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【絵日記】こんなコロナなご時世ですが#こんコロ2021

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2021年4月25日から、「こんなコロナのご時世ですが2 #こんコロ2 」を連載します。 2020年春、緊急事態宣言発令を受け、mokumoku studioはこの未曾有な時間を…
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#一日一絵

【絵日記#こんコロ-DAY60】 風呂上がりアイス

絵 掛田智子 文 ちから 突然子供の頃に食べた  銀紙に包まれたアイスが食べたくなった バニラ味があったかな パリパリチョコみたいなのもあったと記憶する 今でもあるのかな 銀紙に包まれているなんて 四角くて長細くて お風呂上がりにおばあちゃんにもらったな 美味しかったな また食べたいな 子供の頃に大好きで 突然思い出して食べたくなることがあり 今でも手に入るものであれば食べることがある 名前は何と言ったか バニラアイスとチョコがミルフィーユ状に折り重なっていて 包丁

【絵日記#こんコロ-DAY59】 私という磁石

文 掛田智子 絵 ちから フリーランスとして仕事をしていると いや ある意味どんな立場であっても 同じことが言えるかもしれない みんなから申し合わせたかのように 同時にご連絡を頂くことがある ある時は スマホもパソコンも送受信ボタン押してみても 受信ボックスは登録してるニュースレターだけ まわりはしんとして 世の中で私だけが忘れ去られたような 気分になることさえあるのに ありがたいありがたい ご依頼は全てありがたい 私を思い出してくれてありがたい わざわざ連絡く

【絵日記#こんコロ-DAY58】 犬のアジェンダ

文 掛田智子 絵 ちから 実家の犬、キャバリアのきりんはよく吠える 散歩の際、ほかの犬とすれ違う時 宅配が来る時 隣の家の屋根にカラスがとまったのが見えた時 先代の犬、キャバリアのちょうすけがあまりにもおとなしかったので 両親も手を焼いている プロに相談し、トレーニングを受けようかと考えたらしい だけれど、吠えてはならないと決めたのは人間たち 人間たちのルールに犬を適応させようとしている きりんは理由があって吠えている 犬だから吠えて表現している それを奪う権利は人

【絵日記#こんコロ-DAY57】 それでも私は美しい

「それでも私は美しい」 文 掛田智子 絵 ちから 私は自分の裸体を観察する 自分の身体は絵画の大切なモチーフであるし 自分の表現媒体でもある ここ数週間か直視できなかった 自分に意識を向けられていないし 自分を思いやった食事も運動もできないばかりか 自分の身体を酷使していて とてもじゃない鏡に自分を映して向き合えなかった 半年ぶりにマッサージに行った そこは裸になり施術士の方に見立ててもらう 一緒に自分の裸体を観察し めぐりが滞っている場所や コリを見つけていく

【絵日記#こんコロ-DAY56】 まあるくやわらかく

文 掛田智子 絵 ちから はぁここ半年全く自分に意識を向けられてなかったな 以前はルーティンだったヨガや瞑想さえもできなかった 3分でも自分の中心に意識を集めて 呼吸を耳を澄ませることができなかった 比喩的には ずっと息を止めて身体をこわばらせて うっぷうっぷと溺れそうになりながらも 自分が自分を押さえ付けていたかんじ 外的要因はいくらでも考えられて やれコロナだ やれ引越しだ やれ仕事だ 今までもなかった話じゃない 前歴がありすぎる 無理するのとても得意なわたし

【絵日記#こんコロ-DAY55】 手術したよ

文 掛田智子 絵 ちから 相方からメッセージが届いた 「手術したよ」 え どういうこと 1週間前から化膿していた部分がひどくなり 予定していたよりも早く病院に行く事になった そしてその場で手術をすることになったらしい 麻酔をしていたもののかなり痛かったと かわいそうだ 本当にかわいそうだ それでも早く治療してもらえてよかったね 先延ばしにしていたらもっと痛みが大きかったかもしれない 今日は奇しくも 母も白内障の手術から退院した 2人とも今日は髪が洗えないしお風

【絵日記#こんコロ-DAY54】 明日はロングスカートをはく

文 掛田智子 絵 ちから これは珍しいと買った 明日初めてお目見えするロングスカート 漁業網の柄である はげしい 漁業の躍動感があふれる柄だ 今週の金曜日という日を飾るに相応しい 高層ビルに入っている 六本木のオフィスに行く 私は明日 漁業網の描かれたロングスカートをはいて

