見出し画像

そしてキミはここでさなぎになる。

森を出るとすぐに民家がある。宅地開発されて森は少しずつ小さくなってきたのだ。今や宅地の中に森があるとさえ言える。歩きながらふと目に入った。それは農家の門柱にはりついていた。さなぎになるには少々目立ち過ぎないかねえと思うが、そいつはもうすでに糸で体を固定したあとだった。
 
そのアゲハの幼虫は、ただそこでさなぎになるのを待っているのではない。
見た目には静止しているように見えても、その内部はマグマのように激しく活動している。そして時が来た瞬間にずるりと皮を剥いてさなぎに変身するのだ。さなぎになるのは一瞬である。
 
今の時期からさなぎになるということは越冬組だろう。風雪を凌ぐものもない、むしろ吹きさらしのこの場所で無事に春を迎えることができるのだろうか。おぬし冬は長いぞ。

もしよろしければサポートをお願いいたします!サポート費は今後の活動費として役立てたいと思います。