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映画「ジャングル・クルーズ」感想

 一言で、王道の脳筋アドベンチャーアクション映画です。アクションやCGは良いですが、脚本は大雑把で突っ込み所満載です。昆虫・爬虫類・嘔吐恐怖症の方にはお薦めできません。

※ここからはネタバレ含むので、ご注意ください。また、辛口意見なので、絶賛の方は閲覧注意です。
 16世紀、スペイン人探検家のアギーレは、どんな病気や怪我でも治す花「月の涙」を求めて南米のジャングルに入っていきました。しかし探検中に、殆どの探検家たちはジャングルの中で動物に襲われたり、疫病に罹ったりして命を落としてしまいました。そんな中、アギーレは奇跡的に原住民に命を救われましたが、「月の涙」を咲かす木の場所を原住民たちが教えてくれなかったことに腹を立て村を破壊してしまいます。
 これに怒りを覚えた原住民は復讐としてアギーレらに「死ぬこともできれなければ川から離れることもできなくなる」呪いをかけました。すると、彼らはその場で「石化」してしまい、長い間アンデッドとしてそのままの姿で過ごすことになってしまいました。
 1916年の第一次世界大戦下、女性冒険家のリリー・ホートンは弟のマクレガー・ホートンと共に「月の涙」を探しに行こうと模索していました。彼女は、それがあればどんな病気も治せるし、イギリス軍にも役立つと主張していましたが、冒険協会の人々は誰も彼らには聞く耳を持とうとしませんでした。
 仕方なくリリーは「月の涙」の木にたどり着くための鍵となる「矢尻」を冒険協会のアーカイブから盗みだそうと画策します。ところがリリーが矢尻を盗んだところを同じくそれを探していたドイツ人貴族のヨアヒム王子と遭遇してしまい、リリーは命を狙われてしまいます。
 その後、リリーはブラジルへと向かい、アマゾン川のツーリストガイドのフランクにジャングルの奥地まで連れていってくれように依頼します。フランクは最初は断ろうとしますが、リリーが矢尻を持っていることを知ると、考えを改めて仕事を引き受けることにします。漸くジャングル奥地へ出港しようとした時、「追っ手」が現れて、港は大混乱に陥ります。果たして、ホートン姉弟は「月の涙」の木にたどり着くことができるのでしょうか、そしてフランクの正体とは…?

・良かった点→主にアクション・吹き替えの演技

 本作品はジャングルでのサバイバルアクションがメインでしたが、特に主演のフランク・ウルフ役のドウェイン・ジョンソンと、ヒロインのリリー・ホートン役のエミリー・ブラントのアクションは、とても体を張っており、動きに躍動感があって良かったです。特にドウェイン・ジョンソンは、「ワイルド・スピード」や「ジュマンジ」シリーズでは欠かせないムキムキでワイルドなイケオジ枠の役者さんですね。本作品では、それらと比較すると彼のアクションシーンは少なく、寧ろエミリー・ブラントの方がガシガシ動いていましたが、それでも彼の存在感はしっかり印象に残っています。

 また、本作品に登場するイギリスの冒険協会は、「ファンタスティック・ビースト」や「ミッシング・リンク」との類似性を感じます。伝説の正体を暴き、そこにあるかもしれない真実を追求するといった探究心は、昔の人といい、現代の私達といい、どの時代の人も持ち合わせている感情なのかもしれませんね。今はインターネットの普及で、「知りたいことはすぐ知ることができる」時代ですが、そんな時代だからこそ、伝説や神話、口伝をそのまま信じるのではなく、自分の目で見て、足を動かして確かめる姿勢が大事だと伝えてくれる作品だと思います。

 さらに、吹き替えの演技も良かったです。主演のフランク役の小山力也さんはベテラン声優さんの貫禄がありました。大河ドラマ「青天を衝け」にも出演されていたのが印象に残っています。リリー役の木村佳乃さんとマグレガー役のジャングルポケットの斉藤慎二さんは本職声優以外での吹き替えでしたが、そこまで違和感は無かったです。出来れば字幕も観たいのですが、上映回数が少なく、遅い時間でないと観られないのが難点ですね。


・ここは「引っかかった」と感じた点→脚本・キャラ設定・場面の魅せ方・虫や爬虫類の描写

 まず、全体的にキャラクターのダラダラとしたお喋りや思わせ振りなフェイントが多く、そこに時間を割きすぎていて、その度に物語が停滞していました。ダジャレの会話や敵の襲撃によるハプニングなど、本来は笑ってほしいと思われる場面でも、私は全く笑えなかったです。実際、映画館でも笑いは殆ど起きてなかったです。
 ちなみに、私が行った日は割引デーかつ休日だったので、映画館はとても混んでいました。本作品もほぼ満席で、客層は家族連れが多かったですが、この内容で2時間半の上映時間だと、小学生以下の子供は飽きてしまうように感じました。
 