【絵日記#こんコロ-DAY53】 見ちゃいけない自分

文 掛田智子 絵 ちから 今朝ゴミ出しの準備をしていて ふとベランダから家の中を見る瞬間があった なぜか直感的に あ 見ちゃいけない ドキリとし 目をそらした 自分がいつものソファに いつもの体勢で座っていたからだ 座っていたような気がした 自分の最も素の日常風景を見てしまった 見てしまったような気がした 問題は自分が自分を見たような気がする事よりも 見てはいけないと思ったことだ 不思議だあたかも 自分と自分の間に 距離を保つという 暗黙の了解があって お互いがそれ

【絵日記#こんコロ-DAY52】 なんかやりたいなんかやりたい

文 掛田智子 絵 ちから 自分でもびっくりするほどの鬱を経験し 今週はなんとか心が上向きだと感じる 天気が比較的良いからかもしれない 週の半ばはタスクをこなす事に必死で 自分の心に気持ちを向けられていないのかもしれない あれもやりたいこれもやりたい あれも欲しいこれも欲しい 外にエキサイトメントを求めてる またきっとあの鬱はやってくる 私の中に潜在的に存在している 自分自身が本当の喜びである 自分自身が本当の安全である 自分の内側に気を集められていないからか まだ実

【絵日記#こんコロ-DAY51】 今日は母の手術

文 掛田智子 絵 ちから 白内障の手術はごく一般的で 日帰りでもできるほど 母も何度も受けたことのある手術だし 心配ない 心配する必要などないのだけれど ああ それでも 手術台にのせられて メスがおりてきて いろんな音がして こわかろう さみしかろう 一緒にいられなくて 手術が終わるのをまってあげられなくて ごめんね 気丈で 芯が強く 楽観的 でも臆病な母 来年は母がずっと行きたかったアウシュビッツに 連れて行けますように

【絵日記#こんコロ-DAY50】 裸足きもちいい

文 掛田智子 絵 ちから 裸足になって砂浜を歩いた 太陽であったまった砂が心地よくて なんでもっと早くこうしなかったんだろう なんで自分にこうさせてあげなかったんだろう あまりの気持ち良さに 自分に申し訳なかった 海の水はまだ冷たくて 足をずぶずぶ砂浜に埋めて 波のとらえられない模様と 泡泡を見ていると 時間を忘れられた 私は自分に気持ちが良いこと させてあげてなかったんだ なんて無理ばっかり させていたんだろう 自分に申し訳なかった 砂浜は気持ち良くて 貝殻の

【絵日記#こんコロ-DAY49】 穴のはなし

文 掛田智子 絵 ちから 私がもっと若かったころ 女性として欲される事によって 自分が肯定されている 自分は存在している と感じていた なぜかわからないけれど 大きくぽっかり空いた穴があって 自分にはその穴をのぞき込む勇気はなく ただ埋められるのを待っていた あるいはその穴の上に きれいな絨毯を敷いて しばらく穴が無かったかのように ふるまうこともあった その穴は確実にまだ存在する 穴との付き合い方もみんなそれぞれで 大小あれど持っているかもしれない 埋めるので

【絵日記#こんコロ-DAY48】 デイリー脱力プラクティス

文 掛田智子 絵 ちから 海にプカプカ浮く夢を見た 砂浜はなくて そこはもう海で 勇気を持って 両手を広げた 焼けちゃうわと不安になりながら あまりの気持ちよさ あまりの解放感 これこれ これを探し求めていたのよ 海よ 私は全身の力を抜けられてた? あなたという存在に 全体重全精神あずけられてた? ヨガのプラクティスでも 力を抜ききるのが難しい 日常生活でも ギアを上げることは簡単にできても 自分の解放難しい こわい でもひゅっと力を抜くことができれば もっとら

【絵日記#こんコロ-DAY47】 大人のかお 子どものかお

文 掛田智子 絵 ちから ときどきある 小学校のときの同級生の大人バージョンに出会うとき 広島で通った学校の同級生に東京の道端で出会う可能性は少ない その人の事を日常で思い出す事なんてまったくないけど なぜか道ゆく見知らぬ人を見て あの子が大きくなったらきっとこんなふう そう思うことがある その子が着ていた服や持ち物まではっきり思い出す 得意だった教科 言い放ったジョーク 冷たい瞬間 つながれた瞬間 自分が覚えてると思ってることなんて結構あやふやで 忘れてたことも