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後見業務は儲からない?

後見業務始めました。


こんにちは。
司法書士チカコです。

最近になってようやく後見業務を受任しはじめました。
後見人は、ずっとやりたかったんですが…、
後見人名簿に登載されるための研修を、出産や育児で長い間受けられなかったんです。
それで先延ばしになっていたところ、コロナの流行で大幅にオンデマンド化が進み、研修を受けられました。
コロナがなかったら、私は後見業務を始められなかったかもしれません。

後見業務は、あまり受任しない、もしくは全部断るという司法書士もいますが、私は個人的には楽しくやらせて頂いております。他の司法書士にもおススメしたい分野です。

「成年後見業務は儲からない」という噂…

「儲からない」は嘘。

「成年後見業務はお金にならない」とか、「手間ばかりかかって業務に支障が出る」、などという噂を、耳にしたことがある人も多いのではないかと思います。
私も、同年代の司法書士から、「いわゆるオイシイ案件はもうない」という話を聞いたことがあります。
ですが、私の正直な感想は違います。
成年後見業務は、事務所の主力業務になり得ます。

成年後見業務は月々の報酬があり、それを年一回まとめて頂戴することになっていますよね。サブスクリプションです。
一人につき年間の報酬を平均30万円とします。
(もちろん、一人一人財産価格が違いますので、報酬もまちまちではありますが、平均そのくらいとします。)
そうすると、例えば成年後見業務を10人担当したら、年間で300万円の売り上げになりますよね。
300万円というと、本職1名・アルバイト1名の事務所であれば、諸々の事務所経費を支払える金額です。
さらに20人担当すると単純計算で600万円です。
事務所経営はかなり安定的になります。

受任ルートによる報酬の違い?

私の場合、地域のリーガルサポートからご紹介を受けることがほとんどです。
自分で積極的に営業している時間がないということもありますが、私が開業している地域は(今は全国各地で同じかと思いますが)古くから住んでいるお年寄りが多いのです。だから、市の福祉部門などからリーガルサポートに連絡が行き、リーガルサポート会員に仕事を振られることがとても多いです。だから、待っているだけで案件はすぐに入ってきます。

ただ、一つ問題はあります。

市役所などからの案件は、市の福祉相談課か、または生活福祉課、生活相談課といったところが初動の窓口になっていますので、対象となる方が生活保護を受けていたり、そこまでいかなくても、「お金がない、キャッシュフローがない」という状況が多く見られます。
そのような場合は、成年後見人はたいがい市の報酬助成を受けられるのですが、なんと、この報酬助成がない自治体も存在するのです。すると成年後見人は報酬助成もなく、生活保護費からも報酬をもらえない状況に陥ることがあります。
私の事務所も、現在受任しているうちの1件が、このパターンです。

一方で、市役所案件であっても、十分な貯金や不動産、年金収入を得ている高齢者もいます。特に、地域に古くから根付いて生活しているお年寄りは、先祖代々の資産をしっかり受け継いでいたりもします。
ですがやはりそれは少数になります。

儲からない感じがする理由。

上記のように、たまにボランティアになってしまう案件があるということは、「儲からない」と言われる理由の一つかと思います。

何かと比べているから

それに加えて、おそらく「儲からない」と言っている人は、ご自身の中で「何かと比べて」儲からない!という結論を出しているのではないかと思います。
やり方が決まっていて、補助者任せにしておける決済案件に比べれば、経営的な観点で成年後見業務は確かに効率が悪いとも言えます。
その観点から語る人物にとっては、おそらく成年後見業務は「天命じゃない」というだけのことだと私は思います。あとは、いわゆる「富裕層向け」を自認している士業にとっても、後見業務は「儲からない」仕事に分類されるのかもしれません。

