Don't go back to Dalston/Razorlight
お気づきの方もいるかもしれないが、時折、「曲名/アーティスト名」のタイトルで記事を書いている。この記事がまさにそうだ。しかしこのタイトルには理由がある。我々は、「愛すべきおバカ曲」というテーマの下にこの記事を書いている。そこには、愛情とおバカさの両方が等しく揃っていなければならない。どちらに肩入れすることもできない。だから、客観的なタイトルを付けざるを得ない。ということにしておこう。
ピラミッドは「金」の字に似ていることから、金字塔と呼ばれるようになったそうだ。転じて後世に永く残るような不滅の業績を残すことを「金字塔を打ち建てる」と言われるのはご存知の通りである。
この「金字塔」という言葉を初めて知ったのは、中学生の時に読んだ音楽雑誌だったと思う。「音楽史に燦然と輝く金字塔を打ち立てた偉大なアルバム云々」という、いかにもな感じでアルバムが紹介されていた。ただiPhoneどころかiPodすらなかった当時は、雑誌が紹介するお決まりの名作よりも、流行りの最新作を借りる方面に、限られたお小遣いを全て投下していた気がする。今やTSUTAYAで何枚も試聴して吟味する必要もないし、借りてきたCDをMDに落とす必要もないのだから、いろいろな音楽を聞くには本当に良い時代になったと思う。
ところで、音楽における金字塔、つまり「後世に永く残る不滅の業績」とは何かという問いに答えるのはなかなか難しい。よく言われる言説は、「新たな分野や概念を作る」という定義だ。あまりにも有名過ぎて例を挙げるのも憚られるが、「コンセプトアルバム」という概念を世に広めた"Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band"(The Beatles)や、「モードジャズ」というジャンルを作り出した"Kind of Blue"(Miles Davis)などはその代表と言えるだろう。
ただ、金字塔という言葉は、何かと便利な言葉のようで上記の定義以外にも様々な意味合いで使われている。典型的なのは、様々な数字のNO.1だ。全米BillboardチャートのNo.1最長記録やら、最高売り上げ記録やら。特にセールスに絡めたものが多い気がしているが、文字通りお金によって作り上げられたお金の記録とも言えるので、さもありなんというところだろうか。
前置きが長くなった。要は金字塔と言ってもいろいろとあるよねという話なのだが、今日はとあるバンドが打ち立てたおバカな金字塔を紹介したいと思う。
「104」という数字。これが何を表す数字がお分かりだろうか。
もちろん、電話番号案内のことではない。サンドウィッチマンの有名なコントで「あのサービス、まだあったんだ」と多くの人が思い出したであろうが、今ここで電話番号の話は関係ないのでやめていただきたい。
また、原子番号104の元素「ラザホージウム(rutherfordium)」でもない。この画像は、Google 画像検索で「ラザホージウム」と検索して拾ってきたやつなので、何の説明もできない。そもそも音楽ばかり聴いていたせいで、中学時代、化学のテストで100点満点中15点で見事に補修を喰らった僕には、何もわからない。
話が逸れてしまった。僕の化学の金字塔の話をしたかったのではない。この「104」という金字塔を建てたのは、Razorlightというイギリスのロンドン出身のロックバンドである。一体何が104なのかと言うことを説明する前に、「Don't go back to Dalston」というわずか3分弱のこの曲を、まずは聴いてもらえると嬉しい。別に聞かなくても良い。
いかがだろうか。聞いていただいた方の中にはもうお気づきの方もいるだろう。この「104」という数字は、CDの売り上げ枚数でも、チャートを独占した週でもない。もちろんラザホージウムでもない。ずばり、曲の中で「Come Back」という叫ぶ回数である。わずか3分の曲にも関わらず、1分半くらいから全員でCome Backと全力で叫び続けている。完全にアレンジのネタが尽きたとしか思えない。ゴリ押しもいいところである。
しかも、曲名が「Don't go back to Dalston」である。確かに、ちょっと目立たない歌詞の一部を曲名にすることの格好よさがあるのはわかる。でも絶対この曲で言いたいのはそこじゃないだろ、と断言したい。「Come Back」って3分で104回も連呼したら、もう絶対タイトルそれだろ。しかも、Don't go back to Dalstonって2回しか言っていないし。
少なくともこの30年に音楽史において、僕が知る狭い狭い知識の中では間違いなく「Come Back」を曲中に最も連呼した曲であり、これは立派な金字塔であると思う。このアルバムをきっかけに僕は「人生バカであれ」をモットーとすることにして、苦手な化学の勉強にしっかりと見切りをつけて、文系へと進むことになるのだが、それはまた別の話である。
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