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11月のある日

11月の3連休に奥さんとドライブに出かけた。自宅から1時間程の道の駅で休憩してお昼を食べていると、先日テレビで出演されていたcafeがこの近くだと思い出した。

お店に電話すると店主さんが出てくれて今いる場所から10分弱くらいで到着できると言う。早速いってみようと思っていると店主さんは電話を切る間際に

「カーナビでは到着しません。田舎すぎるので。途中寂しくなりますがその先にお店がありますのでがんばって来てください。お待ちしています。」

と気になる事を言った。

cafeに向かって車を走り出すと山道になってきた。道は細くてドンドンと山の中に入っていく。道路の舗装がアスファルトからコンクリートに変わって、見通しの悪いカーブが続いて、ここで対向の車が来たら嫌だなという道を登っていく。みかん畑があって、その次によく手入れされた柿畑が出てきた。道は農道になってきた。

まだかまだかと思いながら運転していると、ヤマモモの大きな木が2本あって、その向こうにコンクリートと木でできた少し場違いな感じのおしゃれな珈琲屋さんが見えた。僕も妻も大きな声を上げて「あそこだ」とさけんだ。

お店に入るとにこやかな店主さんが窓際の景色の良い席に案内してくれた。窓からは遠くに山の尾根、丘陵が見えた。下の方にみかん畑と柿畑があって、その間に通ってきた細い道が見えた。平屋の瓦葺きの大きな家々の集落があり、椿の垣根をきれいに剪定している家の庭で犬が放し飼いにされているのが見えた。

とても田舎に来たような気がしたが、都市から車で1時間くらいで、近くにスーパーもあり、水道電気、ライフラインが整っている半田舎みたいなところにお店はあった。お店は農家の倉庫をリフォームしたようだった。店主さんはこの地に移住してきたとのことだった。移住と言っても山の中の一軒家のド田舎というよりも、生活に不便がないそこそこの田舎の街にハーフ移住してきたとのことだ。

お店の珈琲はとても美味しかった。お天気は晴れで青空と山の緑とのコンストラストが鮮明できれいだった。その景色を背景に皇帝ダリアが天高く伸びて花を咲かせてくれていた。いろいろと日常の事、コロナ禍の仕事の事等を考えるときりがないが、この窓からの景色を見て美味しい珈琲を飲んでいると心が洗われたのか無の境地になったような気がして希望が湧いてきた。

隣に座って珈琲を飲んでいる奥さんも黙って窓からの景色を見ている。どんな事を考えているのかわからないが、表情からは気分が良さそうに見えた。

また、明日からがんばっていこう。

いい気持ちになって頭の中ではブローウェルの「11月のある日」が皇帝ダリアをバックに流れていた。

帰り道は、もう何度も通ったことのあるように感じた。


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