一つ一つの行動に報酬がつかないわかりにくさ

例えば登記の仕事であれば、「登記申請に対して○○円、書類作成に対して○○円」とはっきり決めて請求書を切ることができます。
ところが後見業務では、そのように明確化できない部分があります。
ケアマネさん主催の会議に呼び出されたり、郵送で済みそうな書類のやりとりに呼び出されたりします。そうして折々に時間を持っていかれるのに、それに対する報酬は、毎月の報酬額になんとなく乗せるしかない、ということになります。
もちろん裁判所に申し立てて、毎月の報酬以外に特別に請求できる部分もありますが、裁判所が認める後見人報酬は「財産管理」に関する行為に限られるため、使った時間のすべてを請求できるわけではありません。
このあたりに対する専門職後見人の不満は確かにあると思います。

「儲かる」ようにするには…

冒頭で述べたとおり、私自身は成年後見業務に対してポジティブに考えています。
ただ成年後見業務を事務所経営の柱とするには、ほかの業務とは、考え方を変える必要があります。

例えば登記のおしごとはある程度型が決まっていて、一件でどれくらい報酬が入りそうか、今月は○○件だから○○円になりそうだね、などということは、簡単に予想することができます。業務の内容も、案件ごとに大きく違うということはなく、パターンで理解することができます。

これに対して成年後見業務を経営に組み入れるときは、もっと視点を高くもつ必要があります。
どういうことか説明します、
成年後見業務は振られてくる案件によって、ご本人の個性、財産状況、家族状況などが違うため、こちらが請求できる報酬金額や、業務の手間暇がバラバラです。
ですが、このバラバラな案件は、多数の成年後見業務を受け持つうちに平均化してきます。つまり案件を「束で」受任できるようになれば、そのうちの一件であまり十分な報酬がもらえないとしても、大した問題ではなくなるということです。「束で」受任するには結構な時間が必要になりますけれども、時間の面でも「視点を高く持つ」ということなのです。

業務の幅はリスクヘッジになる

話しは変わりますが、私が最後に勤務していた事務所は、いわゆる「決済事務所」でした。
お仕事は、ほぼ決済しかありません。
たまにホームページから相続案件があったり、法人登記のお仕事もあるにはありましたが、割合としてそれらは全体の仕事の1割ほどだったと思います。

そして決済案件をもらっている不動産業者は、ほぼ1社のみでした。
1社からの仕事しかないのに、本職、補助者あわせて50名くらいが働いていました。
この状況は、はために見ても、非常に恐ろしい感じがしました。
もし、その1社との信頼関係が壊れてしまえば、仕事は一気になくなります。
当時の代表司法書士もそれを感じていたのか、仕事にミスがないよう常時、力が入っていたと思います。
その帰結として、けっこうなブラック事務所になっていました。罵声に近い怒鳴り声を聞いたこともありますし、夜帰るのが遅ければ遅いほど評価される風潮もありました。従業員が印紙を盗む事件も発生しました。
比較的大きな事務所でしたし、いろいろと勉強させて頂いたことに感謝はしていますが、事務所運営については「悪いお手本」となりました。

もし私があの事務所のトップに入るようなことがあったら、決済以外に、成年後見業務という柱を導入することを進言すると思います。
決済は目先の利益で、成年後見業務は長期的なファンダメンタルですと、言うと思います。投資用語で「ポートフォリオ」という言葉がありますが、ひとつの事務所の中でその考え方を応用できるということです。

「ブラック事務所」回避策として

大量の決済案件で、業務の効率、システム化、正確さばかり追い求めていると、従業員は使い捨てとなり、それぞれが求めている成長が得られなくなります。
仮定ではありますが、もっと決済以外の業務の幅を広げてくれれば、あれほどブラックな事務所にはならないだろうと私は考えています。
成年後見部門を組んで裁判所、医療・介護関係者などと接する中で、たまには「無駄」と思えることもやりながら、資格者も補助者も人間としての成長を目ざせたのではないかなと思います。

令和4年4月3日




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