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Research 03 * ドイツの現代音楽祭事情【後編】

オンナ作曲家サロンでの会話をまとめたものです。主にマイノリティー・イシューについて考えていきます。今回はドイツの現代音楽界についての後編。三人とも海外在住10年越え選手、現在はドイツ拠点です。
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わたなべゆきこ(作曲家)
2008年よりグラーツ(オーストリア)、2014年よりケルン在住。

印牧沙織(音楽学者/キュレーター)
2007年よりデュッセルドルフ、2008年よりベルリン在住。

森下周子(作曲家)
2009年よりハダースフィールド(イギリス)、2011年よりベルリン在住。
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「Research 02 *  ドイツの現代音楽界【前編】
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ーーわたなべ わたしの個人的な疑問なんだけど、ドイツ現代音楽って具体的には何を指すんだろう?実はカーゲル(Mauricio Kagel)もアルゼンチン出身だし、ドイツでよく演奏されるマーク・アンドレ(Marc André)やレベッカ・サンダース(Rebecca Saunders)も非ドイツ人作曲家。ドイツという土壌でよく演奏される曲って実はドイツ人の曲が少ない。

この前、武生音楽祭でハリー・フォークト(Harry Vogt - 音楽学者/WDRプロデューサー)のレクチャーを聞いたんだけど、話に出てきた作曲家の殆どがドイツ人「以外」だったのね。気になってハリーに直接聞いてみたの、「WDRは国籍についてどう考えているのか」って。そしたら、WDRは国籍に関わらず非ドイツ人にも積極的に委嘱を出す方針だと。ただ例えば、ヴィッテン音楽祭(Wittener Tage für neue Kammermusik)では聴衆から「なんでドイツ人作曲家の曲がないんだ」ってクレームがつくこともあるみたいね、実際は。

そりゃ、当然だとは思うんだよ、私は。地域の音楽祭、しかもヴィッテンって超小さな田舎でやっているフェスでしょ。そこで、やっぱりそういう声は上がると思うの。それでも聴衆と対話して、地域を育てていくことで、今のような形になっていると。


ーー森下 なるほどなあ。私は「国籍によって差別される/分類される」経験をあまりしてきてない。だから今のゆきこちゃんの話を聞いて、逆に、そうか、ドイツ人か非ドイツ人かという意識がやっぱりこの国にはあるのかなあ〜って思った。


ーーわたなべ それはそうだね。移民を受け入れるかどうか、非ドイツ人の文化を入れられるかどうか、本気で一緒に共存できるか、そこに税金つっこめるか。それを考えるとnein(ノー)!っていう人が出てくるのは当然かなと。


ーー印牧 私が「ドイツ現代音楽」という文脈で個人的にイメージするのは「ドイツという国をプラットホームとした現代音楽」。そこで作品を発表する作曲家がドイツ人であるというよりは、何かしらドイツの教育や文化を共有する作曲家を期待しているのかなって。この国ははある意味でサラダボールだから。ただドイツ現代音楽シーンはトップダウン構造で、トップのほとんどはドイツ人という印象があるかな。


ーー森下 うん「ドイツ現代音楽」に関しては、わたしは沙織と同じように考えています。国籍ではなくその地域で教育を受けた人たちというくくり。私はベルリンに住んでいてもマスターもドクターもイギリスの大学だったし、自分は部外者だといつも感じる。思考も美学もぜんぜん違う。ゆきちかでそれはしょっちゅう話すけど。


ーーわたなべ 「ドイツはサラダボール」っていうのわかる。そもそもドイツの音大でもドイツ人は意外と少数派だったり。そして「国際的だけど、結局トップはドイツ人」っていうのもわかる。

でも日本で考えるとね、例えば湯浅譲二先生とか、一柳先生とか、大御所がもらう委嘱を、よく知らない外国の若手作曲家にあげちゃう、みたいなことで、これって凄いことだなぁって思うんだよ。


ーー印牧 凄くわかりやすいメタファーでつい唸ってしまった。優れた新人を発見することは、ドイツでは「キュレーターの評価」に繋がるんじゃないかな。そこにディレクターの手腕を見るじゃないけれども。


ーーわたなべ そうか、日本では顔が見えるキュレーターがいないのか~。


ーー森下 うーん英米系の若手作曲家に関しては、そういう形の委嘱で成り上がって来た人(言い方よ(笑))割といるんじゃないかなあ。音楽の上で「この国出身じゃないから!外国人だから!」って言われたこと、わたしはないなあ。


ーーわたなべ ドイツのことで言うとハリー・フォークトのレクチャーで挙がってたリストにはね、アジア人は一人も入ってなかったんだよね、確かイスラム人もいなかったと思う。


ーー森下 わわわ、そうなの???


ーーわたなべ そう。「国際的」ってなんだろう、と思った。


ーー印牧 えええショック!西欧人にとってみると東欧人は違う人種という感覚だから、もしかしたら東欧人がリストにあって「国際」のつもりなのかしら?


ーーわたなべ 日本人がフェスのリストに入るときって結構テーマだったりしない?Japan weekみたいな、別枠。そういう仕事ばっかり。


ーー森下 いやあ、、、さっきから反対ばかり申し訳ないんだけど、私は「日本人だから」が一番でくる仕事ってほぼないよ?これを言うと、「それはおかしい!」って言ってくる人が必ずいるんだけど男女差別と同じだよね、これまで男性優位の社会だったのは事実だとしても、被害者意識を持ってる女性とそうじゃない女性がいる。私が日本人ぽくないっていうことを言いたいんじゃなくて、正直外から見ると、ドイツ文脈にいる人たちはいつもこのことを話してる印象があるんだよ。ドイツ人かそうじゃないか、それで得するか損するか。それはグローバルじゃなくてローカルネタだと思う。


ーーわたなべ どちらにしても、自分はおシゴトするのみです。


ーー森下 わお、えらい〜!!(⁎⁍̴̆Ɛ⁍̴̆⁎)(⁎⁍̴̆Ɛ⁍̴̆⁎)(⁎⁍̴̆Ɛ⁍̴̆⁎)

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Research 01 * 50:50ポリシー
Research 02 * ドイツの現代音楽界【前編】
Research 03 * ドイツの現代音楽界【後編】


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Chikako Morishita、作曲家です。ちかこと読みます。ベルリン在住。作品リストなどはこちら: https://chikakomorishita.com/
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