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本の話

僕は本が好きでよく読む。いつも欲しい本を新刊で購入できるわけではないので古本をネットで購入するか、図書館で借りて読む事もよくある。それはつまり、誰かが読んだ後に僕が読むことになる。そんな時は本の内容よりも以前はどんな人が、どんな気持ちで読んでいたのだろうと気になる。

本を読んだ方の思考は目には見えないのが普通だ。しかし幾度か不思議な痕跡を本に見つけたことがあった。

ネットで購入したある古本は全ページに毛が挟んであった。しかも1本ずつ。どこの毛かはわからない。幸いにも縮れ毛はなかった。辛抱して200ページ位まで読んだが、奥さんが気持ち悪がって捨てた。毛を挟んだ人は脱毛エステをしたみたいにツルツルになっただろう。なんせ、500ページ超の本だったから、体から500本超の毛が無くなっている訳だ。どういうつもりで本を読んだのかは全く謎だった。推測するのも気持ち悪かった。

図書館で借りたある本には飛行機のチケットが挟んであった。本の真ん中辺りのページに半券が切られていない飛行機のチケットが2つに折られて挟まれてあった。羽田新千歳間の飛行機のチケット。なぜ乗らなかったのだろう。本はポール・オースターの『シティ・オブ・グラス』。ニューヨークを舞台にした探偵小説。飛行機に乗る前に何か事件に巻き込まれたのだろうかと、僕が探偵になってしまっていたりする。

他に図書館で借りた本でよくあったのが、僕の街には無い本屋さんの栞が挟んであること。僕と同じ街に住んで生活をしているのに、どうしてそんな遠い街の本屋さんの栞が挟んであるのだろうと想像してみる。旅行に行ってその本屋さんで栞をもらったのか、友達からもらったのだろうか。それとも恋人が勝手に読んで栞を挟んだのかもしれない。

本は僕の手元に来てくれるまでに、たくさんの人の手元でいくつもの物語を経験しているのだろう。さて、僕は次に読む人のために本に何を残していこうか。




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