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フランスが好きになったきっかけ~ルールと最適解

現在の夫(当時はボーイフレンド)と出会い、フランスにちょくちょく遊びに行くようになってそんなに年月も経っていない頃。
それまで、食べものが美味しい、(ジュネーブに比べて)モノが安い、という感覚しかなかったフランスに、新鮮で純粋な感心とともに、フランス人って面白いかも…と思わせてくれた出来事をご紹介します。

フランス人を見直して、フランスという国を少し好きになったきっかけと言っても良いかもしれません。

それは、ディスカッションできるということ。
ディスカッションによって合理的な解決策を導きだせるということ。
ルールの適応はケースバイケースであるということ、です。

時は、夏のバケーションシーズン真っただ中。
所は、とある音楽フェスの会場近くの交差点にて。

フランスでも、夏に多くの音楽フェスが開かれます。日本にキャンプをしながら楽しめるフジロックがあるように、湖の近くやMiddle of Nowhereと呼ばれるような、どことも分からない人里離れたところで数多くのフェスが開催されます。
そんな音楽フェスに夫と参加したときのこと。

"行きは良いよい 帰りはこわい"…とは、「通りゃんせ」の歌詞ですが、
フェスの帰りもまさにその通りで、特に無法者も多いフランスで、参加者の車が至るところに停車されている会場周辺を抜け出すには難儀するものです。

バカみたいなホントの話

帰りの渋滞を避けるため、わたしたちは、少し早めにフェス会場を後にすることにしました。
その時のこと。十字路の交差点に、全方向から車(我が車も含む)がやってきて、交差点にて車の鼻先を突き合わせながら、鉢合わせという、とんでもない状況に遭遇したのです。

どうしたらそうなるの?と思うかもしれませんが、勝手気ままに駐車して、動きたい方向に動けば、こうなりますわね。
さらに悪いことに、後ろは車が続いており、路上駐車の車が道路の片側をふさぐという状態で、引き返したくとも引き返せないという状況。
 
たまたま先頭で、交差点で他の車と鉢合わせすることとなった我が車…
夫は「戦闘準備は万端!」とばかりに(少なくともわたしにはそう見えた)、呪いの言葉を吐きながら、ものすごい勢いで車を降りていきました。
それを合図に、残り3方向からも、運転手たちが続々と降りてきて、十字路の真ん中で向かい合います。
 
その瞬間わたしには、"カーン!"という試合開始を告げるゴングの音が聞こえたような気がしました。
 
「あ~ケンカが始まるんだ…」と、家に帰るのが遅くなるなぁ…とか、なるべく自分の存在は消していよう…と冷静に思ったことを覚えています。
 
ドアを閉めている車の中までも聞こえてくる大人4人の怒鳴り声。
それが続くこと数分…突然戻ってきた夫は、
案外短かったな、と思いながらも、どんな大変な状況になったのかしら…と見上げる私に向かって一言。
 
「解決したよ」
 
大声の罵り合いにしか見えなかった状況で、何が解決した?と、状況が分からない私に、彼が説明してくれたのは
・ケンカをしていた訳ではないこと
・この状況下(道の状況と後ろに控えている車の数からも考えて)どう動くのが一番効率よく、合理的かということを話し合い、合意してきたということ
・後続車にもその説明をしてくる、ということ。
 
その後、全体に内容が伝わったのか、合意した方法で車を動かせるように、どかなくてはならなくなった列が車を後退し始め、進むべき車が進み始め、十字路で鉢合わせしていた車たちがあっという間に、秩序を取り戻していったのです…
 
見ているわたしは、この間、文字通りスピーチレス。
言葉がありませんでした。

生きる場所を変えねば、気づけなかったこと

ケンカしているのでは?と思われた大声大会は、実はこちらで言うディスカッションをしていたのでありまして(少しヒートアップした感は否めないとのことです…夫の後日談)、実際の交通ルールに従わず、進んできてしまった側を責めていた訳でも、犯人捜し裁判をしていた訳でもなかったのです。
みんな早く帰りたいという目的は同じなので、この状況下において一番効率の良く車を動かせる方法を話し合っていたというのですから、驚きとともに"日本だったら、自分だったら"どうするのか、それを考えていたのです。
 
どちらが良い・悪いではないのですが、例外をあまり作りたくない日本の場合、この場の最適解ということより、まずはルールに立ち返ろうになるのではないか、わたしはそう思っていました。例えその方法が、合理的でなくとも、効率的に劣るとしても。ルールに従っているということは、正しく見えますし、安心感も与えてくれますから。
(ただ、日本の場合、前提として、こんなことが起こるような勝手気ままな駐車はしない…ということで、こんなことは起こらないかもしれませんね)
 
一方、フランスの場合、正規のルールは一旦置いておいて、この状況で「一番理に適う方法」を考える。
さすが、常にルールに例外を設ける国だけある!!(褒めてません)
それは冗談としても、
胸がスカッとするような「フランス人の合理性」を目の当たりにして、新鮮な、良い意味での驚きを感じたことを覚えています。
 
世間一般で言われる正しいことや前例があるかどうかを一旦置いておいて、この場で一番、合理的な方法とは?この状況を「一番少ない労力」で解決できる方法とは?を話し合い、解決する、このフランス方式に純粋に感心し、面白いと思ったのです。

そして、理にかない、説明がきちんとできれば、一旦ルールは棚上げされ、賛同・理解が得られ、スムーズに行動に映せるというシステム・世界観にも素直に感動したのです。

この理にかない説明がきちんとできるということが、フランスでは非常に大切だなと感じたことは、他にもありまして…
それが、こちらでわたしの滞在許可証を手に入れた時の体験です。

と、言い出しながら、その話は長くなりますので、また別の機会に…

とにかく、
"そうね、それはしょうがないわね。じゃ、どうぞ。"となる国と、
"それはそうだけどね…でも、それを受け入れてしまうとね…"となる、どこぞの国…

対処すべき問題の多さ、国として抱える違い・例外の多さにもよるとは思いますが、世界とはそういうものだと思っていたところに、
全く別の角度から、新しい考え方を見せてもらえると、新しい風が吹く。
こんな考え方もあるんだ、こんな風にしても良いんだ
思うより世界は広かったんだと、素直な感心に包まれる。

日本にいながらでも当たり前のように気づくことのできる方もいると思うのですが、わたしは生きる場所を変えなければ気づけなかったことです。

フランスを好きになったきっかけは、また一つ、わたしにとっては新しく、少し軽やかで自由な世界の見方を教えてもらった体験でありました…

今回も最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

読んでくださる皆さま、スキを送ってくださる皆さま、本当にありがとうございます!わたしもスキ♡

どうぞ、良い週末をお過ごしください。

#フランス生活 #海外生活 #ルール #もっと自由に軽やかに


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