ちーかま

蒼海俳句会の千野千佳(ちのちか)です。俳句のこと、日常生活のことなど。

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マガジン

  • 蒼海のすきな句

    俳句結社誌「蒼海」のなかでの個人的すきな句を冊子ごとにまとめました。

最近の記事

橋本小たか句集 『鋏』

橋本小たか(はしもと・こたか)さんは1974年岡山県生まれ。2011年に「円座」に入会、2018年に「秋草」に入会された。 序文は武藤紀子さん、跋文は山口昭男さん。文字が大きいのがいい。(もちろん内容もいい。)あとがきも短くさっぱりしている。 特に好きな句。

    • 能村登四郎全句集⑩ 『菊塵』

      能村登四郎の第10句集『寒九』は、平成元年、登四郎78歳のときに出版されました。収録句数は426句。第9句集『寒九』から2年での出版です。 あとがきには「俳句も自然な生理作用のように知らぬまに出来るようになった。」とあります。 俳句を続けて長生きしてこの境地までいってみたいものです。 好きな句を挙げます。 指名にただ手を振るのみの年忘れ 走り出して遠足の列伸びつぱなし 歯を抜きしといふ顔に逢ふ花の午後 今にある朝勃ちあはれ木槿咲く 肩ほぐされて十六夜になじみけり 贋の

      • 西村麒麟句集 『鷗』

        『鶉』『鴨』につづく西村麒麟さんの第三句集。『鶉 新装版』のときも思ったが、「港の人」の本は装丁がかっこよくて本の作りがしっかりしている。 結社「麒麟」を立ち上げる以前と以後で章がわかれている。 笑える句、おもしろい句が多いのが嬉しい。読んでいると心がリラックスして、俳句を作りたい気持ちが湧いてくる句集だ。 とくに好きな15句。

        • 村上瑠璃甫句集 『羽根』

          村上瑠璃甫(むらかみ・るりほ)さんは2020年12月に「秋草」に入会された。そこから3年間の句を本句集にまとめている。 瑠璃甫さんが俳句を始めたのは2018年とのこと。「蒼海」に入会したが2年後に退会されて「秋草」に入られた。 わずか3年間(しかも俳句をはじめて3年目からの)でこれほど完成度の高い句集が作れることにただ驚く。 山口昭男さんの序文から愛が伝わってくる。 シンプルで形のきれいな瑠璃甫さんの俳句、とても好きです。 句集より15句選。

        橋本小たか句集 『鋏』

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        • 蒼海のすきな句
          24本

        記事

          秋草 2024年8月号

          山口昭男主宰の結社誌「秋草」は、結社誌がたくさん置いてある場所の代表である俳句文学館にも、ゆいの森あらかわにも置いてありません(すこし前のわたし調べ)。 ずっと「読みたい……!」と思っていたところに、この度、8月号をご恵贈いただきました。ありがとうございました。 連載や読みものの企画が充実していて驚きました。 以下、とくに心惹かれた句です。

          秋草 2024年8月号

          能村登四郎全句集⑨ 『寒九』

          能村登四郎の第9句集『寒九』は、昭和62年、登四郎76歳のときに出版されました。収録句数は400句。第8句集『天上華』から3年での出版です。 1年前に図書館でこちらの句集を読んで「登四郎の句、いい」と思ったことが、能村登四郎全集購入のきっかけでした。 好きな句を挙げます。 この道しか知らざる妻の盆の路 すつ飛んでゆく形代は我のもの 螢袋に指入れて人悼みけり 身を裂いて咲く朝顔のありにけり ぐい呑にきざみ葱あり良夜にて 鷹の眼をもつ若者とひとつ湯に くさめして突然顔に日が

          能村登四郎全句集⑨ 『寒九』

          蒼海24号

          蒼海24号は2024年6月刊行です。 招待作品は俳句が阪西敦子さん、短歌が寺井奈緒美さん、詩が大崎清夏さん。 以下会員の句より、全部は拾いきれないけれど好きな句を挙げます。 蒼海鼎談では、小谷由果さん、後藤麻衣子さん、杉澤さやかさんが子育てと俳句について語りました。リアルな内容なので、結社以外の方にもお読みいただけたら嬉しいです。(わたしが記事を担当しました。)

          蒼海24号

          後閑達雄句集 『カーネーション』

          後閑達雄さんの第三句集。本句集を紹介するふらんす堂さんのブログを読んで購入した。つげ忠男さんの表紙の絵がいい。 お母さまの介護と、自身の病気や薬を詠んだ句に惹かれた。日常をさりげなく詠んだ句もかわいくて好きだった。 鈴虫や母を眠らす偽薬 雪もよひ悲しい時に飲む薬 ぶらんこの白い老人ホームかな 何もせぬことが治療や菊日和 本棚の上の箱よりブーツ出す 爽やかに退院の日の着替かな 春の灯にうすくなりたるお母さん スピーチに寄鍋の火を小さくす 一生を働かず死ぬ桃の花 朝寝して朝の