 次に、キャラの性格・行動にも一貫性がなく、終始ブレている印象を受けました。
例えば、フランクは「とある事情から死ぬことができず、400歳近く生きており、アマゾンの町を離れることができない」のですが、ラストでリリーと結ばれてからはアッサリと渡英して、2人で生活していました。「俺は運命を受け入れるからもう死ぬしかない、だから2人(とペットのジャガー)で生きろ」とまで言っていたのに、リリーが「月の涙」の花を彼に渡したら、アッサリと元の人間に戻っていましたね。あんなに離れることが出来ないと言っていたアマゾンの町はどうなったのか?そこで作った借金はきちんと返済できたのか?
そもそも、そこまで苦心して取ってきた「月の涙」の花が全く活かされていないのには、悪い意味で驚きました。不本意に不老不死になってしまったキャラとしては、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズの「デイヴィ・ジョーンズ」や、「アルマンド・サラザール」、別作品なら「鋼の錬金術師」に登場する「ヴァン・ホーエンハイム」がいますが、彼らはもっと不老不死の便利さと引き換えに、絶望・悲しみ・怒りを抱えているキャラ達でした。本作品では、アギーレやその手下達にはそれらの感情を感じましたが、対するフランクにはそこまでのものを感じず、これらの対比が弱かったと思いました。

 ヒロインのリリーの性格も無茶苦茶で、一昔前の漫画にありがちな「暴力ヒドイン」なので、全く好きになれず、応援したい気持ちになれませんでした。序盤ではフランクにズボンをネタにされてセクハラ?みたいな扱いを受けていたものの、中盤から彼とラブコメを始めてからは、キャラがチグハグでついていけず、終始「チベットスナギツネ」のような顔になっていました。

 弟のマグレガーについては、LGBTの要素を取り入れたそうですが、どうもあまり活かされていなかったように感じます。彼は何度も「お見合い」をしたけれども、「そこで出会う女性を好きになれなかった」と言っているのみで、それだけではLGBTとは判断出来なかったです。最近のディズニー作品では、LGBTを意識したキャラが登場しますが、「美女と野獣のル・フウ」や「クルエラのアーティ」と比較すると、キャラが弱かったですね。ヘタレだけど、LGBTの要素は感じなかったです。

 ヴィランズ枠のヨアヒム王子ですが、彼も小物臭が漂っていました。当時イギリスとドイツは第一次世界大戦で対立した国で、その因縁からか、権力に任せて横暴なことをするキャラでしたが、所詮権力下で動いているだけなので、対峙した時の恐ろしさや絶望感は全く無かったです。ラストも、「王族は信用できない」という理由だけでアンデッドに袋叩きにされ、落石の下敷きになって死ぬというショボい最期を迎えたので、とても拍子抜けしました。

 後は、原住民の酋長が女性である必要があまり感じられなかったです。これは、女性でもトップに立てる、そういう社会を目指したいという思惑だったのかもしれませんが。

 また、場面の魅せ方については、夜のジャングルや潜水艦が主な舞台のせいか、画面がずっと暗いままで、何が起きているかわかりにくかったです。本作品は、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのスタッフが手掛けた作品だと聞いていました。「パイレーツ〜」ではまだ海が舞台で、そこに空と陸(島)がある開けた世界だったのに対し、本作品では暗いジャングルや濁ったアマゾン川という閉じた世界だったのが理由だと思いますが。
 そのせいか、CG技術も「パイレーツ〜」と比較するとかなりチープで、ほぼセットで撮影したのか?と思うほど、スケールが小さかったです。最も、エンドロールより「本作品はアマゾン川では撮影しておらず、主にハワイで撮影した」と掲載されていたので、思わず、「アマゾン川でロケハンしていないのかいッ!」と突っ込んでしまいました。作中に登場する原住民やアマゾンカワイルカ、ピラニアの群れも、随分と原始的でステレオタイプな描写で、パニックアドベンチャーとして観たら面白いかもしれないけれど、リアリティラインは大分ズレていたように感じます。しかも、その原住民も結局「やらせ」だったので、ある意味、TDLやTDSの裏側をうっかり見てしまったように感じて、夢の国の気持ちが醒めてしまいました。

 さらに、虫や蛇が大量に出てくるところは、まんま「ハムナプトラ」や「インディー・ジョーンズ」でしたね。最初にも申し上げましたが、昆虫・爬虫類が苦手な方や嘔吐恐怖症の方にはお薦めできませんので、ご注意ください。

 基本的に、この手の映画は、「三流脳筋アドベンチャーアクション」なので、突っ込み所は満載ですね、緻密な脚本や見事な伏線回収は求めてはいけないのでしょう。
「ハムナプトラ」も「インディー・ジョーンズ」もこの作品も、昔子供の頃に観たときは「カッコいい!」と思っていましたが、今観るとコント作品みたいで、その落差に笑ってしまいます。ある意味、「純粋な心」が失われてしまったのかもしれませんが(笑)
 それにしても、ディズニーの「実写」作品は当たり外れが大きいです。アニメの方がまだ主義・主張がきちんと伝わってきて、面白い作品が多いかなと思います。
 
 最後に、どの映画でも言っていますが、やはり「脚本は大事」です。どんなにCG技術や画力・カメラワークが向上しても、脚本がつまらないとキャラが立たないので、何度も観たいとは思わないですね。でも、「何度も観たい」と思える作品は、意外と数が少ないです!
作品制作において、脚本が「一番難しい」のは百も承知ですが、クリエイターさん方には、脚本を練りに練って、是非読者や視聴者を唸らせる作品を制作していただきたいですね。

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