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Black lives matter アフリカについての知識を深めたい

アフリカの蹄 帚木蓬生

最近、黒人差別のニュースがずっと流れてる。ジョージフロイドさんの事件があって、アメリカ全土でデモが行われて、それでまた新たに黒人の方が亡くなる事件とかあって…。正直ニュース見てたら本当酷いし顔を背けたくなる。

日本でも部落とかそういう差別的な問題はあるけど、ほぼ日本人しかいないこの国では、アメリカみたいな人種差別ってちょっと他人事というか、身近ではない気がしていて。

それで、何冊か黒人に関係ある本とか、人種差別の歴史の本とかをピックアップしてみました。
それでまず最初に選んだのがこの本。フィクションだし、南アフリカが舞台だけど、初めから歴史の本を読むより小説の方がいいかなと思ってこれにしました。

あらすじ
南アフリカの病院へ留学に来ている、日本人医師の作田信。絶滅したはずの天然痘ウイルスを使って、黒人を排除しようとする非人道的な白人たち。
スラム街に出入りし診察していくうちに、黒人との仲を深めていく作田だが、天然痘の魔の手があっという間に黒人たちに襲いかかってくる。
黒人差別に立ち向かう日本人医師は、貧しき人々を救えるか…?

感想
まず、南アフリカって白人が結構多いんですね…。そのことを知らなくて、驚きました。ググってみたら、ハリウッドで活躍している女優さんにも南アフリカ出身の方が多い。びっくり。
シャーリーズ・セロンさんとか、私がよく見ている『Pretty little liars』の女優さんとか。ヴィクシーモデルにもいる。
ただ、結構多いと言っても、黒人の方がはるかに多い。白人は1割くらいしかいない。それなのに南アフリカの7割くらいを白人が所有しているらしい。

この本が書かれたのは1990年の始め頃だったと思いますが、それから30年近く経った今も、相変わらず格差がひどい。最近は白人でも貧しい暮らしをしてる人が増えてきたらしいですが。

この本はフィクションだと分かって読み進めていたけど、途中何度か南アフリカについて調べました。(知らないことばかりで驚愕でした…)

色々ニュースとかブログ、SNSなどで情報収集しましたが、痩せた土地に掘立小屋みたいなバラックを建てて、まさに本の世界そのままでした…

調べてみてわかった、日本人は「名誉白人」とされていたこと、黒人たちがスラムから強制的に他の土地に追いやられていたこと。ええ…これ全部本当なのか…と苦しくなりました。

普段生活していて南アフリカのことを考えたことなんてなかったので、この本を読んで、考えるいいきっかけになりました。やっぱりまずは知ることが大事。

著者の帚木蓬生さん、『閉鎖病棟』を書いた方です。帚木さんは精神科医でありながら、作家でもある方。診療所での診察シーンだったり、病院での手術シーンもリアル。

主人公の作田信は、心臓移植の研修で南アフリカに来ています。何で?って思いません?アメリカとかじゃないんだ…って。このセリフ見て驚愕だった。

実際、彼らにしてみれば、黒人より犬猫のほうが可愛いんだよ。世界最初の心臓移植は、この国の医学が世界に冠たるものであることを、世界に向けて宣伝する恰好の材料だった。それが白人体制の権威と維持にもつながる。ぼくが医学部の学生の頃は、脳移植も密かに企てられているという噂があったよ。もちろん黒人の患者を使ってだ。

黒人は大きな病院に入れないの。そこは白人専用だから。病院に入って来る黒人は、臓器移植する脳死状態の黒人だけ。

作田は、心臓移植が終わって布に包まれた黒人の死体を見て、やるせない気持ちになる。

どうせ灰や土になる臓器なら、たとえ他人の身体の中であっても生き続けるほうがドナーも満足なのだ、と心臓外科医になりかけのとき教え込まれた。しかし未だに割り切れない。ドナーに対する後めたさがどこかに残り、その迷いが 0. 5 + 0. 5 = 1. 0の数式となって強迫的に頭に去来する。悪いことに、この国に来て、その数式に色がつき出した。始めの 0. 5は黒で、次の 0. 5と 1. 0は白なのだ。消されるほうのドナーはほとんどが黒人であり、レシピエントに至っては例外なく白人だった。

いつも「生」は白人で、「死」は黒人。はぁ…つらい…。

そしてタイトルの『アフリカの蹄』、本の中でなぜ南アフリカがこう呼ばれているのか説明するシーンがあります。

「エチオピアやスーダンは〈アフリカの角〉と呼ばれるね。アフリカ大陸は牡牛の形をしているだろう。この国はちょうどその足にあたる。だからアフリカの蹄。しかし、この国はまた別の意味で蹄なんだ。白人が我々黒人を牡牛の蹄で蹴散らし、踏みにじっている場所なんだよ。俺たちはこの国にいながら、実際は存在していない。俺たちの身分証明書がいい証拠さ」

これは黒人解放の闘志である、ニールのセリフ。
でも、ニールの妹のパメラは、また違った解釈をします。

「みんなはアフリカの蹄なんだ。蹄が動かないと、牡牛は歩けない、走れない。だから、みんなで力を合わせてアフリカの蹄になり、走ろう。高らかに蹄の音を響かせるのよって」

パメラのいつも希望を持っているところが好きだなぁ。このセリフ、グッと来たな〜。

途中途中に、白人に傷めつけられて本当に読むのもつらいシーンがあるんだけど、主人公の作田信の正義感、パメラの明るさと情熱に何度も救われる。黒人のみんなが歌うシーンもいい。

最後、デモのシーンがあるんだけど、私も参加しているような気分になりました。


ンコシ シケレリ アフリカ
(神よ アフリカに祝福を)

ウォザ モヤ
(魂よ 奮い立て)

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