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見守ることで、気持ちを理解する

運営している森のようちえんヒュッテでは、子どもを信じて見守ることを大切にしています。でも、一言で「見守る」といっても難しく、見守り方についてはなかなかうまく言葉にすることができていませんでした。

最近、ブレイディみかこさんの「他者の靴を履く」を読んで、少し整理することができたのでまとめてみたいと思います。(以下引用は、「他者の靴を履く」ブレイディみかこ著より)

見守る時に意識したいことは、大きく2つあると考えています。

1.感情の整理を手伝う

うれしい、楽しい、悲しい、悔しい、いろんな感情があります。例えば、誰かが泣いている時、悲しいのか悔しいのか、困っているのか分からないことがあります。子どもたちにとっては、自分の気持ちを理解することが難しい出来事、状況があるものです(時には大人も)。これまでに体験したことのない出来事だったらなおさらです。

だから、大人がじっくり話を聞きながら何が嫌だったのか、悲しいのか、悔しいのか、ちょっとずつ気持ちを整理していくことが大切だと考えています。

こうして、自分の気持ちをしっかり理解できるようになることが、「自分以外の誰かの気持ちを理解する力(エンパシー)」を育むことへとつながっていきます。いろんな感情を自分自身が感じ、知る経験は、他の誰かにも、同じような感情があることを想像する時の手助けになると考えています。

優しくしてもらって嬉しかったから、誰かに優しくしたいと思ったり、うまくできなくて悔しかったから、同じような誰かを見た時に励まそうと思ったり。そんな姿は活動中にも見られます。

子どもたちのけんかに立ち会う時も、どちらが悪いかをジャッジするのではなく、基本的には双方の気持ちの交通整理に撤します。まずは、とった行動の元になった気持ちをちゃんと受け止める。それから、どうしたらよかったのか、これからどうすればいいのかを一緒に考えていくことが大切だと考えています。

子どもだけではなく、大人もこうした会話などのやりとりを通じて、自分のことを理解できるようになります。

つまり、自身の継続的なアイデンティティが証明され、確認され、問われるのは、他者との会話においてなのだ。他者との会話によってはじめて、体験したことを理解し、それを経験として形式化することが可能になる。人間のあらゆる特色や相違点、類似点、多様性―すなわち個人性―は、他者の承認または拒絶を通して初めて浮き彫りになるものだ。

2.体験や経験の機会を奪わない

「危ない」 「汚い」「ダメ」 「早く」 といった子どもの行動を規制するような言葉はできるだけ使うのを控え、子どものペースで過ごせる時間を作るように心がけています。

もちろん、これらの言葉を全く使わないわけではありません。重大な事故に
つながるような行動や、人として望ましくない乱暴な行為などをする場合はしっかりと制止し、しかります。「過不足のない関わり」、というのが目標です。

多様性の時代に向けて

私たちは、以前にも増して価値観が多様化し、価値観や共感が見える社会を生きています。SNSやインターネットを通じて多様な価値観に触れ、ボタン1つで「いいね!」の共感や、価値観のシェアをできるようになりました。

一方で、そうした手軽さによって、分断も加速しているような気がしています。目の前の情報や、出来事は、連続した何かの一場面です。私たちに必要なのは、その一場面で他者や何かをジャッジする力ではなく、その出来事の前後や背景には何があったのか、それによってその人は何を感じたのかを、辛抱強く理解しようとする姿勢ではないでしょうか。

そうした姿勢が、多様な世界の根っこをつくっていると考えています。

「他者の靴を履く」は、エンパシー(他者の感情や経験などを理解する能力)について書かれた本です。

「その人物がどう感じているかを含んだ他者の考えについて、より全面的で正確な知識を持つこと」(中略)息子風にいえば「他人の靴を履いて」他者の考えや感情を想像する力であり、その能力をはかる基準は想像の正確さだと心理学の分野では定義されている。

ここで大切なのは、誰かの靴を履くためには、自分の靴を脱がなければならないということ。自分の靴をちゃんと履いていないと(自分のことを分かっていないと)、他者の靴は履けないのです。

だからこそ、森のようちえんでは、自然の中での体験を通して、自分と向き合ったり、誰かとやりとりをしたりして、まずは自分に合う靴を見つけてほしいと考えています。

こうして長々と書いてきましたが、毎回の活動や子育てに関してやりきった!と思えることはほとんどありません。だからこそ、森のようちえんが、もやもやを共有し、分からないことを一緒に考え続けられる場に育っていくといいなあと考えて活動しています。


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