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不機嫌な午後。

夕方学童へ娘を迎えに行くと、娘は機嫌が悪い。
どうでもいいわがままを連発していちいちぼくを困らせる。
 
なぜ機嫌が悪いのかといえば、それは腹が減っているからである。
曰く、給食が少ない。おかわりしても足りない。
よって夕方の6時ごろになると猛烈にお腹が空いて大変機嫌が悪いのである。
 
お父さんなんか持ってきた?
と娘は強い口調でいう。
 
自宅へ帰り着くまでに腹ごしらえするおやつを持ってきたかというのである。
持ってきたよ、とぼくは応える。
 
8枚切りのトーストにバターとはちみつを塗って半分に折ったサンドイッチ。
おにぎり。
菓子パン。
カントリーマアムなどのお菓子。
 
その時々で思いつくものを持っていく。
娘は学童を出るとむさぼるようにモシャモシャと食べ始める。
その様子はまさに動物である。
 
ぼくは子どもの食べる様子が好きだ。
こんなに一生懸命になれるのかっていうくらいに一生懸命に食べる姿がたまらなく可愛いのだ。
 
道中で食べ終わってしまうとお叱りのお言葉を頂戴する。
お父さん、足りない。もっとなんかないの?
ないよ。
足りないよ〜。
もう夕飯だから我慢してよ。
我慢できない。
空腹は最高のスパイスなり。
うるさい。
 
まいどまいど繰り返される会話である。
だからぼくはお菓子よりもおにぎりやはちみつトーストを持っていくことが多い。それはつまり食べるのに時間がかかるからである。それにお菓子なんていくら食べたって満たされないものだ。
 
なのになぜお菓子をたまに持っていくかというと、そこは毎日同じじゃ飽きるだろうという親心である。しかしそんな親心も足りないの一言でまるで汲んでくれない。
 
まあいいさ、とぼくは思う。娘はギャースカギャースカわがままを言っているが、こんなわがままもいつまで言うかなとぼくは成長する頼もしさとともに一抹の寂しさも感じているのだ。
 
そんなんだから、ぼくは娘のわがままに怒れなくて、アニキからお父さんは妹に甘いだのえこひいきだの不平等だのずるいだの言われてしまうのであった。

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