと、成果が出ない打ち手が繰り返される」という状況を、「社内政治に左右されないような論点を設定し、重点的な投資先を見極め、成果を出す」という状況に変えていきたい、というのが本書の意図として伝わってきた。

 この本を読んでいて、森岡毅氏の本で「人間は自己保存の本能に基づいて動く」と書かれていたことを思い出した。自己保存の本能をどうコントロールして、人を動かしていくのか―。この本の主題ではないけれど、戦略を描くことと同じくらい、人を動かすことが大事だな、ということも、読んでいて感じた。

おすすめ度: ★★★☆☆


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