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彼が「1人じゃ行けない」場所

私の彼は限りなくグレーゾーンのアスペルガーだと言われている。

発覚したのは付き合い始めて1年が経った頃。

2人ともアスペなんて殆ど知らなかったから、まず色んな本を買ってきて読み漁った。

気づけばもう4年も前のことである。

そんな彼が先日、「行きたいところがあるんだけど、1人じゃ行けないから一緒に行って欲しい」と言うので、ついていくことにした。

それにしても、いい大人が「1人じゃ行けない」ってどこなんだろう?

可愛いカフェとかショップとかだろうか?と最初は思った。

ところが彼にとっては、それ以上に苦手な場所があったようである。


ヒントは「世間話」にあり!

そしてたどり着いた場所は、何と近所の魚屋だった。

魚屋ですよ、魚屋

その古き良きお魚屋さんは田舎の商店街だったような場所に今でもポツンとあって、元気のいい大将(おじいちゃん)が店先でお魚を焼いている。

鮮魚の他に焼いたお魚や貝を売ってくれるようだし、いつもいい匂いがしていて私も気になっていたお店だった。

さっそく大将に「こんにちはー!」と元気に挨拶をしてみると、やはりこの大将、饒舌である。

「おー今日は何にする?今日のおすすめはね!何と言ってもこのイカだね!あとは〜〜もいいね!焼いてあるのはコレとコレ!家で作るなら煮魚とかもいいね!…(略)」

職人さんというのは、寡黙な人も多いが饒舌な人も実に多い。

「こないだ近所に引っ越してきたんですー」と言ってみたら、大将はずっとこの街でもう50年も魚屋をやってるんだと教えてくれた。

散々お話しした後おすすめのお魚を買って、ちょっとおまけももらって、「また来ます!」とお礼を言って家路に着いたのだった。


小さいことに拘らない

この間に彼が話したのは、

「じゃあイカにする?」「うん」
「私アジ買いたい」「うん」

の「うん」だけである(爆)。

私はこういう世間話は割と好きだが、彼にとっては死ぬほど苦痛なようである。

おすすめをバーッと並べられても困るのだそうだ。

脳内で言語情報を処理する間、ちょっと沈黙が必要だから待っていて欲しいらしい。

もしかしたら、私が大将と楽しくお話する間に目でお魚を選んでいたかもしれない。

その選んだものがイカとアジだったのか、それとも私が言わなかったけど「まぁいいか」と諦めたのかは謎である。

「お魚食べたい!」程度の括りしかないとも言える。

時にとんでもなく神経質で細かいが、小さいことに拘らないこともあるようだ。


私が彼に対して思うこと

こんな彼と5年も付き合って来て思うことは、その時その時で本当に色々変わって来たような気がする。

「このくらいの世間話は大人の義務だろーがよ!」

「まぁ私が得意だからいいか」

「でもコミュ力高い男性に憧れるーはー」

を経て、今は「彼には彼のできること、得意なことがたくさんある」と思っている。

こないだも私の親戚の家に行き、パソコンや電気の配線を色々直し、その上何やら二重取りされていた契約を発見して電話をかけて、冷静に対処しまくっていた。

結果として良くなった事は分かったが、私にはその内容が何だったのかサッパリ理解ができない(笑)。

私は大将と楽しくお話することはできても、電話口であんな対応をする事はできないのだ。


確かに「彼ともうちょっとお話したいなー」と思うこともある。

でも彼も「話早く終わらねーかなー」と思ってるかもしれない(笑)。

だからある意味お互い様なのだと、最近は思う。

これからもこんなお互い様な日常が、穏やかに続いていくことを願うばかりだ。

いつも読んでくださりありがとうございます!直近でいただいたサポートは、引っ越し先で使う新しいカーテンと木の食器のために、大切に使わせていただきます(2019年3月末現在)。