          後閑達雄句集 『カーネーション』

          岡田一実 『篠原梵の百句』

          ふらんす堂の百句シリーズより。 篠原梵の句は新鮮で面白い。そして岡田一実さんの鑑賞がいい。梵の句を的確に読み解いている。そして文章がとても美しい。百個ある鑑賞文のすべてが素晴らしくて驚く。 自分もいつかこんな鑑賞文が書けたらと憧れる。 篠原梵は句集の名前がいい。第一句集が『皿』、第二句集が『雨』。ちなみに『皿』は愛媛の山「皿ヶ嶺」の名を由来とするらしい。(梵は山好き。)

          岡田一実 『篠原梵の百句』

          第12回俳句四季新人賞を読む

          俳句四季新人賞の関灯之介さんの「暗き河」、非常になめらかで傷のない連作と思いました。審査座談会の内容や候補者の句も面白く、俳句の賞マニア(?)として面白く拝読しました。 自分は応募していなかったのでバチェラーを見るようにただただ楽しんで見れたのかもしれません。 とくに好きな句。 あたたかや仁王に花形の乳首 関灯之介 靴履くにしばし片足夕涼し 同 露に露触れて大きくなりにけり 同 (第12回俳句四季新人賞「暗き河」より) 馬珂貝のうらもあらつてゐる日暮 加藤幸龍 (奨励

          第12回俳句四季新人賞を読む

          黒岩徳将句集 『渦』

          黒岩徳将(くろいわ・とくまさ)さんは1990年兵庫県神戸市生まれ。「いつき組」所属、「街」同人。 俳句界の超有名人である黒岩さんの待望の第一句集。普通の句集よりもサイズが小さめでメタリックな装丁が格好いい。 あとがきに「とにかく体温が感じられるものを書きたい。自分のルーツである台湾の句も数句残した。」とある。その言葉の通り、渦の中心へ読者を引き込んでゆくようなパワーのある句集だ。 とくに惹かれた句を12句。

          黒岩徳将句集 『渦』

          鷹羽狩行第一句集『誕生』の序

          鷹羽狩行さんがお亡くなりになった。 ご冥福をお祈りいたします。 家にあった「別冊俳句 鷹羽狩行読本」を読み返した。第一句集『誕生』の山口誓子による序文に、いまの自分にとって大事なことが書いてあったので書き残しておく。

          鷹羽狩行第一句集『誕生』の序

          小川軽舟 『名句水先案内』

          2020年4月号から2022年3月号までの角川『俳句』の連載が一冊になったもの。大好きな連載が書籍化して嬉しい。 取り上げられている例句がいい。そして小川軽舟さんの解説がいい。 鑑賞文のお手本にしたいのはもちろん、必ず添えられている作者の情報(師系、作風、経歴)を読むのも楽しい。 ひとりの人間がこんなにもたくさんの俳句(句集)を読み、俳人を理解しているのかと驚いた。しかも俳句以外の教養もすごいことが伝わってくる。 「六月」の章の句より好きな句を挙げる。(鑑賞文が素晴ら

          小川軽舟 『名句水先案内』

          阪西敦子句集 『金魚』

          阪西敦子さんの待望の第一句集です。おばあさまが俳句をなさっていたことがきっかけで阪西さんも俳句を作り始めたとのこと。7歳で「ホトトギス」の「生徒・児童の部」に投句を開始されています。 そこから40年におよぶ句歴を丁寧にたどっていく句集『金魚』。とても分厚いですが、どの頁もきれいにひらいてパタンと閉じることがないのがすごくいいです。 金魚の挿画は似顔絵作家の阪西さんのお母さまによるもの。 好きな句を12句挙げます。 笑はれし大きな眼鏡ネルを着る 注がるる勢ひに乾し生ビー

          阪西敦子句集 『金魚』

          セクトポクリットのコンゲツノハイク【2024年5月】 12句選

          春雪を踏むためそこのポストまで 水上ゆめ(秋草) 盆梅展薬罐しづかに滾りをり 下里美恵子(伊吹嶺) 思ふより豚の大きく春の水 岡田由季(炎環) 鳥風やいつぽん締めのあつけなく 山尾玉藻(火星) のどけしや昔天下の台所 平橋道子(雲の峰) これやこの猫ドアからの隙間風 兒玉猫只(澤) 汝のブーツそれとなく嗅ぐ揃へつつ 冬魚(澤) リハビリの廊下の長し冴返る 稲川ミチ(秋麗) 紙風船畳みて老人に戻る 穂曽谷洋(鷹俳句会) 葛湯啜り眉間に齢来てをりぬ 市原みお(南風) 煮凝やテレビ

          セクトポクリットのコンゲツノハイク【2024年5月】 12句選

          麒麟 2024年春号

          結社誌「麒麟」2024年春号に西村麒麟さんの句集『鴨』が全句掲載されるということで購入しました。ずっと読みたかった結社誌「麒麟」。感想と好きな句(たくさんあったのですが)を書きます。 【感想】 ・雑詠欄「天地人」の方には冊子を三部ずつ送るっていい仕組み ・連載陣がおのおの自由に書いていらっしゃる印象 ・(おそらく)西村麒麟さんによる挿絵がかわいい ・西村麒麟さんと会員二人による「麒麟を読む」の記事がおもしろい ・四席から十三席は連作全体でなく一句で決まっているシステムが斬新

          麒麟 2024年春号