コンサルファーム卒業日

コンサルタントに惹かれた理由

2018年の4月いっぱいで約2年弱働いたコンサルティングファームを卒業して、新しいファームに移籍することにした。移籍を決める前に色々とキャリアについて考えたときに、ふと自分がコンサルタントを志した動機を部分的に言語化することができたので、忘れないように書き記しておこうと思う。

いわゆる右脳型と左脳型

「右脳型か左脳型か」、「感性かロジックか」というのはよくあるお題目だけれど、一般的にコンサル=左脳というイメージがあるように思う。自分でも理屈っぽいところはあるとは思うし、中高校時代に真剣に将棋もやっていた。更には、自分がサラリーマンとして仕事を始めてからはご一緒した色々な人々に「お前は左脳型だねぇ」と言われてきたので、どちらかと言えば左脳の強い人間だと思ってきた。ただ、コンサルファームには「ロジックの権化」、「超絶左脳型人間の極み乙女」みたいな人も沢山いて、そういう人々に会うたびに拭いきれない違和感を感じていた。それは「左脳人間は右脳人間と比較して云々」というような比較論ではなくて、単純に自分がそういうレベルにまで達したいのか、また自分がそうなることを望んでいるのかということへの迷いだったと思う。(因みに、通常そういう人々はコンサルファームでは「優秀な人」という評価であることも多い)

はやい話、自分はどちらかというと右脳で最初に考える人だということに気がついた。振り返ると高校時代に将棋の大会で優勝したりもしたけれど、読みの力がすごく秀でていたわけではなかったし、そもそも試合の序盤から形成が不利になることが多かった(読みが甘いということ)。更に言えば、逆転するために「読みの正確性」で勝負するよりも、局面を複雑化させるような怪しい雰囲気の手を放ったり(論理的に根拠があるわけではない)、「この手を指さずに負けるわけには行かない」、というようなやぶれかぶれのギャンブラーのような手を指すことも少なくなかった。もはや右脳左脳以前の問題の気もするが、そんな自分がなぜ一般的に左脳人間が求められる(と言われる)コンサルタントに惹かれたのか。ファームに入ってから様々な人々に接する内に、ようやくその答えが少しだけちゃんと言葉にできた気がする。

生きていく上での守備力を鍛えるため

言葉で書くとほんとに稚拙で他愛もないけれど、右脳を補強するための左脳は自分にとっては守備力になるのであり、僕は無自覚のうちにそれを求めていたのだと気づいた。左脳を使って物事を考えられるようになると、それは自分にとって右脳中心の思考を大いに補強してくれる。

根底には、意思決定の失敗を多数繰り返してきたことへの後悔があると思っている。「既存の就活のシステムはおかしい」とのたまって、特に就活をせず大学卒業後にフリーランスめいたことをしていたこと、バイトから転がり込んだ住宅営業会社が全く肌に合わず体調を壊したこと、また初めて転職をする期間も基本的なお作法を知らず面接に落ち続けたこと、いずれも自分の選択のせいで苦境に陥り、経済的にも精神的にも大変に困窮した生活をしていた時期があった。その時期は、本当に今思い出しても目を覆うような酷い意思決定の連続だった。計画性もなく、反骨心と感情、直感だけでほぼ動いていた。さらに輪をかけて恥ずかしいのが、その自分の感性を無根拠に信じていた。僕が暗黒時代を過ごしているその数年間で、周りの友人たちはちゃんと仕事をして、ちゃんと生活をしていて、いつの間にか自分が感性を信じて進んできたことがコンプレックスになっていた。だから「サラリーマン生活を暫くしっかりとやろう」と腹に決めた時に、自信が持てなくなった自分の感性を仕事に取り入れようとはせず、むしろそれを排除して考えようと努めていたことが根底にあったと思う。その結果が、周りから左脳型だと言われるようになり、コンサルファームに行き着いたのだと思う。

※ちなみに、中学・高校時代の友人には「お前が社会で働けるとは思わなかった」、「サラリーマンなんて信じられない」という罵詈雑言を浴びてきた自分としては、やはり右脳/左脳以前の問題だったのではないかという疑念もある。(付き合う友人を間違えたという可能性も否定できない)

そんな訳でビジネス本も読み出した

こんな風に、自分がコンサルに惹かれた理由に気がつくきっかけになったのは、ファームに入ってから出会った師匠の影響で色々な種類の本を読むようになったこと。それこそ、昔は小説や批評ばかり読んでいたけれど(特にビジネス本なんて時間の無駄だと毛嫌いしていた)、仕事をする中で必要にかられて色々な種類の本に触れる中で、素晴らしい本にも出会えた。そしてこの「素晴らしい」は、自分の感性に大きく依存していることに気が付いた。「この考え方は面白い」、「これは何か価値がある気がする」、「この文章はグッとくる」等々。結局のところ僕にとっての出発点は、いつも感性だったのだと思う。だから自分の感性にできるだけ正直に生きるため、そしてそれがより良く具現化できるように補強したり、致命的な失敗をしないように食い止めてくれるような守備力=左脳を鍛えたかったのだと気づいたのである。

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ということで、コンサルタントに惹かれた理由が明確になったので、すっきりしたよという話でした。「じゃあなんで転職するんじゃい」という転職理由は、またそのうち機会があれば。

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