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ビンよ、消えないで

「ビンもそのうち無くなるかもねえ。」

と、醤油屋のおばちゃんは言った。母に送る用の甘酒を買いに地元の醤油さんに行き、雑談をしている時に聞いた一言は、私に十分な衝撃を与えた。

ちょうど2週間前、ゴミをできるたけ出さないゼロウェイスト活動で有名な徳島県の上勝町に行ってきた。そこで、ビンってリユースしやすい、いいパッケージやなあと再認識したから、無くなる可能性があるということが残念でならなかった。

私はさらに、おばちゃんと話し込んだ。「大手がビンを作らなくなってきているみたい、お付き合いのあるメーカーの人から聞いたのよ。」

醤油屋さんにはビンを洗浄する機械があって、お得意さんの元から戻ってきたビンは、洗浄して使っているらしい。「だからしばらくは大丈夫だろうけど、これからどうなっていくかねえ。」

そういえば、私が幼少期に暮らしていた町にも小さな醤油工場があった。窓や戸を全開にし、醤油のビンを洗っていたので、洗浄されるビン同士がぶつかる音とともに、醤油の香りがまちに漂っていたことを今でも思い出す。

ビンが無くなるかもしれないことが、とても寂しい。

ちなみに、私はこの醤油屋さんで一升瓶の醤油を買い続けている。でも、おばちゃんに聞いたら、私くらいの世代(30〜40代!?)で一升瓶の醤油を買っていく人はそういないよ~と言われた。そうなんだ・・・。多くの人は、少しサイズの小さいペットボトル入りの醤油を買っていくのだろう。

そういえば、よく使っているごま油のパッケージもいつの間にかペットボトルになっていた。持ってみるといつもより軽くていいなあと思ったけれど、ごみは増える。でも軽いから、ユニバーサルなデザインなのかもしれない。

でも、日本酒の一升瓶が無くなってくのは嫌だなあ。ラベルに「大吟醸」と達筆で書かれていても、なんだかチープに見えてしまう。きっと、ビンと一緒の佇まいを含めて「大吟醸」なのだ。

暮らしの中からビンが消えていく。

今はビールも缶が主流で瓶ビールは飲食店以外では見なくなってきた。ビン入りのジュースやラムネはさらに見る機会が少ない。

夏の暑い日に冷蔵庫からビンを取り出した後、表面を流れ落ちるしずくを見たり、栓抜きで栓を開ける時のシュポッていう音が好きだ。私にとっては、夏をつくる一場面だった。

乾杯する時だって、グラスに注げば音はするけど、グラスとビンではお互いがぶつかり合う時の音も違う。ビン同士だと、ちょっと低くて重みのある音がして、私は好きだ。

また、ビンを使うことは、誰かとつながることでもある。昔、うちの近所の駄菓子屋さんでは、飲み終わった空きビンを返却すると、数十円返ってきた。お金が返ってきて、また別のおやつが買えることもうれしかったけれど、お店のおばちゃんとのやりとりも楽しかった。

冒頭の醤油屋さんやお酒屋さんだと、配達したり、空き瓶を回収したりする中で会話のやりとりが生まれる。ビンはコミュケーションツールでもあるのだ。

妊娠、出産、授乳で、しばらくお酒を飲めていないけれど、また飲めるようになったら、ビンでまた乾杯したい。

これから先も、ずっと。

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